砕ける身体
頭がグラグラとする程の激しい衝撃と瞼の上からでもハッキリと分かるほどの閃光が収まるとアキはゆっくりと目を開け周囲を確認した。
するとそこには爆心地を中心に、アキ達の立っていた場所以外の半径50m程が焼け焦げていた。
「と……とんでもないな…………ガーディアンにしといて助かったわ」
あの爆発から生き残れた事にアキが安堵していると、渓谷が突然震え始めた。
「なぁ、これって結構まずい?」
『…………でしょうなぁ……』
「よし、皆に一回戻って貰ってトカゲ君に頼んで避難するか」
その時、爆心地の何十メートル先に先程より多数の魔物達が進行してきているのが見えた。
まだあんなにいるのか?!ここは避難より先にこの道を落石で完全に塞いでしまうか?いや、そんな事をしてたらこちらが巻き込まれて先にくたばる可能性が高い……
『そういう時の為に俺達がいるんだろ』
アキが迷っている間に隣に立ったくま五郎がサムズアップをしながらそう語り掛けた。
「……わかった、くま五郎任せた!」
『おうとも!』
瞬間、アキの視界が地上から空へと一瞬で切り替わる。
「はぁ?」
『トカゲ!受け取っとけよ!』
『は〜い』
処理が全く追いついていないアキを後目にくま五郎がトカゲ君に呼びかけると、トカゲ君はアキをしっかりとキャッチし下の様子を楽しそうに見ていた。
一方くま五郎はその様子を確認すると、両脇にそびえ立った岩の壁に狙いを決める。
『よし、出し惜しみはなしだな』
そう呟くと、口角を上げ(実際には上がってないが)ると力を溜め始める。
時間にして2秒程力を溜め、そのコンマ数秒後にはくま五郎は既に岸壁に蹴りを入れていた。
蹴りを入れられた岸壁は途端に崩壊し、その崩壊が始まる前にくま五郎は蹴りの反動を糧に真横に跳躍し反対側の岸壁に蹴りを入れていた。
軽く10箇所壊せば十分か。足の損傷具合からいけて7箇所、腕を使えば残り3箇所位はいけるな。
くま五郎の予想通り7箇所目を破壊したその瞬間、その両足が砕け散った。
それをくま五郎はものともせず即座に両手を使い反対の岩壁まで跳躍すると、足の代わりに腕で壁を破壊し始めた。
最初の岩壁が完全に崩れ落ちた時、くま五郎は計10箇所の岩壁を砕きそして自らも砕け散り還っていった。




