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100億で落札された俺、ポンコツ美少女に自由を買われる〜幼児化した相棒のせいで、謎組織から無理難題を押し付けられる何でも屋になった件について〜  作者: くまたに
第2章 この猫どこの子?

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第19話 一度死んだ少女

「──それで、ティナちゃん。貴方が一度死んたってどういうこと? 答えによってはその子への処遇を変えざるを得ないわ」


 時間が経ち、冷静さを取り戻したミヤビは、大人の余裕を身にまとっていた。

 対してコハルは浮ついた気持ちが冷めた今、これから先が不安で押しつぶされそうだった。

 フード越しにでも震えているのがわかった。


「私が今生きてるのは、コハルのおかげだよ」


「え……」


 ティナの誰も予想だにしない回答に、一番驚いたのは他でもない、殺した張本人のコハルだった。


「詳しく話してくれる?」


 まだ決めかねないと目を細めるミヤビの顔は穏やかに取り繕っているが、その内に秘められた思いは誰にも想像できない。

 ティナは「はい」と答えると少し間を置き、再び口を開いた。


「私の能力は──幼児化を代償とした、一時的な身体能力の急上昇と再生。

 ……簡単に言えば、短時間だけ強くなれる代わりに、子供の姿になってしまう。そして……致命傷でも、条件次第で生き返れるの」


 ティナは淡々と口にした。


「再生って……死んでも生き返るってこと? だからあの時、私に撃たれたのに生きてるってことですか」


 コハルが両手を握りしめる。


「そう。そこで大事なのは、傷を負う前にどれだけ能力を使ったか。それで回復できる範囲が決まるの」


 ティナは視線を伏せ、指先で机をとんとんと叩く。


「……で? コハルちゃんがどう関わっているのか、聞かせてもらえるかしら」


 ミヤビの声が低くなる。


「私はリリカの部下との戦いで力を使いすぎて、もう大きな傷は治せない状態だった。でも――」


 ティナは一度、息を吸い込む。


「コハルが私の心臓を一発で撃ち抜いた。だから一度は死んだけれど、ツキがあって再生したの」


 言い終えるとティナは伸びをして、机に突っ伏す。

 部屋に沈黙が落ちる。ミヤビの目が、少しだけ険しさを増した。


「それって……貴方がティナちゃんを撃っていなかったら、何も大事になってなかったんじゃないの?」


 たしかにミヤビの言うことは間違っていない、とレイは頷くが、すぐに知らんぷりをして誤魔化す。

 ティナは唇を噛み、コハルは顔を真っ青にさせた。


「申し訳ないのだけど、コハルちゃんの身柄は組織の方で──」


「待ってください!」


 ミヤビの声を遮るように、レイは口を開いた。

 必死に強がるように、口元をわずかに吊り上げた


「俺達は敵のアジトを見つけ──リリカのような強者を倒した。それは紛れもなくコハルのおかげじゃないですか?」


「そ、そうだよ!」


 目配せをすると、すぐにレイの考えを理解したティナが乗っかかるように言った。

 二人の発言は効果があったようで、ミヤビの表情はさらに険しさを増す。


「レイさんも、ティナさんもありがとうございます。ですが──もういいです」


 そう言うコハルの顔はどこか諦めてるようで、全てが吹っ切れているようだった。

 ティナは慌てて「まだ決まってないよ!」と口を挟む。しかし、その声はただの慰めに過ぎなかった。


「たしかにレイくんの言った通り、支部とはいえ、敵のアジトを突き止められたことはかなりの成果よ」


「だったら──」


 レイは希望を見い出し、口元をゆるめる。しかし──


「そのリリカって子の遺体は結局見つからなかったわ。あなた達を見つけた後、()()()カグヤに徹底的に調べさせたけれど、残っていたのは情報を抜かれた痕跡だけだったの」


 先程からミヤビの顔が浮かばないのは、リリカも情報もなかったからだったのか。

 今までに一度しかカグヤに会ったことがなかったがわかる。あの人がアジトに入ってすぐにある、凍ったリリカを見逃すはずがない。


 限りなく確信に近いものを感じ、レイは考え込むように黙った。

 ティナは打開策を一つも思いつかず切ない表情でミヤビに訴えるが、考える間もなく「無理よ」と返された。


 レイは唇を噛み、拳を握りしめた。


 もう何も手札がない。そう、諦めかけた時だった。


 ──まだだ。最後の一手がある。これしかない。


 レイの胸の中に一筋の希望が巻き起こる。

 これ以上レイに足掻くことはできない。最後の考えだ。


「ミヤビさん、聞いてください──」


 薄暗い会議室に、レイの声が響く。その言葉に一同の視線が集められるのだった。

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