帰路
サンドホエールを討伐したシャケ達は、サンドホエールに乗り必要な部位を採取していた。
「よし、取れたぞ!」
「やっとか、それじゃあ帰るか!」
そのとき、依頼の書いてある紙からハラりと別の紙が落ちてきた。
「おい、なんか落ちたぞ?」
「こんな紙見た事ないけど、なになに?『君達のマッスルを見込んでサンドホエールの幼体以外にもう一つ依頼を出しておくね』だと」
シャケは他のメンバーに聞こえるように内容を声に出し、そして徐々に額に青筋を浮かべ始める。
「『そこに砂から出て来る沢山の魔物がいるよね?そいつらを軽く300匹程持って帰って来てくれると嬉しいな』…………」
「「………… 」」
「地獄はここからみたいだぞ」
苦虫を噛み潰したような顔でシャケが言うと真っ先にエストとダブリンが船から飛び降りた。
「大義名分を得たから弾かれるように飛び込んだな」
「んな事言ってないで早く二人と合流するわよ!!」
「掴むなバカyおぁぁぁ?!」
その様子を見ていたシャケがそう呟くと、ミーがすかさずつっこむと近くにいたムイスラの襟を掴んで船から飛び降りる。
「へいへい……あ、船員さん達は襲われないよう適当に巡回しといて?終わったら合図打ち上げるから。んじゃ、あらよっと」
シャケは船から飛び降りると、視界に入った流れる砂に後悔の念を抱いた。
これどうやって着地しよう。
アイツらは?どうなってる?
そう思いミー達の方を見ると、二人は既にエストとダブリンの場所へと向かっていた。
あ、やばい、もう目の前やんけ、どうしよどうしよ。
よし、あきらめて普通に着地しよう。
シャケが後悔し諦めるまで、この間僅か2秒だった。
――ズボッ
バカ正直な着地をしたシャケは、落下の勢いによって腰まで綺麗に埋まる事となった。
「はぃ?」
想定外の事に情けない声が口から漏れ出す。
「え、まずくね?」
砂に埋もれ動けない、そして砂中には無数の敵が。
その状況が何を意味するか理解したシャケは瞬く間に顔を青ざめていった。
やばい、早く抜けないと死ぬ!!
急いで抜け出そうと試みたシャケは抜け出すどころかどんどんと沈み、身動きがどんどん取れなくなっていく。
それを知ってか知らずか敵MOB達はシャケへ向けて一目散に近づいてきた。
馬鹿馬鹿馬鹿!!寄りによってこのタイミングで来んな!!
あぁ、どうする?迎え撃つしかないか!
抜け出す事を諦めたシャケは砂から飛び込んで来た敵を掴むと、そのまま振り回し、並み居る敵を殴り倒していく。
砂面を泳ぎ魚雷のように向かってくる敵に拳を振り下ろし、再起不能にすると飛び込んできた敵に向かって投げ付け対処する。
そして砂中を泳ぐ敵に対しては噛み付いてきた所を引き剥がし、握力で頭を握り潰す。
二匹、三匹、十匹二十匹と倒して行くと、異変に気が付いたパーティのメンバーが駆け寄って来た。
「こんな所で砂遊びしてんじゃねぇよ」
「好きでこうなってんじゃねぇ!」
シャケは若干笑いながら言うムイスラに対して敵をぶつけると、頭を握り潰してある死体を足場に徐々に上へと上がっていく。
「ミー、ちょっと手伝って」
「え、むり」
ミーは敵とシャケの言葉を一刀両断すると、襲いかかって来た敵からエストを庇うと足に噛み付いている敵を斬り、周りの敵も次いでと言わんばかりに軽々と倒していく。
「じゃあムイスラ!」
「そんな余裕はねぇ! 」
こちらも即答で断ると飛んできた敵をすんでのところで避け、去り際にナイフで切り裂き攻撃していた。
「こうなったらやりたくなかったが…………」
――ガッ!!
シャケは意味深な事を呟くと、次の瞬間ムイスラとミーの足を掴みそれを使って脱出を始めた。
「ちょっと?!」
「馬鹿野郎!クソ、こいつ無駄にStrに振ってやがるから取れねえ!」
「ちょーっと足を借りるだけだからなぁ!」
ゲスい笑みを浮かべると二人の足を引っ張り、やっとの思いで太股付近まではいでることに成功した。
そして、逆に足を引っ張られた二人は片足を砂の中に突っ込んで身動きが制限されていた。
「馬鹿でしょ!」
「て、敵が多いので爆破魔法を……あふっ!?」
「嫌な予感しかしない」
エストが爆破魔法を発動しようとした時、足元を敵が通りバランスを崩して転けてしまった。
その結果込められていた魔法が暴走し、大爆発を起こしたのだった。
「おい、あの爆発って合図じゃね?」
「早く行ってあの人たちを回収しよう」
船員達が爆発の方に行くと、爆発に巻き込まれた五人と大量の魔物が転がっていた。
この後シャケ達は無事回収され、巷で噂になったとかなっていないとか。




