イベント二回戦②
ルアンがハルバードを構えると、ドゥーエムンも両手の斧を構え、どちらも相手の出方を窺いながら機を待つ。
互いにわざと隙を見せ攻撃を誘い、どう来たらどう対処するかを頭の中で何度も何度もシュミレーションする。
相手のステがいまいち分からないから下手に動けないな。
このゲームは主にステータス、スキル、ジョブ、この組み合わせによって戦闘スタイルが決まってくる。
それはそんじょそこらのゲームとは違い、ステータスが偏っていても頭を使えばどうとでもなるからだ。
さて、こいつはそれが分かってるのか分かってないのか、どっちだろうな。
――ボゴッ!
そんな事を考えているとドゥーエムンの右足がめり込み音を鳴らす。
こいつ俺の加速に気付いたのか!
「ふんっ!!」
ルアンの加速には及ばぬものの先程より格段に速度の上がったドゥーエムンの突進に、ルアンはハルバードを地面に突き刺しそれを軸に数回転すると手を離し、突進してきたドゥーエムンの顔面にドロップキックを入れる。
「いい蹴りじゃない、でもあなたの異常な加速いただいたわ」
「よっと、流石にもう気付かれんのはきついな、この方法が広まるのも時間の問題かもな」
空中で三回転した後着地したルアンは、Str任せの加速がばれた事に苦笑いを浮かべ心の中でメフィストフェレス達に謝りハルバードから大剣に持ち替える。
そして柄を両手でしっかり握り――
――ドゥーエムンの胴目掛けて大剣を一文字に薙ぎ払う。
「ぐっ?!」
反応が遅れたドゥーエムンは咄嗟に後ろに飛ぶも腹に大きな傷を負い、内蔵が所々はみ出ていた。
「これは、不味いね」
「良い一撃だろ?まだまだ速く強くいけるぜ?」
腹を押え危機感を覚えたドゥーエムンに、ルアンは片手で自身と同じかそれよりも大きい大剣を振るい、刀身に付いた血と肉を振り払う。
「いいザマだな、悪いがそろそろノルマ達成だから終わらせるぞ」
「ノルマ?」
「始まる直前にメフィストフェレスから瞬殺したらつまらないって言われてな――」
――ズルッ……
会話の途中にルアンがドゥーエムンの視界から消えると、ドゥーエムンの上半身が下半身を滑り落ちた。
「は?」
「俺のStrに続くもう一つの隠し球…………聞こえてないか」
ルアンが言い切る前に塵と化したドゥーエムンに会場は静まり返った。
あり?なんで静かなの?…………やり方に問題あったか?
痛いほどの静けさに冷や汗が止まらないルアンは、故障した機械の動きで実況席を向くとぎこちない笑顔とピースを向ける。
「決まったー!第二回戦の勝者はルアン選手だー!!」
「「うぉーーー!!」」
メフィストフェレスの勝利宣言に、観客達は釣られたように一斉に完成を上げ始めた。
「おー怖ぇ、やらかしたと思った…………」
ルアンはそう呟くと舞台裏に早歩きで向かう。
〜〜〜
「あらら、ドゥーエムンも負けたの?」
「流石にあれには勝てない、お前も見たろ?最後の一撃」
「うん、見てたよ。あれはどうしようもないね、僕でもお手上げだよ」
キリサメは先程の光景を思い出し、両手を顔と同じ高さに上げるとおどけながら言う。
「まずね、僕はVitが低いから一撃当てられた時点で終わりだよ。本気の僕と同等の速さであの火力とかどうなってるのさ」
「あ、それなんだがあの加速の秘密キリサメには教えとこう実はな――」
ドゥーエムンが耳打ちをすると、キリサメの口角が三日月の様に吊り上がる。
「へぇ〜、なるほどねぇ?いいこと聞いちゃった〜」
「負けはしたが大きい収穫だったな」
「そうだね、それにまだまだ発見はありそうだし、イベントって楽しいなぁ」
二人は不敵な笑みを浮かべると試合が映し出されるモニターに視線を送り、新たな発見を、そして強くなる手掛かりを探るのだった。




