一筋の光
トカゲ君に掴まれた状態でぶらんぶらんと吊り上げられている状態のアキは、くま五郎と渓谷が崩れ去って行く終始見送っていた。
『ド派手に崩れましたね』
「そうだな、トカゲ君さっきやってたブレスいける?」
『ええやる気も魔力も8割程度まで回復です!』
「全快じゃあないのね」
『どっちもさっき使ったので!』
軽く冗談を混じえつつトカゲ君のブレスやサモンスケルトンで敵と応戦する。
しかし、スライムを倒しその爆発で魔物を倒したはいいが、後続の魔物達が徐々に増え二人だけでは対処しきれなくなってきていた。
「やっぱり後ろを歩いてたヤツらは足が遅い代わりにタフなやつが多いな」
『わたしのブレスでもそんなに倒せなくなってきてますね、さっきの軍隊は召喚出来ないんですか?』
「多分もう一回やったらさっきの二〜三倍は気絶してる事になる」
『それは困ります』
苦笑いで答えたアキにトカゲ君は困った様な声色でそう返すとブレスを黙々と吐き続ける。
うーん、分かってはいたけどサモンレギオン位でないと歯が立たないな。
一か百しか召喚出来ないから今の状況だと使い方が難しいんだよな……この方法ならある程度減らせるか?
効果的と思われる方法を見付けたその瞬間、アキとトカゲ君の後ろから眩い閃光が放たれる。
「何事だ?!」
『わかりません!!』
突如として現れた光に二人は混乱しつつ後ろを振り返る、するとそこには一つの人影が剣を天に掲げて立っていた。
嫌な予感がしたアキは即座にその場を離れるようにトカゲ君に命令し、アキはトカゲ君に連れられて崖の上に陣取った。
その時だった、その人影が何かを叫んだその瞬間。
先程までの光が一気に収束し、一筋の光が天に伸び雲を貫いた。
それと同時に、その光は凄まじいエネルギーを発し辺りに風が吹き荒れる。
閃光が天を貫いたその数秒後、その圧倒的エネルギーの塊が眼下の軍勢に振り下ろされ━━
━━次の瞬間、魔物達は瞬く間に灰燼と化し地は割れた。
「何だこのデタラメな技!」
技による二次被害を全力で耐えるアキとトカゲ君はその光景に唖然とした。
先程までアキ達は三秒に一体倒せればいいペースだったのだが、今の一撃は一瞬で軽く四桁は吹き飛ばした。
その驚異的なものを見て呆然としていると、魔物が消え去った渓谷から聞き覚えのある声があ響いて来た。
「び、びっくりしたぁ……この剣とこの技、こんなに強かったんだ」
それは一ヶ月ほど前に聞いたあの声だった。
「ミッ、ミザリィ?!」
「アキちゃん!!」
『えっ?誰です?』
完全に置いてけぼりなトカゲ君を置いてアキは、先程の一撃によって出来た斜面を大盾を足場に滑って降りる。
そして、滑り降りて一番下まで来るとミザリィが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「アキちゃん久しぶり!!」
「うん、そうだね。って、そんな事より今のは?」
「あぁ、うん、あれね?この剣のお陰なの」
ミザリィはそう言うと、一つの剣をアキに見せた。
「これって」
「そう!前にアキちゃんに貸して貰ったものだよ!少し前にね?森の中で困ってるおじいさんがいたんだ、その人を助けたらね?『聖剣解放』って技を教えてくれたんだ」
「それで使ってみたらあの威力と……」
ミザリィの話に若干苦笑いになりつつアキは、未だ迫り来る魔物達を見据えていた。
「さぁて、あの魔物達どうする?」
「さっきの技は撃ててもあと2回くらいかな……」
「十分十分、それ俺がじゃあ出来るだけあいつらを引き付けて、ミザリィが吹き飛ばすって感じだね」
「えっ、それってアキちゃんが危ないよ」
「いやいや、ここに最強(?)の盾と最強の剣がいるんだから大丈夫だって!」
「うん、そうだね!私とアキちゃんの力見せてあげよう!」
『あのー、私置いてけぼりなんですが……』
そんなトカゲ君の言葉は誰の耳にも届くこと無く、早くも勇者と盟友のコンビがここに揃ったのであった。




