目的地と神達の雑談
「いってぇ」
顎を抑えながらルアンが文句をこぼす。
「自業自得だ、お前のせいで死ぬところだったんだからな?それに比べりゃアッパーカットの一発や二発安いもんだ」
俺はルアンに文句を言いながら雪崩でまっさらになった道をゆっくりと歩いていた。
「んで?今回のターゲットはなんなんだ?」
「蒼天龍フラシールっつードラゴンだ、ついでに行っておくとあの上にスポーンするらしい」
ルアンはそう言うと雲に隠れた山の山頂を指さした。
嘘だろ?あんな所まで行かなきゃ行けないのか?
その山頂は今まで登ってきた道の軽く倍近くの距離があり、さらにその向こう側に続いているように見える。
「冗談だよな?ここに来るまで結構時間食ったぞ?」
「冗談だと思うか?」
「…………くそ、来なきゃよかった」
ルアンと共にここに来たことを後悔すると俺はホットホッターホッテストを飲み、これからの道に向け効果を重ね、登山に向け決意を決めるのだった。
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薄暗い部屋に二つの人影が椅子に座りながら話し合っていた。
「いやぁ〜、さっすがルアンちゃんだねぇ?」
「そうですね、普通雪崩を起こして敵を倒すなんて常識的でもゲーム的でもありえないですからね」
少し歳を食った男性の声がふざけたように言うと、もう片方の鈴の音のような美しい女性の声が淡々と、それでいて少し面白そうに言う。
「そーいやアテナちゃん?」
「なんでしょう」
「その設計図みたいなのってもしかして期待の新人ちゃんへのものだったりするのかい?」
男がアテナの手元の紙を指さしながら質問をする。
するとアテナはその手を止め、設計図らしき物を男へ見せる。
「ほぉ、これはこれは…………あの子の装備と言うよりあの子の使役しているスケルトンの物だねぇ?」
「流石におバカなあなたでも分かりますか」
「おバカとは失礼だねぇ?」
そこに描かれていた設計図をマジマジと見ながら笑うハデスに、アテナは口の端を僅かに上げもう一つの設計図を取りだした。
「こっちは創造神様から頂いたものです、どうやらこの世界ではパワーゴリゴリの変態になりたいとの事ですので」
「うっわぁ…………こんなものどうやって振り回すのさ、正直ハデスさんですら振り回せる気がしないよ」
ハデスは差し出された設計図を見ると苦笑いをし、その先生をマジマジと見始めるのだった。
「ふぅむ、アテナちゃん、ここはどうする気なんだい?」
「あぁ、そこはですね、今お二人が向かっているBOSSのドロップで何とかなる予定ですので、別になんともないですよ」
「ふぅ、やーっとイベントの設定終わりましたよ……」
創造神から受け取った設計図にアテナとハデスが話し合いをしていると、その部屋にゲートが開きメフィストフェレスが疲れきった声色でボヤきながら入ってきた。
「おっ、おかえりメフィストちゃん」
「メフィストフェレス、おかえりなさい」
「メフィストフェレスただ今戻りました。取り敢えずイベントはじゅんちに開始出来ます、と創造神様にお伝えください」
メフィストフェレスの帰りを二人が出迎えると、メフィストフェレスは伝言だけ言うとソファーに寝転がり寝始めてしまった。
「お疲れのようですね」
「そうだねぇ、今度何かあったら手伝ってあげた方が良さそうだねぇ」
二人は苦笑いをするとモニターに映ったアキとルアンを見ながら作業にもどるのだった。




