似た者同士
夏休みが始まり、ゲームの時間が多く取れるようになった宏幸はいつもの日課であるアングリーベアーやバイコーンなどの強MOB達を倒し、レベル上げをしていた。
とりあえず一通り倒したBOSSや強MOBは倒したが…………良いレベリング場所が見つからない。
プレイヤーレベルがいつの間にか13になっていたがそれからかれこれ数時間安定してかれるヤツらを狩っていたが上がりやしない。
これは新しい狩場を見つけなければアイツらにおいていかれてしまう。
そんな焦りを覚え、アキはいても立ってもいられずセキトバを呼び出し昨日シャケ達と行った雪原へと走らせた。
その道中出てきたMOBを全滅させつつウィンタージェネラルの前まで着くと、装備のチェックに入る。
出る前に確認はしといたが念の為に見ておかないとな。
そんな調子でアキがほね太郎達の装備も含めて点検をしていると後ろから足音が聞こえてきた。
「太郎、五郎!!」
『はっ!!』
『おう!!』
アキの命令に二人は弾かれたように動くと自らの得物を構える。
「待て待て待て!!俺だ!!」
臨戦態勢に入ったアキ達を見て足音の主が慌てて止めにかかる。
そしてアキはその足音の主の声に聞き覚えがあった。
「なんだ、お前か」
声の主がルアンであることに気がついたアキはため息をひとつ吐くと、その場にあぐらで座り込み装備の点検に戻った。
「なぁ、なんでお前そんなに大丈夫そうなんだ?」
「何の話だ?」
「こんな寒い仲良く平気だなって」
ルアンの質問にアキは目を細めため息を吐き、アイテムボックスからホットホッターホッテストを取り出しルアンに見せつける。
「これを飲んだら寒さ耐性がついて普通に過ごせるようになる。ほれ、一つやる」
「お、ありがたい、それじゃ遠慮なく━━」
ルアンはアキからホットホッターホッテストを受け取ると栓を開け容器を煽り━━
━━「うっぐるoai5ns6y?s2??!!」
案の定ホットホッターホッテストの辛さに悶えて転がり出した。
「ぷっ、くくくくくくっ…………お前それどうやって声出してんだよ」
アキは自分と同じ過ちをするルアンを腹を抑えながら笑うと、そうなることを見越して用意していたポーションをルアンに投げ付ける。
「ほら、これで少しは良くなる」
「お、お前ぇぇ」
「それは一滴で30分は持つやつだぜ?アホだなぁ?」
完全なるブーメランである。
「オイ誰だ今馬鹿にしたやつ!!」
「お前、気でも狂ったか?」
「おうてめぇこっちにはまだこれの予備があんだぞ?身体の隅から隅まで塗りたくってやろうか?」
「……それは勘弁だな」
痛みから開放されたルアンは肩を竦めながらそう言うとアキから距離をとる。
「んーで、なんでお前がここにいる?」
「BOSS討伐して経験値稼ぐためだが」
アキが質問をするとルアンは淡々とそう答えた。
「丁度いい、次のイベントまでにレベルをガッツリ上げたいからパーティー組んでBOSSラッシュだ」
「ほぅ?良いねぇ、アキ、なんなら今実装してるBOSS全部潰しに行くか」
「まさか同じ意見とはな?」
珍しく二人は意気投合し、口角を吊り上げ似通った笑顔を作るとウィンタージェネラルの待つ場所へと視線を向ける。
「まずは手始めに」
「冬将軍をぶっ飛ばしますかねぇ」
「あいつの動きは覚えてる、ノーダメで倒させてやるよ」
「ほほぅ?なら俺はお前が防ぐ攻撃がないくらい相手をボコボコにしてやるよ」
二人は口角のつり上がった笑顔で言い争うと、我先にとウィンタージェネラルの元へと走り出す。
「太郎五郎ファーストアタックは渡すんじゃねぇぞ!!」
「させるかよ!!」
アキの命令によってウィンタージェネラルへと飛び込んだくま五郎だったが、くま五郎の拳がウィンタージェネラルに届く直前にルアンの投げ付けた槍がウィンタージェネラルの胴を貫いた。
「チッ」
「ファーストブラッド頂き」
槍が命中したのをニヤニヤと見ているルアンはアイテムボックスから大剣を取り出す。
「Strガンぶりの実力見せたらァ!!」
ルアンが大声を上げながら大剣を脇構えで突進をするとウィンタージェネラルは帯刀している刀の柄に手をかけ、残像が映し出されるほどの速度で抜刀した。
「馬鹿野郎!!アホみたいに突っ込んでるんじゃねぇよ!!」
アキはウィンタージェネラルの発動した範囲攻撃を間一髪のところで防ぎ、ルアンを怒鳴りつける。
「攻撃こそ最大の防御だから」
「馬鹿野郎防御こそ最大の攻撃だ」
ルアンとアキが言い争っていると目の前に立っていたウィンタージェネラルが残像を残し消え去った。
「後ろだ!!」
「やっべ」
━━ギイィン!!
『我が主よ、これで二度目ですね』
こうなることを見越していたほね太郎がタワーシールドを使ってウィンタージェネラルの攻撃を防ぐと、アキに向かってどことなくムカつくセリフを吐いた。
「あー、俺盾役向いてねぇのかね」
アキはそう呟くとウィンタージェネラルに向き直り、大盾を構え直した。
「ルアン、俺が防いで隙を作るからそこに最高火力を叩き込め。直ぐに終わらせるぞ」
「うし、やるか」
アキの提案にルアンは短く返すと攻撃スキルのモーションをとる。
「いつでもぶち込める」
「来よったな」
ルアンのその一言に反応するように飛び出してきたウィンタージェネラルは、アキに向かって袈裟掛けに斬りかかり、アキはそれを軽々といなす。
アキがそこから少しズレたその瞬間、ルアンの繰り出した上段からの一撃によってウィンタージェネラルが真っ二つになり、塵となって消えた。
「やるじゃん」
「アキこそな」
ウィンタージェネラルが消え去ったのを確認すると二人はハイタッチを交し、ニヤニヤと笑い会った。
二八部変更点
名前無いし → 名前気に入らないし




