スケルトンレギオンと紫のスライム
少女とメフィストフェレスの勝負が終わった頃、谷底ではスケルトン対魔物の軍勢の勢力戦が勃発していた。
『皆の者!ほね太郎殿に続け!』
『おおおおお!!』
重装備のスケルトンの号令により、後ろに並んだ千は下らない多くのスケルトン達が一斉に雄叫びを上げる。
それに対抗するように魔物達も叫び声を上げながらスケルトンと衝突する。
次々と魔物とスケルトンが打ち合い、渓谷は一瞬で乱戦状態になった。
『第一第二小隊は遊撃に回れ!その他は目の前の敵を堅実に撃破!遠距離、援護部隊は各分隊長の指示に従い各々の全力を果たせ!いいか、我々は手柄をあげに来たのではないぞ。我らを召喚せしアキ様を守る為に戦うのだ!その事ゆめゆめ忘れるな!』
リーダー格のスケルトンが全体に命令を出すと50人単位の小隊二つがスケルトンホースに跨り戦場を駆け巡る。
そして本隊の後ろに並んだ魔術師、弓兵のスケルトン達は各隊ごとにすることを決め、前衛の強化や援護射撃を開始する。
その統率の取れた動きはまるで1つの大きな生物の様で寄せ集められただけの魔物達をいとも容易く飲み込んでいった。
『前線部隊下がれ!待機していた第五から第十部隊と交代だ!今の内に得物を調整、交換をして待機だ!』
命令から数秒で前線を交代したスケルトン達は補給部隊から得物を受け取ると、魔物の血や油で切れなくなった武器を補給部隊へと渡す。
『まさか死後にこんな戦に駆り出されるとはな』
『全くだ、だが正直生前より楽なのが皮肉だな』
『死んでるから疲れないしもう皮も肉もないからな』
『おっとこいつは一本取られたな』
休憩に入ったスケルトン達からはとても戦場にいるとは思えない楽しそうな会話が聞こえてきた。
――ドゴォン
その時、前線の方で爆発音のような轟音が聞こえた。
交代した部隊のスケルトン達がそちらに目を向けると、そこには紫色のスライムが大暴れし味方の魔物諸共爆破魔法を乱発していた。
「いやぁ……困りました。私戦闘苦手なんですけどねぇ…………味方諸共爆破しまくるので!」
紫スライムは叫ぶと身体を分身させ、その分身体が次々と敵味方関係無しにくっつき爆ぜる。
『全員あのスライムに気をつけろ!あいつと退治する時は盾だろうと武器だろうとなんでもいい、何かを犠牲にしてなるべく爆発を敵に当てろ!』
「おっと、流石に対処法確立するの早くないです?関係ありませんが!」
リーダースケルトンの命令に気が付いたスライムは分身することをやめ、複数の触手を生やすと大きく振りかぶり――
―――スケルトン達へ向け振り抜き、そこから触手一本あたり五〜七体のスライムが飛ばされスケルトンの頭や胴に付着する。
『全員離れろ!』
リーダースケルトンが叫ぶとほぼ同時に、前線から後続の遠距離部隊までで複数の爆破が起きた。
『全隊に告ぐ、あのスライムの討伐を最優先事項とし急ぎ前線を上げるぞ!』
『おおぉぉ!!』
雄叫びを上げながら前進する速度を上げていくスケルトン達を前に、スライムが再度触手を振り上げる。
そしてスライムが触手を振り下ろそうとしたその瞬間、全ての触手が弾け、斬り跳ねられた。
『我が主の右腕、ほね太郎助太刀致す!』
『ほね太郎殿!助かります!皆ほね太郎殿と共にロードに仇なす者共を殲滅するぞ!』




