館の化け物
セキトバに乗り駆け出すと、その後ろを黒馬に乗ったほね太郎とくま五郎が追いかけてくる。
そしてその後ろを館の化け物までドスドスと音を立てながら追ってきていた。
「セキトバ!走りながら影魔法で攻撃できるか?」
『造作もないこと!』
セキトバは鼻息を吹くと影から無数の拳が形成され館の化け物目掛け飛んでいく。
拳達が館の化け物の一部を吹き飛ばす音が聞こえ、その音と共にその破片が辺りに飛び散る。
これである程度距離が離れてればいいんだが…………
アキがそう思い器用にセキトバの上でくるりと回り後ろ向きに座って様子を見てみると、先程より明らかに距離が縮まっていた。
ふぁっ?!
その事実にアキが少しの間は困惑していると、館の化け物の射程圏内に入ったらしく走りながら腕を振り上げていた。
まずっ?!
その様子にアキが戦慄を覚えた瞬間、館の化け物がその腕を振り下ろし、砂煙が激しく舞い上がった。
…………危ねぇ、あと少しでも反応が送れたら死に戻りしてた。
腕を振り上げたのを見たアキは咄嗟に大盾を頭上に構え、振り下ろされた腕を大盾の上を滑らせる事で何とか凌ぐことが出来た。
そして、それによって化け物の腕が地面へと刺さり、化け物との距離を離すことが出来た。
「よし、だいぶ離した!お前ら、この間にあいつとどう戦うか会議!!」
アキは走り続けるセキトバの背に胡座をかきながら併走する全員に向け叫ぶ。
胡座をしてて落ちないのか?大丈夫、ゲームだから何故か落ちない。
そう、ケツがくっついてる感覚がしてるから大丈夫だ多分きっとMaybe。
「俺の推測ではあのオートマタを叩かない事には収まらないと思うんだが、ほか三人何か意見は?」
『先程の奴の挙動を見ておりましたが、やつに半端な攻撃をするのはやめた方がいいと思われます』
『たろ公何か分かったのか?』
アキが二人と一体に質問すると、いつになく真剣なほね太郎が解説を始めた。
『おそらくやつは魔力を原動力にしており、あの身体全てに魔力が通っている状態だと思われます。先程のセキトバ殿の攻撃を受け身体がかけるとやつの魔力の濃度が上がり速度も何割か上がっていました』
すごいなほね太郎、見ただけでそこまで分かるものなのか。
『恐らく本体は潰されないようどこかに空間を空け操作している筈です』
『ならそこを見つけてぶっ倒しゃいいと』
ほね太郎の推測があっていて、くま五郎がやつを壊せるとする、一番の問題はその本体の場所なんだよな。
「それができたら苦労しないと思うが……」
『主、それなら簡単です。見たところあの怪物には隙間がある、そしてその隙間には影が生まれている。なれば我の魔法で探索などお手の物』
『それなら俺が飛び込んで風穴開けてやりゃ良い訳だな』
アキのこぼした一言にセキトバは自慢気に言い、くま五郎は骨の顔でなければ狂気的な笑みが見えたであろう様子で答える。
『たろ公、地面からだと威力が足りなさそうだから頼んだ』
『おまかせを!!』
『探知した、心臓と反対の場所にいる』
『たろ公!!』
『いきます!!』
セキトバが探知をし、ほね太郎とくま五郎が短いやり取りをすると、ほね太郎はタワーシールドを両手に回り始めた。
え?何をしてるだァ?
ほね太郎達の考えが全く分からないアキは盾を構えつつその様子を見ていた。
『くま五郎!!』
『おう!!』
二人が声を張り上げると、ほね太郎がタワーシールドを遠心力をのせ振り抜く。
そしてそれにくま五郎が合わせ弾丸のような速度で体制を建て直し迫り来る館の怪物に飛んで行った。
━━バガッ!!
くま五郎が通り過ぎた場所に大穴が開き、その巨体がガラガラと崩れていった。
『爽快ですね』
「だな」
ほね太郎と静かに崩れゆく館の化け物を眺めていた。
すると、瓦礫の中からこの館の主であったであろう物と同化した本体が飛んできた。
「あ、ある……じ、さま……すみま……せん」
「……お前も一緒の所に行ってやれ、それと荒らしてごめんな」
やっぱりこのゲーム後味悪いよな。
おれはこの光景を見て再度そう思うのだった。




