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冒険者組合

 ラルガさんに付いて、冒険者組合の中に入っていく。

 そこには壁際にカウンターが複数並んでいて、その奥には職員らしき人たちが何かの書類をやっつけている。

 それにしてもその反対側にいる人たちは男女ともにいるのだが、男性の割合が高い。

 その全員が全員武装している。

 冒険者組合の中は全部が物珍しい。

 こんな光景、日本では到底見つけることが出来ない。

 コスプレイベントでだって、こんな光景を生み出せないだろうと思う。

 私がそんな景色を呆然と目を輝かせて見ていたのだが、ラルガさんはカウンターの一つに行けば、


「支部長を呼んでくれ」

「え」

「え、あ、はい! ちょっと待ってください!」


 ラルガさんの言葉に思わず、声を出してしまう。

 支部長って、多分、ここでの最高権力者ではないのだろうか。

 そんなところまでの出来事なんて予想していなかった。

 受付の子が慌てて、後ろの個室の扉を無効に消えていってしまう。


「あ、あの、このことってそんなに大事、なのでしょうか?」


 クリスとジーンの間に言って、二人に聞こえる声だけで聞いてみた。

 しかし、どれも私が望んだ答えではなかった。

 

「組合からの依頼だったからねー」

「上位の冒険者たちが集まって討伐するようなやつだからな」


 そう言われてしまうと、どうして自分にそんなことが出来たのか疑問が浮かぶ。

 あれはもしかしたら火事場のバカ力なのかもしれないと思うようにしても、弓を引く力は三カ月間ずっとあんな感じだったから、違うと思いつつも、そう思っていたいという逃げたい気持ちが大きい。

 そして、それを説明しろと言われると、自分でもよく分かっていないことだからどう説明したらいいのか分からないのが一番の問題かもしれない。

 もしかしてもなくて、それが一番聞かれることではないかと思う。

 毛皮をギュッと握り、ついつい自分を包むようにしてしまうのだが、それで自分の恰好を思い出す。

 この格好は不味い。


「あ、あのすみません……ちょ、ちょっとだけ」

「ラルガさん! 二階のお部屋にどうぞ!」


 あぁ、と嘆くように天を仰いだ。

 こんな恥ずかしい格好で行かないといけないなんてと、思いながらラルガさんに付いて行くことになってしまった。

 私が歩き出したところで、二人はそこに残るみたいに動かない。

 それで思わず、振り返ってしまう。


「あれ……二人は来ないのですか?」

「それは、ねぇー……」

「呼ばれてねぇからな」


 そう言うことだったかとやっと思いいたる。

 用事があるのは私だけで、二人には何もない。

 だから、ここに残る。

 なんだかこの体になってから、ちょっと思考が前よりも回ってないかもしれない。


「あの、良ければ付いてきてもらっていいでしょうか……?」


 ラルガさんとは来る間でそれなりの話をしたのだが、それでも今の体の年齢は割と二人に近いところにあると思うので、なんだか親近感がわく。

 二人が目を見合わせて、一緒に階段を上がってくれる。

 それだけで心強さを感じる。

 私が階段を上がったところで、ラルガさんが目を剥く。

 多分、二人が来ることが予定外であるからだろう。

 それも一瞬で、ため息をついて、廊下を歩いて大きな扉の前に着く。


「まぁ、いいか。一番の発見者はお前たちだしな」


 ラルガさんが入っていった扉に私たちも入っていく。

 そこのソファには、一人の男性が座っていた。

 体型はラルガさんのようにがっしりとしているし、自分で切ったような短髪に、頬には大きな傷がある。目はぎらついているから、何というか圧がある感じがする。それに斧とか背負っていたらとても似合いそうだなとか失礼なことを考えてしまう。


「そいつらはどうしたんだ」


 乱暴な言葉遣いでびくっとしてしまう。

 なんだか日本でもこんな風に昔怒られたような記憶がある気がする。

 記憶喪失だけど、覚えがあるなんて本当に私の記憶は信用できない。


「あの、私が一緒に来てもらいました、すみません」


 自然と頭を下げてしまった。

 そして、やってしまったと顔を少し歪めてしまう。


「いいじゃねえか。この子を見つけたのは子の二人なんだからよ」


 本来は逆なのだが、口は挟まない。

 頭を上げると、ふんとソファに座った男性が鼻息を荒くする。


「まぁ、全員座ってくれ」


 私とクリスとジーンが座って、ラルガさんが支部長という人の隣に座った。


「俺はこのアトランタルの冒険者組合の長をやっている、アガルダだ」


 支部長さんは、アガルダさんと覚えておこう。

 

「支部長とはいってもまだここについて間もないんだ、こいつは」

「お前なぁ……」


 アガルダさんとラルガさんはなんだか仲が良さげに見える。

 はぁとも何とも言えない言葉をつぶやくにとどめておく。


「私は、そのムツミと言います。よろしくお願いします」


 なんだか癖で頭を下げてしまう。

 もうこれでこのまま通していくのがいいかもしれない。

 長年染み付いてきた癖というものだから。


「あぁ、よろしく頼む。それで朝出て行ったラルガが何ですぐに帰ってきたのか教えてくれるんだろうな?」


 私ははい、と答えて昨日の出来事を話していった。

 私の話は最初から口を挟む箇所が多かったはずなのだが、アガルダさんはまずはしっかりと話を聞いてくれる辺りいい人かもしれないと思ってしまう。

 昨日まで森にいたこと、それに出会ったデカいクマ、その翌日に二人と最初に出会ったこと、まで。

 大した情報もない話だったのだけど、それでも話し終えた後に少しだけ沈黙が続いた。

 私が語る言葉はあるのだけど、今必要な情報ではない。


「それで、その話をお前は信じたのかよ、ラルガ」

「信じるも何も死んだラウンドベアを見せつけられたからな。今頃はどうやってここまで運んでこようか話してるところだろうさ」


 信じてもらえないのも仕方ない。

 私が同じ立場であれば、私も同じ反応をするだろうから。


「それは確かにそうだな。それで、報奨金なんだが……」

「そいつはこのムツミにやってくれ」


 え、と思わず声が出てしまう。

 それはいいのだろうか。

 だって、本来支払われるべき人物たちがいるのではないかと思ってしまう。


「良いのかよ」

「いいも何も、俺たちは森を散歩して終わっただけだからなー……」

「……いいのでしょうか、私が頂いても」


 もらえるのであれば大変ありがたい話である。

 何よりも今、私はお金が欲しい。

 お金がないと大変困った状況にもなってしまうから。


「俺らが貰ってもなぁー……さすがに面子も立たないからなー……」


 確かに、とは思うのだが、どうあっても言い包めてしまえるような気がする。

 そんなことを考えていると、隣から声を掛けられる。


「やってもない事をやったと言って、バレた時は信用もなくなるから、そうなったら冒険者は終わりだ」


 ジーンが真剣な顔をして呟く。

 なるほど、信用の職業なのか。


「まぁ、ラルガがそういうのであればいいんだがよ……それでムツミといったな、あんたはこれからどうするんだ?」


 何がしたいのか、はっきりは決めていなかった。

 ただ、ここで平和に暮らしていたいと思ったところもある。

 あるのだが、ちょっとだけ憧れを持ってしまった。

 せっかくこの世界に来た、日本というところでもなければ地球でもない。

 少しだけ前を剥きたい。

 顔を上げて、色々な物を見てみるべきだと思った。

 だから、そんなことが出来る彼らに胸を打たれた。


「はい、冒険者になりたいです。冒険者として活動したいと考えています」


 しっかりと自分で決めた道。

 ただ流されてなるだけじゃない、私が自分で選んだことだ。

 だから、日本にいた時と違って、しっかりと相手を見て答えた。

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