表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます  作者: 謙虚なサークル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/232

人質に取られました

「神父様……? それにシルファさんたちまで……一体何が……?」


 突然の事態に固まるイーシャ。

 それは俺たちもだ。空白の一瞬、その隙を突いたのは神父に取り憑いた神父レイスだった。

 神父の身体が跳躍し、イーシャを羽交い絞めにする。


「くはははははっ! 形勢逆転だな人間ども! 俺の正体を見破り、しかも闇の外套まで打ち破るとは驚いたがそれもここまでだ! 俺に近づくなよ!? この女がどうなっても構わないというなら話は別だがなっ!」

「し、神父様っ!? 一体何をなさるのですっ!?」

「うるさい! 貴様も静かにしろ!」


 悶えるイーシャに神父レイスが怒鳴り声を上げる。


「イーシャ! 神父は魔物に取り憑かれてます!」

「暴れたら危ないよ! 大人しくしてて!」

「ッ!?」


 ビクン、と肩を震わせるイーシャ。

 顔は青ざめ、目には涙がじわりとにじんでいる。


「ああっ! イーシャたんがあんなに涙を流して……ロイド様! 早く助けましょう! 今すぐ! さぁすぐ!」

「待て待て、いくらなんでもこの距離だと敵の方が速ぇ。攻撃の拍子にうっかり女を刺しちまうかもしれねぇからな。この状況で動くのはリスクが高いぜ」

「くっ……た、確かに……!」


 慌てるジリアンをグリモが制する。

 確かにこの状況で動くのは危険だ。

 とはいえこのまま睨み合っていても埒が明かない。

 ……だったらアレを使うか。

 俺が指先をぴくんと動かすと、神父レイスが声を荒らげる。


「おい! そこのガキ! 動くのはもちろんだが、術式の起動も許さねぇ! 妙な事をしたと感じた時点で女は殺すぞ!」

「しないよ。何もしない」


 ――だってもう、終わったからな。

 途端、地面から勢いよく石がせり上がり、二人の身体が宙に浮かせる。

 土系統魔術『震牙』。神父レイスは何をされたかもわからず、イーシャを手放した。


「な、なにぃーーーっ!?」

「きゃあああああっ!?」


 飛んできたイーシャを受け止める。

 よし、何とか助けられたな。


「大丈夫だった? イーシャ」

「は、はい……ありがとう、ございます……!」


 ギュッと俺にしがみつくイーシャ。

 流石にちょっと重い。


「なるほどな。魔術師というのは基本的に手で魔術を放つ。普通の相手はどうしてもそこに注目してしまうだろう。だから指先を動かし、注意を引いた瞬間に足のつま先から術式を起動したんだな。手元から最も離れたつま先から一瞬、しかも極小の術式展開で放たれた魔術。慌てていた奴が気づかなかったのも無理はねぇぜ」

「うおおおおお! イーシャたんがこんな近くに! 柔らかな感触とぬくもり! 生きててよかった! ハァ! ハァ!」


 グリモとジリエルがブツブツ言っている。

 それよりまた人質を取られないようにしないとな。


「お、おのれ……だがまた他の人間に乗り移れば……ぐはっ!? なんだこれは!?」

「結界だよ。逃げられたら面倒だしね」


 イーシャから離した瞬間、俺は既に結界で神父の身体を封じている。


「馬鹿な……馬鹿なぁぁぁぁっ!」


 神父レイスは結界を何度も叩くが、破壊する程の力はないようだ。

 さて、ようやく尋問の時間である。

 神聖魔術だけでなく、他の魔術の効き具合も見てみたいよな。

 結局あまり試せなかったし。


「く……」


 ふと、神父レイスが不敵な笑みを浮かべる。


「くはははははっ! 参ったよ。大した強さだ。……だがいいのか? 憑依した俺への攻撃は神父へのダメージにもなる! 俺が死ねばこいつも死ぬ。お前が殺したことになるのだ! それでも俺を攻撃出来るか!?」


 むっ、言われてみれば確かにだ。

 神聖魔術は人体には影響がないはずなのに、神父の身体からはダメージを受けた証――すなわち白い煙が立ち上っている。


「くっ、なんと卑劣な……!」

「これじゃ手が出せない……!」


 歯噛みするシルファとレンを見て、神父レイスは勝ち誇ったように高笑いをする。


「ふははははは! さぁどうするよ!? 俺を殺すかぁ!? 構わないぜ? こいつの身体がどうなってもいいなら話は別だがな! はーっはっはっは!」


 が、俺にとっては関係ない話だ。

 殺さない程度に痛めつける手段はいくらでもあるからな。

 治癒魔術もあるし、全く問題にはならない。

 俺が全く動じずに歩み寄るのを見て、神父レイスは顔色を変えた。


「お、おい近づくな。こいつがどうなってもいいのか!?」

「ふっ、神父さんの身体を傷つけず魔物を倒す方法はあるよ。それに気付くとはやるね、ロイド」


 いつの間にか俺の横にいたタオが、ぱちんとウインクをする。


「陰と陽、二つの反発し合う『気』を挟み込むようにして流せば、体内で中和され人体への影響は最小限にしつつ中の魔物を倒せる……ロイドはそれをやろうとしたあるな。アタシが陽の『気』を流すから、ロイドは反対側から陰の『気』を流すね。アタシが合わせるから、思いっきりやっていいよ」


 なるほど、そんな方法もあるのか。

 そんなつもりはなかったのだが、それはそれで面白そうだ。

 よし、やってみよう。


「お、おいやめろ馬鹿! 手を離せ!」

「観念するよ悪霊。……ロイド!」

「うん、わかったよ」


 俺とタオが神父の右手と左手をそれぞれ取り、『気』を練り込んでいく。

 下水道で一度試したしな。たぶんこんな感じだろう。


「ふっ!」


 練り込んだ陰の『気』を手のひらに集め、流し込む。

 同時にタオも陽の『気』を流し込んだ。


「っぐ!? ぎゃああああああっ!?」


 神父の口から何か、白いモヤのようなものが出てくる。

 あれがレイスの本体のようだな。

 すかさずその箇所だけ結界を展開する。


「よし、捕獲完了」


 暴れるレイスだが、無駄な足掻きだ。

 普通の魔物に破られる程、俺の結界は甘くない。


「神父さんは……ん、問題なさそうね!」


 神父の首元に手を当て、脈を確認するタオ。

 どうやら成功したようだ。見様見真似だが、とりあえず上手くいってよかったといったところか。


「ふむ、やるねロイド、以前教えた『気』の使い方、順調に覚えていってるみたいある。この成長速度、毎日功夫を積んでる証よ……ん? でも陰と陽の『気』についてはまだ教えてない気がするんだけど……まぁ教えずに出来るはずもないし、多分アタシが忘れてるだけね」


 タオがブツブツ言ってるが、それより神父は目を覚まさないのだろうか。

 魔物に憑依された感じってどんなのか聞いてみたいよな。

 俺はワクワクしながら神父に気つけを施すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 見た感じでロイドは陰の気が強かったのでしょう。うん、たぶん。 [気になる点] じっけんじっけんりかじっけん! [一言] 混乱している!から大丈夫。 人の記憶なんてあてにならないものです。
[良い点] 無双物から見ればなかなか面白くて良いと思います [気になる点] 今回コメントする本題なのですが、神父に気を流す際、タオが陽、ロイドが陰を担当しましたが、中国の陰陽思想を参考にしていると考え…
[一言] イーシャも落ちたかなとおもふ。 ロイドが相変わらずの研究者肌と周りの勘違い度合いにいつも笑いを堪えていまふ。 次回も楽しみでふ。応援してまふまふ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ