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【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。  作者: 自転車和尚
堕ちた勇者(フォールンヒーロー)編

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第二二七話 望楼(ウォッチタワー)の戦い 〇七

「……爆破開始」


 四條 心葉が手元のスイッチを押すと、望楼(ウォッチタワー)の周囲に連続した爆発が巻き起こる。その衝撃で地面が崩れ、高く聳えていた望楼(ウォッチタワー)を支えきれなくなった地面から根にあたる部分が露出し、斜めに傾いていく。しかしある程度傾いたところで、根の中央部分から複数の根が生え、周りの地面へと突き刺さるとそれ以上の倒壊を防いでしまう。

 四條が軽く舌打ちをしながら、背中に背負っていた突撃銃(アサルトライフル)を手に取り、コッキングレバーをひく。

「……倒れれば楽だと思ったのに……火力の問題?」


「「キイイイイアアアアアアアアアアッ!」」


 望楼(ウォッチタワー)の各部に生えている口が悲鳴をあげ始める……四條は表情を変えずにドス黒い幹に向かって突撃銃(アサルトライフル)を斉射していく。

 彼女が今回持ってきていた旧東側諸国で生産されていた突撃銃(アサルトライフル)は、西側諸国のそれとは違って発砲音が甲高く威力も高い代わりに、命中率の低さがデメリットと言われている。

 ただし連射能力は非常に高く、さらに発射される銃弾一発一発の貫通能力はとても高く、市街戦における使用率が非常に高い……世界で最も使われた銃器としても知られているのだ。

 彼女が今回これを所持しているのは、内部構造が簡略化されており故障しにくく、多少荒く扱っても故障しないという特徴を信じてのことだ。

 幹に着弾するたびに血が飛び散り、まるで生物が苦しむように身を震わせる望楼(ウォッチタワー)をみて、四條は軽く気持ち悪いものを見たかのような表情を浮かべた。

「灯さんがよくキモいっていう気持ちもわかりますね……」


 腰に下げていたグレネードを軽く放ると、爆発に巻き込まれないように近くの木の影へと身を隠しながら弾倉(マガジン)を差し替える。

 何か違和感を感じ、彼女は直感的にその木の影から飛び出していく……次の瞬間彼女が隠れていた木を何かが粉砕していく……後ろを軽く見ると、それまで隠れていた木が吹き飛んでいるのが見える。

 ヘリコプターを破壊したあの黒い光球……触手が蠢くと次の黒い光球が次第に大きく成長していくのが見える、少し溜め動作が必要な攻撃か。

 移動しながら突撃銃(アサルトライフル)をフルオートで斉射する……望楼(ウォッチタワー)の幹が弾け飛び、血が噴き出す。


「「いいイイイイアアアアアアアッ!」」


「うわ、キモ……」

 その度に多くの口から悲鳴が上がると、それを聞いた四條がとても気持ち悪そうな顔で舌を出す……だが突撃銃(アサルトライフル)では決定力に欠ける。

 さてどうしよう……腰に下げていたグレネードも有限だ……このままだとこの望楼(ウォッチタワー)は破壊することができない……撤退する、という選択肢を考えるしかないだろうか。

「……四條殿、聞こえますか?」


「台東さん……どうされました?」

 インカムに台東の声が聞こえ、四條は走りながらインカムに軽く手を添えて返答を行う……戦闘中とはいえ、今のところ双方決め手に欠けている、走り回っていれば相手の攻撃は当たりにくいし、こちらは火力が足りていない。

 突撃銃(アサルトライフル)を斉射しつつ、次の木陰へと移動する……だが常に距離を取らないといけない状況は変わっていない。

 走りながらの射撃で命中精度もそれほど高くない……四條の超正確な射撃であっても当たらなかった銃弾が地面へと突き刺さっていく。

「……おや? いつもの突撃銃(アサルトライフル)ではないのですな」


「攻撃力重視でしたが、これでも火力は足りないようです」

 別の岩陰に身を隠しながら弾倉(マガジン)を乱暴に引き抜くと地面へと投げ捨てる。背中に差してある弾倉(マガジン)を装填すると、再びコッキングレバーを引く。

 望楼(ウォッチタワー)は枝を揺り動かしながら、次の黒い光球を生み出そうとしている……幹に生えている口がまるで獲物を狙って薄く笑っているように見え四條は再び舌打ちをした。

 だが、インカムから台東がかけてきた言葉で、彼女の表情が少し驚きへと変わっていく。

「……整備が完了しておりますぞ、今から射出します。あれなら十分な火力が望めるでしょう……」




「クハハハハッ! 死ねえっ!」

 邪悪に歪んだ笑顔で両手から電撃を発するエツィオ・ビアンキ、その凄まじい威力に辺りの木がどす黒く焦げて、煙を上げていく。

 だが、まだコントロールがそこまで高くない……ってかさその、死ね! っておかしくない? 仮にも手に入れようって対象に本気の魔法ぶつけるやつがいるかって話だよ。いくらエリーゼとしての意識が強いとしても丸焦げになった俺を手に入れてどーすんだよ、あいつバカだろ。


 だが俺の内心など完全無視したかのようにエツィオは次々と魔法をぶっ放してくる……流石に大魔道(ソーサレス)の魂を継ぐものだけあるな。

 俺は飛来する雷撃を全て破壊するもの(グランブレイカー)を振るって受け流していく……灯もかなりできるようになっているが、ミカガミ流の真骨頂は敵の攻撃を全て封じる魔封じの剣……魔法も実体が無い攻撃ではなく、魔素を使って顕現させるものだ。実体のある攻撃なら全て斬ることができる……それが剣聖(ソードマスター)、それがミカガミ流。

「……この程度か? 拍子抜けだな、大魔道(ソーサレス)……」


「貴様ああああ! 殺してやる! 絶対に殺す!」

 大刀(ブレイド)を振るって飛来する雷撃の槍(ライトニングスピア)を切りはらうと、俺は笑顔でエツィオに向かって軽くかかってこい、と指を立ててジェスチャーを投げかける。そのジェスチャーを見たエツィオの顔が憤怒に歪む……この辺りは彼の前世ではるエリーゼと似ていてプライドが恐ろしく高いな。

 エツィオが空に向かって手を伸ばす……その広げた手の先に紅蓮に燃える炎が形成されていく……おっと、これは流石に受け流すのは……ってか確実に殺しに来てるんですけど! どうなってるの!? 死体とそういうことする趣味でもあるの? この人!

「……ちょっと待てよ! 俺が死んだらお前何と子作りする気なの?」


「五月蝿い! 五月蝿い! 五月蝿い! 私のいうことを聞かないやつなんか全て死んでしまえばいいんだ!」

 エツィオはまるでヒステリーを起こしたエリーゼのように時短駄を踏みながら……ってなんかあの姿でやられるとちょっと引くなー……灯の記憶にあるエツィオはちょっと残念だけど話のわかるイケメン男性って印象だったわけだし。

 でもおかしいな……エツィオ・ビアンキはそこまで精神の弱い人間ではない、むしろ強固な人格と精神力、そしてこの世界の人間としては最上級の存在だと思っている。

 いくらエリーゼの魂が強いって言ったって限度がある、俺が灯の行動を制限できないように、彼女の魂もそんなことは許されないはずだ。

 それでも意識が完全にエリーゼのそれに差し代わっている……こんなことあり得るか? 何かがおかしいぞこれは。


「死ねええええッ! 炎の嵐(ファイアーストーム)!!」

 エツィオの手から爆炎の嵐が吹き荒れる……まずい、この炎は受けることができない、逃げるしかない! 俺は一瞬足を沈み込ませるように力を込めると、弾丸のようにその場を駆け抜ける……これでも魔法の炎が着弾するよりも速度は出ない。

 地面を蹴り飛ばして走り抜ける俺に炎の風が迫り来る……まずいな、走りながら全て破壊するもの(グランブレイカー)を肩に担ぐように構え直すとさらに加速しつつ、なんとか攻撃を避けつつ回り込むようにエツィオの側面へと回り込んでいく。

「だーかーらー! 人の話を聞けーッ! 馬鹿野郎、どうしてお前はそこまで人の言うことを聞かねえんだ!」


「五月蝿い! 私を受け入れないお前なんて嫌いだ! この世界だって大嫌いだ!」


「それでキリアンと組んだって話しか? お前にしちゃ短絡的だな! 俺のこの誰もが羨む体型に嫉妬してんのか? このロリっ子が!」


「人をどこまでコケに……だからお前は嫌いだ! グラマーに生まれ変わったからって人をどこまで馬鹿にすれば気が済むんだ! お前なんか殺してやる!」

 エツィオの顔がさらに歪む……おー、おー真っ赤になっちゃってイケメンが台無しだな……彼の後背に無詠唱で複数の火球(ファイアーボール)が出現していく。

 やばい、火球(ファイアーボール)の数が尋常じゃねえ……この世界の魔素が増えているとはいえ、一気にあの数を顕現させられるやつなんていないと思っていた。

「ちょ、ちょっと待て! エリーゼ! その数はマジで死ぬ! ロリっ子って言ったの謝るから!」


「……馬鹿にしてんのか? 一回と言わずに何回でも死ねよ、クソ野郎」

 パチン、とエツィオが指を鳴らすと火球(ファイアーボール)が一気に俺に向かって飛んでくる……この世界の動画共有サイトで見たミサイルの一斉斉射みたいだなあ……とこんな場面でありながら少し感心してしまうが、こいつはまずいな。

 俺は全て破壊するもの(グランブレイカー)を横溜めに構え直す……放たれた火球(ファイアーボール)は数が多く、そのほとんどが無軌道にこちらに迫っているように見えるが、俺の体に着弾するためにはある一定の距離になった際同じ軌道を通らねばならない。

「……つまりだ、その空間さえ押さえれば処理できるってんだよ! 空蝉(ウツセミ)ッ!」


 俺がその全ての火球(ファイアーボール)が通る軌道上へミカガミ流絶技空蝉(ウツセミ)を放つ……衝撃波が最初にその地点を通過しようとした火球(ファイアーボール)に着弾すると、魔法は耐えきれずに爆発する。

 そして間髪入れずその爆発に巻き込まれるような形で他の火球(ファイアーボール)が次々の爆発の中へと姿を消し、爆発……連鎖していくようにエツィオの放った魔法が消滅していく。

「ムフッ! さすが俺。やっぱり天才は死んでも天才だな」


「……クソが……いつもいつも私を馬鹿にして……私の気持ちを踏みにじって……」

 エツィオの方が震える……憎しみとも悲しみともつかない複雑な表情を浮かべた彼は、両手を大きく広げる。な、なんだ? 俺を目の前にして戦術級魔法(タクティカル)でもぶっ放そうって気か?

 今なら確実に()れるが……この体、新居 灯の意思のようなものが強く俺の殺意にブレーキをかけている……手が小刻みに震え、まるで彼を殺してはいけないと言わんばかりに心臓が締め付けられる。

 灯は優しい……本来であれば戦士になんか向いていない性格だ、俺という魂の存在が猛々しい彼女の人格を形作っているのだから。

 俺はそっと胸に手を当てる……あら、なんて柔らかい……思わずずっと触りたくなるような気持ちを抑えつつ俺は心の中に優しく語りかける。


「……大丈夫、お前の意思は最大限に尊重する。だから安心して見ていろ……あいつを止めるのは、前世の仲間だった俺なのだから」

_(:3 」∠)_ エツィオさん(エリーゼさん)お怒りモードの回 銃器もちゃんと調べないとなー……


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