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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます  作者: 謙虚なサークル


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学園生活を満喫します

ある日の早朝、俺はまだ誰も登校していない学園へと辿り着いていた。

ノアに頼まれた仕事――朝の掃除の為である。


「ったく何が生徒会の大事な仕事だ。掃除なんてただの雑用じゃあねーか。ナメくさりやがってよぉ」

「全く以てその通りです。ロイド様を掃除小僧扱いするなど、まさに神をも恐れぬ愚行」


グリモとジリエルがやけに憤慨しているが、俺は別段嫌だとは思っていない。

むしろこれだけ広大な敷地内を掃除の名目で好き放題出来るのだ。実験のいい機会である。


「というわけで……■」


呪文束により紡ぐのは火と風の二重詠唱魔術『火炎旋風』――その術式に多少手を加えたものである。


「なるほど、そいつでゴミを吸い上げて焼却するってわけですな」

「さらに背の高くなった草も刈れると。流石はロイド様です」


指先で渦巻く炎と風を見てグリモとジリエルが言う。

ま、それだけじゃないんだけどな。それっ。

草むらに放った『火炎旋風』は、その中心辺りまですいーっと進むと、周囲に炎をまき散らす。

ごおう! と一気に燃え広がった炎はそのまま上空に巻き上げられていく。


「どああっ!? これ普通の『火炎旋風』じゃねーですかい!?」

「むしろ威力マシマシですよ!? このままでは学園が火の海にっ!」

「そんなことはないぞ二人共、よく見てみろ」


草むらを焼き尽くしながら進む炎竜巻は、編み込んだ術式の通り周りには被害を及ぼしていない。

うん、いい感じに効果は出ているな。


「むむ……こいつは結界ですかい? 炎の先端に妙な反応を感じるぜ」

「ほう……学園の建築物には傷一つ付いていませんね。もしやこれは火炎旋風の先端に結界を張っているのですか?」

「その通り」


火炎旋風の術式を操り、建築物に触れた箇所を結界でガードしているのだ。

俺が地味な学園生活を送る為に考え出した術式で、こうしておけば勢い余って物を壊すこともないのである。

やはり実際に被害が出てしまうと目立つからな。よしよし、ちゃんとゴミだけを焼き尽くしているようだ。


「自分の放った攻撃魔術と同等の結界を同時に生み出し、しかも細かい条件設定までしてやがるってのか? とんでもねぇ魔力の無駄使いだぜ……」

「総魔力量というよりも、これだけの魔術に関わらず魔力消費量が異常に少ないですね」

「うん、軍事魔術の応用だ」


以前に貰った沢山の軍事魔術の書物を読み解いたことで、術式の最適化はお手のものだ。

おかげで魔力消費の多い多重詠唱や結界の形状変化も省エネで賄えている。

……まぁ俺はもともと魔力量も多いし、その分回復量も高いから、常時大量の魔力を使うとかでもない限り枯渇することは滅多にないんだけどな。


「しかしロイド様、こいつはちと目立ちすぎてやしませんかい? 外から見たら大火事みたいですぜ」

「大丈夫さ。幻想系統の魔術で隠蔽工作もしているからな。早朝で人も少ないし……ん?」


ふと、視線を感じて振り返る。

そこにいたのはノアだ。そういえば手伝いにくるとか言ってたっけ。

何やら俺を見て驚いているようだが……


「あれはまさか『火炎旋風』? いや、ありえない。二重詠唱は私のように『口』がもう一つなければ使えないし、魔力消費も半端ではないはず。恐らくは下級魔術である『火波』の術式を弄って草焼きに使えるようにしているのでしょう。それを証拠に建物も無傷ですし。とはいえ術式をあそこまで操れるとは大したものだ。これは有望な新人が入ったかもしれませんね」


何やらブツブツ言ってるが、遠すぎて聞こえない。

ま、何も言ってこないということはさして驚くことではなかったのだろうな。うんうん。



またある日、楽しい授業を終えた放課後、俺は校舎の隙間を縫うように駆けていた。


「俺はこっちで待ち構える! お前は向こうから回り込みやがれ!」

「わかった。行くぞシロ」

「オンッ!」


ガゼルの言葉で俺は左に見える通路へと入る。

シロに乗ったまま駆けることしばし、頭上を大きな影が通り過ぎた。

見上げるとそこにいたのは巨大なニワトリ。その羽根の隙間からは鱗が敷き詰められ、尾からは蛇が生えている。

コカトリス、こいつはそう呼ばれる魔獣だ。

とある生徒が自分の従魔にしていたコカトリスを逃がし、ガゼルに泣きついたのである。


「それにしても意外ですな。ガゼルみてぇな荒くれ者が頼まれ事をしてるなんてよ」

「他の者たちも案外面倒見が良さそうでしたね。まさにお助け団と言ったところでしょうか」


そうなのだ。ガゼルらのグループはあれだけ強面を集めた割に、一般生徒たちからの評判は悪くない。

リーダーであるガゼルは面倒見が良く、下の者たちもそれを慕っているから規律正しく悪さを行うことはない。

なので他の生徒たちも彼らを怖がることなく、いつの頃からか困った生徒たちからの依頼を受けるようになったらしい。

まぁ俺としてはこんな面白い依頼が舞い込むのは願ってもないことなのだが。


「ロイド様、何ボサッとしてるんですか。早く捕らえねぇとまた逃げちまいやすぜ!」


おっとそうだった。

コカトリスはレアな魔獣、間近で触れ合える機会は滅多にないのだ。ガゼルに捕獲を任せてしまうと、折角の機会がフイになってしまう。


「確かすごい毒があるんだったな」

「そうですよ。コカトリスの毒は皮膚が強ばり血が固まる、石化と揶揄される程の猛毒! しかもレンたんの毒と同様、魔術では治癒出来ないものです。手早く結界で閉じ込めて安全に捕獲を――」


言いかけたところで、コカトリスに伸ばした俺の手に蛇ががぷっ、と噛み付いてきた。


「ロイド様ぁぁぁーーー! 何してるんですかい!?」


二人が絶叫を上げる中、コカトリスの毒により俺の腕がどんどん痺れていく。

ほう、確かにレンの毒と同じく治療魔術が効かないな。……ただし普通のは、だが。


術式変換、治癒光が鈍い色に変わると共に腕の痺れが消えていく。

よし、実験は成功だな。


「これは……何をしたんですかい?」

「以前、レンの生成した毒に治癒魔術が効果がなかった時、それをどうにか出来ないかとずっと考えていたのさ」


治癒魔術は実際にある毒にしか効果はなく、魔力で生成した毒には効果がない。

それは身体を構成する細胞が魔力を帯びておらず、魔力毒に無力だからである。

だったらその細胞に直接魔力を付与してあげればいいのでは、と考えたのだ。

流石に細胞が死ぬと効果は消えるが、それまでに十分毒は消せるようだ。


「むぅ……完全に毒が消えていますね」

「おいクソ天使、ボサッとしてねぇで手伝いやがれ! 逃げちまうだろ!」

「オンッ!」


コカトリスが俺を噛んでいるその隙に、グリモたちが飛びかかり取り押さえるのだった。


「おい」


捕獲を終え一休みしていると、ガゼルが声をかけてくる。どうやら俺たちに追いついたようだ。


「あぁガゼル、コカトリスは捕まえておいたよ」


俺の言葉に顔色一つ変えず、歩み寄ってくる。

そして俺の襟首を掴み、ぐいと持ち上げてきた。


「何勝手な行動をしてやがる。俺の方に追い込めっつったよな?」

「そうだけど……」


捕まえたんだからいいじゃないか。

それとも自分で捕まえたかったのだろうか。だとしたら悪いことをしたかもしれない。


「……チッ、無事だったからよかったものの、心配したじゃねぇかよ。ったく、あんま無茶すんじゃねぇぞ」


ガゼルは舌打ちと共に俺を下ろすと、コカトリスを入れた檻を担いで歩き出す。


「コカトリスは猛毒を以てやがるからこいつには追いかけさせるだけにしたんだが、まさか余裕で捕まえるとはな。しかも噛まれた跡があるのにピンピンしてやがる。あの危険な毒を無効化する手段まで持っているとは、想像以上に大した奴なのかもな」


何やらブツブツ言っているが……まさなコカトリスに話しかけているんじゃないだろうな。

前もシロに話しかけている風だったし、動物と話すのが好きなのだろうか。


「思ったより悪い奴じゃなさそうっすね」

「ふん、ロイド様の胸ぐらを掴むなど、万死に値する」


こんな感じで俺は、ノアとガゼル二人の仕事を手伝う日々を送るのだった。

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