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95 試験2日前


 さてさて。

 

 黄金の夜明け団員たちが様々な目的で持ち寄った物の管理をヴィル兄様に丸投げしたり、団員たちの教育統括をヴィル兄様に丸投げしたり、協力的な先輩などの人材発掘をヴィル兄様に丸投げしたりしつつ、私も試験日までの残り時間を様々な作業に当ててバリバリこなしていた。

 

 ……ヴィル兄様に丸投げしすぎというツッコミが盛大に降ってきそうだが、その、まぁしょうがないのだ。

 本人が筆頭側近として仕事を渇望しているので頼んでる部分もあるし、甘えている部分もある。

 この機に部下や知人を使うことを覚えてくれとそれとなく伝えてもいるので、そんな感じになったのだった。


 そんなこんなで、ヴィル兄様に丸投げ祭りしている私がこなしている作業が何かと言うと。

 

「“羽根、風、青き場にて。さながら鳥のごとくに天高く引きあぐべし”」

 

 呪文を唱えて指をすいと動かして空中へ餌……魔力を散らすと、伝神霊がすうっと姿を現す。

 

 ついついと魔力を吸い上げているその一対の羽のようなものに手紙を託し、飛ばし。

 あるいは手紙を運んできた伝神霊から手紙を受け取り確認したり。

 

 冬期休暇前試験に向けて通常の授業にも取り組みつつ、隙間時間にそれを頻繁に繰り返していた。

あとは訳あって放課後にとある制作作業したり、黄金の夜明け団の活動をしたり、自分用に課されたブートキャンプをしたりと言ったところか……。とにかく、もうとんでもなく忙しなく動き回っていた。

 

 そんなこんなしているうちに起こったカジカジ・ショックの次の日、すなわち試験の二日前の今日。

 

 今日という日は、私的に大変重要な日だった。

 

「それでは皆さん。安全のためのお約束を復唱して下さい!」

 

 いつも通り借りている自習室にケモっ子含む初期メンツを集めて声を発した私へ、一斉に良いお返事が帰ってくる。

 

「追いかけない・噛みつかない・しがみつかない!」

 

「うん、完璧です! では、心がけで大切なのは?」  

 

 にっこりと笑った私に安心したちびっ子達の中から、イヴァン様の側近・黒猫のユージン君と、フレッジ様の側近・金狼のヴォルヤ君が、はーい!と手を挙げた。

 

「思いやりと!」

「気遣いと!」

「「お・も・て・な・し!です!!」」

 

うむうむと頷いた私に、少々そわそわした側近モードのヴィル兄様が声をかけてくる。

 

「これだけ念入りにすれば、大丈夫だとは思いますが……。でも、本当に良いのですか? 」 

「ええ、良いのです。私は試験というものにはこれが必須だと思っていますし。何よりも……」

 

 私がそう言葉を切ったタイミングで。

 

 コニーが開けたドアから、サラリと長い、白緑の髪を揺らした人影がおずおずと入室してきた。

 

「オルリス兄様にとって、素敵な体験になること請け合いだと思ったものですから。企画せずにはいられなかったんですよ」

 

 ……少しの不安と、少しの期待を纏って恐る恐る入室してきたオルリス兄様を見守りながら、私はヴィル兄様へそう言った。

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