経験値ジャックポット
ウィンタージェネラルを倒したアキ一行は雪原を越えBOSS、中BOSSの数多く配置されている雪山へと足を運んだ。
「だ、だりいぃぃぃ……」
「おいおい、このくらいでへばってたらこの先ついて来れないぞ?」
雪や風が吹き荒れ数メートル先すら見渡せない中、アキとルアンは山を登り続けていた。
現実でも山登りをした事の無いアキはいまだに慣れぬバーチャルリアリティでの登山に悪態をついていた。
「んだよこのゲーム、変な所ばっかリアルに作りやがって。なんでこんなに疲れるんだよ…………」
「そりゃぁ仕方ない、あいつらが作ってるんだからな」
「やっぱりルアンはあっち側の人間か……」
ルアンの発言に苦い顔をしながらアキが吐き捨てる。
「あっち側ってなんだよ、俺はこんなゲーム作れない、運営側には一応いるが手を出すことは無いやって口出しくらいだ」
「思いっきり関わってんじゃん」
「そうかもな」
「それと、なんでStrガン振りのはずなのにあんな速度出せたんだ?」
アキは先程の戦闘でウィンタージェネラルに向かって恐ろしい速度で飛んで行ったルアンに持った疑問をぶつけた。
「簡単だ、力こそパワーだからだ」
「はぁ?」
ルアンのThe脳筋の返答に顔を歪めて呆れているとその瞬間、ルアンが先程同様一瞬で上空へと上がりルアンとアキの周りの雲が弾け飛び一気に晴れやかな空が顔を出した。
「…………は?」
先程の呆れた声とは打って変わって、理解の追いつかず呆けた声を発していた。
しばらく開いた口が塞がらないでいると空からルアンが地上へ向け落下を開始し━━
━━ズドオォォォン!!
轟音と降り積もっていた雪を巻き上げてルアンが着地する。
「どうだ?これがStrガン振りの実力だ」
舞い上がった雪の煙が止むとその中心には腰に両手を当てドヤ顔をしたルアンが立っており、自信満々にそう言った。
「今のでさっきの超スピードの仕掛けがわかった…………」
「おお、流石」
簡単な事だった、このゲームの無駄にリアルな部分とステータスによる補正の部分を使えば誰でもできるようなものだ。
ルアンはStrガン振りだと言った、だがそれだとスピードの説明がつかないように思える、だがそれは間違いでこのゲームでStrだからこそできる芸当なのだ。
「このゲームでStrの補正がかかるのは攻撃時だけじゃない、そういうことだろ?」
「その通り、あいつらの設定を見てたら思い付いてね」
思い付いてね、じゃねぇよ。普通Strの補正を跳躍時の地面を蹴るという行動に乗せられるかもとか考えるか?
「チートかよ」
「それを言ったらお前のスケルトン達もかなりのチートだけどな、あいつらそんなものが序盤でドロップさせられて焦ってたぞ?」
「俺は貰っただけなんだけどな、この指輪を不要だと思った馬鹿者には感謝だな」
『主、敵です。それも大多数』
死霊王の灯火について話しているとほね太郎が真剣な声色で警告をすると武器を構えた。
「大多数の敵がいる、だってさ」
「さっきの跳躍で雲に大穴ぶち開けたからその光に敵が集まって来ちゃったのかもな」
「何してくれるんだ、って言いたいとこだが手っ取り早くレベル上げをしたい現状としてはありがたいな」
敵が来たという報告に二人はニヤニヤと笑い始め嬉嬉として自らの得物を手に取る。
「対多ならこいつかな」
「太郎、五郎、俺の事はいいから確実とにかく屠ること、良いな?」
『はっ!!』
『おうよ!!』
俺はスケルトンブラザーズに命令をするとセキトバに跨る。
「さぁ、殲滅するぞセキトバ、ジャックポットだ!!」
『ははっ!!』
アキは声高らかに言うとセキトバを走らせ大量に迫って来る白い毛に覆われた猿達に突進する。




