イベント一回戦目+二回戦
「決まったぁ!!獣とマッドガーディアンの死闘に幕が降りたぁ!!そして、その死闘の勝者は――――アキ選手だぁ!!」
メフィストフェレスが叫んだその瞬間、それに呼応するように会場中から一気に歓声が上がった。
…………なんだと?
その歓声にアキは閉じていた目を開け、キリサメの様子を確認する。
するとキリサメは足から血を流しながら力無く倒れていた。
攻撃を受けるすんでのところでキリサメの体力が尽きたのか?
アキがそんな事を考えているとキリサメがどんどんと塵になっていき、霧散した。
「一試合目から血みどろの死闘を演じてくれたキリサメ選手、そしてその死合に勝利したアキ選手に拍手を!!」
――サアァァァッ……
いくつもの拍手が合わさり雨の降り頻る日のような音がアキを包むと、満身創痍のアキが舞台裏へと連れていかれた。
「随分ボロボロじゃねぇか」
裏に着くと、底にはニヤニヤと笑っているルアンが立っていた。
「ハッ、壁役なんだから当然だろ?」
「まぁ見てろって、俺が相手をボコボコにしてくるとこ」
「ならやってみやがれ、無理だろうけどな」
アキが肩を竦めながら言うとルアンは口の端を吊上げその場を後にした。
〜〜〜
「さてさて!先程の死合の熱も冷めやらぬ間に第二回戦に移りましょう!!」
メフィストフェレスの楽しそうな声に合わせ、ルアン、そしてスキンヘッドでハーフリザードの大男ドゥーエムンが試合場へと足を踏み入れる。
「さぁ!第二回戦開始です!」
「オラァ!」
開始のゴングと共にルアンが飛び出し、大剣を取りだし地面を抉りながらドゥーエムン目掛け切り上げを放つ。
「オウンッ♪」
「うぇっ……」
切りつけられた瞬間ドゥーエムンが上げた野太い声に、ルアンは吐き気を催しながらも大剣を振り抜き距離をとる。
「良いじゃない、その強烈な攻撃、もっと楽しませてくれよ!」
「こいつ生理的に無理だ!」
ルアンは叫びながらアイテムボックスからハルバードを取り出すと、大剣を仕舞いハルバードを振るい始めた。
――ヴォォン!
一振一振が風を斬り、ハルバードがしなりながら轟音を奏でる。
「おっと、これは強烈すぎて逝っちまう。そしたらギルマスに怒られるんでね」
「チッ、大人しくくらって死にやがれ!」
振るわれたハルバードを右手の斧で弾き、攻撃を防ぐ。
「我が右手に振るいし斧"変態斧エム"は全ての攻撃を受けいれ!我が左手に振るいし斧"変態斧エス"は全ての防御を拒む!むぅん!!」
ドゥーエムンが双斧の解説と共に変態斧エスを振るう。
そしてそれを察知したルアンはハルバードで防御をしようと構え、その瞬間磁石のS極がS極に弾かれた様にハルバードが吹き飛び地面に勢いよく刺さる。
「嘘だろ?!」
「貰った!」
その様子にドゥーエムンがニヤリと笑う、しかしその表情はすぐさま真剣なものになった。
「そう来たか」
「あぁ、そういったさ。その斧が全ての防御を拒むなら逆に攻撃で対処すればいいんだろ?」
大男が斧を弾かれたままの体制で、それに対峙する男が斧を蹴り抜いた格好で制止していた。
そのまま数秒の静寂が闘技場をおおった。
観客は息を止め、実況席のメフィストフェレスは心底楽しそうに笑っている。
だがその静寂はルアンの蹴りによって破られた。
蹴り上げられたドゥーエムンが気持ちの悪い声を上げながら宙を舞う。
「なかなかいい蹴りじゃない!楽しくなってきたぁ!」
「ならもっときついのくらわしてやるわ」
ドゥーエムンが蹴りをくらい高揚していると、いつの間にかその真上にいたルアンが低めのトーンで一言残し、ドゥーエムンのがら空きの胴体にカカト落としを入れた。
その瞬間、ドゥーエムンの身体は瞬く間に地面へと叩きつけられ砂煙を上げた。
「さすがにこれで終わっただろ」
ルアンはそう呟きながら砂煙を避け着地する。
「まだまだ足りないねぇ」
「あぁ?!まだ生きてんの?」
「何を言ってるのさ、これからが本番じゃないか!」
ドゥーエムンの様子にルアンは額に青筋を浮かべながらハルバードを握り、引き抜いた。




