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ThorPhantomOnline~防御力には自信があるネクロマンサーです~  作者: 存在感皆無な人
〜ThorPhantomOnline〜
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サツキのランカー奮闘記

アキがルアンと共にウィンタージェネラルを狩っているのとほぼ同時刻、サツキはβ時代のフレンド達が集う現時点最強ギルドのメンバーと共に街の近くの森にクエストのため出かけていた。


「お使いクエストやだー!私もBOSSと戦うのー!!」

「はいはい、サツキはいっつも戦いたがるわよね」


駄々をこねるサツキの隣を歩くプレイヤーは口に手を当て、うふふと笑いながら慈愛に満ちた笑顔をサツキに向ける。


「マッツンなんかそれキモイ」

「あらやだ、本人の前でそんなこと言っちゃいけないのよ?」


サツキの苦情に優しく答えるそのプレイヤーはとんがりボウシを被り、いかにも魔女といった紫色のローブを身にまとった男だった。


「マッツンってさ、βの時は普通に男の格好してたよね?」

「そうねぇ?でも今は面白いからオカマを貫いてるのよ。だっていいじゃない、RPGに出てくるオカマってだいたい強キャラよ?」


サツキの質問に答えるマッツンはその角張った人差し指を唇に当てるとうふっ、と笑うと空いている方の指をパチンとならす。


すると草むらに隠れていたレッサーコボルトの顔が緑の液体で出来た球体の中に閉じ込められ苦しみ悶える。


「レッサーコボルト?!」

「あら、サツキちゃん気がついてなかったのね、まだまだ相手を察知する能力は無いみたいね」

「うん、まだないよ……ねぇ、どうやったらそんなふうに敵を察知できるの?」


━━パチン


サツキが質問を投げつけたとほぼ同時にマッツンが指を鳴らし、絶命したレッサーコボルトが緑の液体と共に霧散して消えていった。


「そうねぇ、まだサツキちゃんは目と勘だけで索敵してるわよね」

「え、まぁそうだけど」


サツキの返答に妖艶な表情を浮かべたマッツンは水魔法で簡単な模型を作り出すと説明を始めた。


「いい?サツキちゃん。このゲームではね、身体と心全てを使って感じ取らなければならないのよ。音や匂いを始め、殺気、空気の流れとかね?」

「ほうほう、メモしておこうかな」


サツキはそう呟くとメニューを表示しメモを開き、キーボード入力を始める。


「良し、いい子ね。まずこのゲームは五感全てが必要になってくるわ」

「ん?でもそれってどのVRでも」

「甘いわね、このゲームは異常よ。今までほとんどのVRMMOを触ってきたけどこのゲームほど現実味を帯びているゲームはないわ、それこそ本当に異世界に来たみたいにね」


確かにそうか、私もマッツンよりはやっていないけどこのゲームは群を抜いてリアルだ。


「そして敵MOBも馬鹿じゃない、これは注意してみないと分からないけれども他のゲームならノコノコと突撃してくるMOBばっかりだったけど今のMOB見たわよね?」

「完全に奇襲を狙ってたね」

「そ、そういう事。だから案外このゲームVR経験者でもデスる事とかあるのよ?私はサバゲーとか海外でハンティングした事あるから隠れているMOBを見つけるのは出来てるからそこまでデスをする事は無いけど」


メモを終えたサツキはメニューを閉じマッツンへと向き直るとキラキラとした視線を送る。


「マッツンお願い!!索敵について教えて!!」

「まぁそう来ると思っていたわ、焦らないでも大丈夫よ、今日はそれを教えるためにこのクエストにしたんだからね」

「やったね!!」


マッツンの返事にサツキは笑顔で飛び跳ねながら喜んでいると、マッツンはおもちゃを買ってもらって喜んでいる子供を見る目で微笑んでいた。


「ほらサツキちゃん、索敵について教えてもらいたいんでしょ?早くいらっしゃい」

「よ〜し、頑張っちゃうぞ!!」




~~~




「無理!!難しい!!」

「早いわよ、まだ一時間もやってないのよ?」

「え〜、一時間で短いってどんだけやるのさ〜」

「少なくともセンスが良くて計十時間かしら」

「うへぇ、長いね」


サツキはマッツンの放った時間に下を出しながら悪態をつく。


「何を言ってるのよ、完全に感覚を物にするなら普通はもっとかかるのよ?ゲームゲームに必要な点だけを絞ってるからこんな短いの」

「これで短いの?」

「ええ」


あー、嫌になってきたかも…………


サツキは心の中でボヤくと何となくMOBのいるかも?と思った場所に向けて手元にあった石を投げ付ける。

するとそこからギャウン、というコボルトの声が聞こえてきた。


「あら、やるじゃないのサツキちゃん、当たったのがまぐれだとしてもある程度場所はわかったのよね?」

「まぁなんとなくは」

「いいセンスね、これなら5時間以下で終わらせられるかもしれないわね」

「ほんと!?」


━━ズシュッ


途方に暮れていたサツキだったがマッツンの言葉を聞いたサツキは笑顔を取り戻し、コボルトの首を一太刀で斬り飛ばす。


「ええ、後はそれの精度を極めるだけだから、その感覚を忘れずに何度もやればその内索敵が正確にできるようになるわ」

「やったね!!よーし、頑張っちゃうぞ〜!!」


サツキは楽しげに腕をぐるぐると回すと索敵に入る。


その日森中にコボルトの断末魔が響き、サツキ達の練習した場所は掲示板でホラースポットとして数日の間騒がれたと言う。


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