フラガラッハ
さて、どう料理してあげましょうか。私的には肩入れし過ぎ防止のタイムリミットがあるのでさっさと終わらせたいものですが……
「あの様子だと少々骨の折れそうな相手ですね」
「あれを防いで行きひとつ切らさない化け物がよく言うのよ」
肩を竦めながらメフィストフェレスがボヤくと、少女は顔を歪めながら剣を顕現させ次の攻撃の準備をする。
その様子を見たメフィストフェレスは鼻で笑いながら一瞬にして少女の後ろに回り込む。
「おやおや、ダメじゃあ無いですか。化け物相手にそんな今から攻撃しますなんて伝えちゃぁ」
「うるさいのよ!」
少女が叫ぶと同時に全ての剣がメフィストフェレスを向き、射出される。
それを高速で飛ぶことで列車のように剣を連れながら戦場の空を駆け巡る。
「良いホーミング性能ですね、ですがそんな愚直に追いかけていてはダメですねぇ」
その言葉を口にすると同時に高度を下げ魔物達の頭上を飛び始め、タイミングを見計らう。
そして都合のいい場所を見つけると場から消え去り、先程まで追尾していた剣達が行き場をなくし地上の魔物達を次々に貫いていった。
「間引く手間が省けて大助かりですよ」
「―――――ッ!!」
メフィストフェレスの渾身の煽りに少女は、目尻に涙を浮かべながら声にならない叫びを上げ地面を何度も蹴り付ける。
「もう許さないのよ!絶対に殺すのよ!応えるのよ『フラガラッハ』!」
少女の半泣き声に召喚した全ての剣が反応しその色を真っ赤に変える。
「殺す、殺す殺す……殺すのよ!」
少女の命令に手元のフラガラッハが紅く光ると、音速に届きうる速度でその身をメフィストフェレスへと突き立てた。
「油断、してましたねぇ……」
「ふふふ、あはははは!もっとやるのよ!フラガラッハ、もっと力を見せるのよ!」
やっと攻撃が当たった事によって機嫌を治した少女は全ての剣へ向け命令を出した。
少女の命令に呼応した剣達はメフィストフェレスを中心に360度全ての方向に広がると、刀身をターゲットに向ける。
その様子を見ていたメフィストフェレスは自らに突き刺さったフラガラッハを抜き取り、ゲイ・ボルグを右手にフラガラッハを左手に握る。
回復障害が面倒ですね、この剣もガタガタとやかましいですし。
それにこの量の剣が飛んで来るのは少し面倒ですね。
「やれるだけやってみましょうか」
「無駄なのよ!あなたはここで死ぬのよ!」
「それはどうでしょう」
口角を吊り上げたメフィストフェレスは右手に握っていたゲイ・ボルグを手放し蹴りあげる。
蹴りあげられたゲイ・ボルグは回転しながら中を舞い、指を鳴らすと同時にフラガラッハと同等の数の回転したゲイ・ボルグが出現する。
ゲイ・ボルグが出現したのを確認すると蹴りあげた元のゲイ・ボルグをもう一度手にし、増殖したゲイ・ボルグ達をフラガラッハとゲイ・ボルグで叩き周りの剣の群れに射出する。
それによって打ち出されたゲイ・ボルグがフラガラッハと衝突しどちらも粉々になり散っていく。
そして時間にして5秒で全ての剣が塵と化し、血の海へと沈んで行った。
「残念ですが私を相手にするには0が3つ程足りなかったようですね」
「お前は何なのよ……」
「通りすがりの悪魔さんですよ」
――ズッ
爽やかな笑みを浮かべたメフィストフェレスはその手に持ったゲイ・ボルグを少女の胸に突き立てると、次の瞬間少女の心臓を中心に内側から無数の槍が飛び出し塵と消えたのだった。
「…………流石にこの身体じゃぁここらが限界ですね」
そう一言呟くとメフィストフェレスは力なく地に伏せ少女同様塵と化すのだった。




