対戦表
「遅れました!」
アキは登場一番に大きな声で謝るとセキトバから飛び降り、選手と思しき人物達が集まる輪の中へと入っていく。
「これで全員ですね、では抽選を始めましょうか」
メフィストフェレスが手元のメモに何かを書きながらそう言うと、どこからとも無く一つの穴が空いた箱を取りだした。
その箱からはガコガコと音が鳴っており、おそらく番号の書いたボールが入ってるのだろうと予測できる。
最後に来た野郎が前に来た人より先に引くのもなんだから残り物にかけるとするかな。
そう考え抽選を傍観していると、見知った人物がいることに気がついた。
ルアンにサツキ、シャケは――いないか、ん?あの紫髪の糸目…………キリサメか、おっちゃんが強いって言ってたしなぁ〜下手に当たらない事を祈っておこう。
そんな事を考えているうちに抽選の番号は埋まっていき、そして最後に残ったのは2と書かれたボールだった。
2って事は初っ端試合する事になるのか?まじかぁ…………
苦笑いを浮かべつつボールをメフィストフェレスに渡し、次の説明を待つことにした。
しかし凄いなこの闘技場、圧巻の一言に限る。
メフィストフェレスが対戦表を組んでる間にキョロキョロと見回した程度だが、その程度でもしっかりと細部まで無骨な装飾があしらわれておりとても一ヶ月程で作られたものには見えない。
事前に造られてたのかね、あの宣言から造り出してたらとても間に合いそうにないが…………後で聞いてみるか。
「皆さん、これが今回のイベントの対戦表です」
その言葉と共にメニュー画面に送られてきた対戦表をぼーっとしながら見てみると、対戦相手がキリサメと書いてあるのが目に入った。
「アキさん、対戦よろしくね?」
「まじか」
「ふふふ、楽しみにしてるよ」
「ではでは、PVP大会につきましては今日の十二時半を予定しておりますのでそれまでに控え室にてお待ちください」
全員が一通り挨拶を終えたのを見計らい、メフィストフェレスが開始時間と待機場所を発表する。
「なお、試合時間になっても現れなかった場合不戦勝とみなしますので十分お気をつけください」
その場の全ての視線がこちらを向いた気がするがそんなことは無かった、うん、無かった無かった。
アキは自らの視線を真下へと向け、大盾の後ろに隠れながら赤面し震えるしかなかった。
一頻りアキを弄り倒すと、メフィストフェレスを始めその場にいたルアン以外の面子は試合の準備の為に解散して行った。
「よお、遅刻魔さん?お前も選ばれてたんだな」
「くそ脳筋め、お前運営側の人間、人間?なのに出てていいのかよ」
「俺自身は運営してないからいいんです〜さて、ちゃんと俺に当たるまで負けるなよ?」
ムカつく顔でそんなことを吐いたルアンにアキは、額に青筋を浮かべ拳を握りながら「てめぇこそな」と返した。
そのやり取りの同時刻、闘技場の外ではキリサメと一人の男が立ち話をしていた。
「ねードゥーエムン、アキってプレイヤーどう思う?」
「どうって…………うん、蹴られたい」
「そうじゃなくてさ、強いと思うかい?」
「そんなことか、強いんじゃないか?取り敢えず美少女だし殴られたい」
ドゥーエムンのドMぶりにキリサメは苦笑いを浮かべ、ドゥーエムンが役に立たないと脳内で切り捨てる事にした。
さて、情報屋にでも行って情報買って少しでも勝率でもあげときますかね。




