蠢く者達
「流石にノルマは守ってくれましたね。……さてと、丁度盛り上がってきた頃なんですけどねぇ…………」
メフィストフェレスは頬杖を付きながら虚空から一本の金色の槍を取り出す。
「創造神様特製の槍、ゲイ・ボルク。創造神様が言うにはまだ製作途中との事ですがまぁいいでしょう」
――パチン
メフィストフェレスが指を鳴らすと、メフィストフェレスと瓜二つのモノが出来上がる。
「残念ですが楽しい楽しいイベントは終わりのようです」
「で、何が終わりだって?」
メフィストフェレスが呟くと、その後ろからアキが大盾を構えながらそう問いかけた。
「おやおや、なんの事ですかね」
「そんな物騒な物持って尚とぼける気か?」
「…………しょうがないですねぇ……アキさん、申し訳ありませんがあなたはこれ以上イベントに参加する事は出来ませんよ」
その瞬間、メフィストフェレスは爆発的な加速と共にアキの頭上へと飛び上がる。
それに何とか対応したアキは大盾を床に叩き込み固定すると、大盾の上部を握り身体を持ち上げメフィストフェレスに向け蹴りを繰り出す。
それに反応が遅れたメフィストフェレスはそのまま蹴りを受け天井に軽くめり込む。
「やるじゃないですか、前より大分身体に慣れて来たようですね」
「そりゃどうも、で?これから何をしようってんだ?」
「それはまだ説明出来ませんね」
「そうか――よっ!!」
説明を拒むメフィストフェレスにアキは、身体を大いに使い飛び上がりメフィストフェレスにもう一度蹴りを繰り出す。
その蹴りはメフィストフェレスの顔面へと吸い込まれ、メフィストフェレスの手によって阻まれた。
「さて、アキさん。この会場とおさらばしてくださいね」
「何しやが――」
――そしてその瞬間、アキとメフィストフェレスはその場から消え失せたのだった。
〜〜〜
「緊張するなぁ〜……いけない集中集中、宏幸に負けてらんない」
舞台袖で待機していたサツキは頬をペチペチと叩くと、気合いを入れ直し腰の得物に手を添える。
「大丈夫、私だって勝てる、いや勝つ!」
気合十分に叫び拳を握ると、闘技場へ向け一歩一歩歩みを進めていく。
舞台袖を出て出口をくぐったその瞬間、会場一帯から歓声が上がり空気が震える。
「さぁ!これから三回戦を始めましょう!」
運営のメフィストフェレス?の一言で更に会場のボルテージがあがり、それに呼応する様に私の鼓動が高鳴る。
「頑張りますかぁ!」
意気揚々と飛び出すと闘技場へ足を踏み入れる。
それと同時に反対側から対戦相手がこちらへと歩みを進めているのが目に入った。
軍服?いや、それにしては露出が多めだなぁ。
腰には鞭、それに頭に牛のような角まで付いてる。
珍しい、もしかして半魔人?でも半魔人で角が完全に生えているアバターなんて聞いた事ない。
このゲームでは多種多様のアバターが作れる。
それはこのゲームをやっている人間からしたら常識なのだが、その時に明らかに敵MOBの様なものまで作れる。
だがこのゲームを始めてから一回たりともこの街で見かけたことは無いのだ。
それを元にこの街以外に人外達のスタート地点がある。という仮説をギルドメンバーは立てていた。
「あなた、もしかしてこっちのプレイヤーじゃない?」
「…………へぇ、もう気が付いてる人がいたのね。で?もしそうだとしたらどうするのかしら?」
「楽しそうだからその場所を聞こうかなって」
「第三回戦開始です!!」
サツキがそう笑顔で言った瞬間、試合開始のゴングがなった。
「答えはだ〜め」
相手が妖艶な笑みを浮かべた瞬間、サツキの右脇腹に衝撃が走り吹き飛んだ。
――ドゴォッ!
轟音を上げながら闘技場の壁に激突したサツキは、フラフラとした様子で立ち上がると笑みを浮かべ得物を構える。
「一撃でこれかぁ……ふふふ、楽しくなってきた!」
「その余裕いつまで持つかしら!」
サツキの様子を見た魔人は鞭を今度はサツキの頭部へと振るう。
それをサツキは得物で受け止め絡め取るとそのまま力任せに鞭ごと魔人を引っ張る。
「ふふふ、つ〜かま〜えた〜!」
「ぐっ、力じゃ勝てないわね。出てきなさい!」
その一言で魔人の背後に巨大なゲートが開き、そこから無数の敵MOBが現れる。
「うっひゃぁ〜いっぱいだ」
「あなた達、やってしまいなさい!」
魔人の号令によってゲートから現れた敵MOBがサツキだけでなく観客まで襲い始めた。
「それはダメだよ!」
「あなたの相手は私よ」
「ぐっ……」
サツキは観客を襲う敵を何とかしようと動くも、魔人が放った魔法によって阻まれる。
これはまずいな……
「さあ、私達の手の内で踊りなさい!」
なんかイベント物って邪魔者入れたくなるんですよねぇ( ˇ ꒳ ˇ )




