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67 許せない邪魔者

ガブリエラ視点です。


 

 怒りに任せて、ダムッ!と拳を壁に叩きつけた。

 

「意味わかんないっ!!」

 

 午後の授業が終わった今、自室に戻った私は側近を部屋から追い出した。

 そして、優雅に振舞って隠していた激情を吐き出している。

 

 怒りの矛先は当然、あの忌々しいお澄まし顔の女、アリスだ。

 

 入学前のお茶会で評判も落としたし、エドムンド派の取り巻き達にはアリスの悪口を散々仕込んでおいた。

 それらには、悪役令嬢になる以外のもうひとつの目論見もあったのだ。

 

 それが、蓋を開けてみれば。

 

 私が側近にしようと思っていた、攻略対象の一人。

 

 ヨハン・デュカーを側近に加えていたのだ!!

 

 お母様から聞かされる側近候補の話にまったく名前が出てこないから、おかしいとは思っていた。そして学園に入学してから、ヨハンがアリスについた事を知った。とんだ失態だった。

 

 どんな手品を使ったのかは分からない。だが、本来なら評判の落ちたオーキュラス家に仕えるのを止めて、デュカー家はヴィランデルに近づいてくるはずなのだ。五男のヨハンを使って。

 

 くそ、くそっ!

 そりゃ、私の狙いは一番かっこいい王子様。でも、堅物イケメンのヨハンだって、いかにも騎士って感じで好みだった。

 お姫様を守る騎士は絶対に欠かせないのだ、侍らしたかったのだっ!!

 

 ダンッ、ダンッと床を踏み付ける。許せない、許せない!

 

 こんなの、つまんないっ!!!!

 

 極めつけは、さっきの授業風景だ。

 

 教室の窓から見える広場でアウルムクラスの魔術授業が行われており、私はそれをニヤニヤしてしまうのを必死に我慢して見ていたのだ。

 

 これは「アリスの暴走」というイベントで、魔力を扱いきれなかったアリスのアサメイが手からすっぽ抜け、近くにいた生徒に怪我を負わせるというイベントだった。

 これにより、アリスは魔術にトラウマを持ち、更に苦手になるのだ。サブヒロインルートでは、この克服も物語のキーワードのひとつになるらしい。

 

 案の定アリスは暴走し、アサメイは危険な状態になった。そこまではイベント通りだったのだ。

 

 それなのに、あっという間に学園長が駆け寄ってきて事態を終息させてしまい、授業も普通に終わった。

 

 学園長め、余計なことを……っ。あれでは、まるで大きな魔力を持っていることだけがアピールされて終わりではないか!!

 

 この世界では高い魔力を持つ者は一目置かれる傾向にある。思わず噛んだ唇からは血が出てしまった。

 

 こうも上手くいかないのは、おかしい……。

 

 ……アリスは、まさか、私と同じ転生者なのではないか……?

 

 そんな不安が脳裏を過ぎる。

 

 しかし、この世界の正当な主人公は私。早川あいらなのだ。

 

 ヒロインに転生という、まさに神のお導きとも言うべき事態がこちらでは起こっている。

 

 本当の主役は、必ず一人だけだ。一人だけのはずなのだ。そしてそれは、「ローリエの髪飾り」イベントが発生したことで確定した。

 あれは確か、アリスルートやローリエルートでは起きないはずなのだ。

 

「……ふふふ。でも、もしアリスが転生者だとしたって、もうこの際構わないわ。だって、私に勝てっこないんだもの」

 

 私は握りしめた拳をゆっくりと解いて、乱れた髪を直す。

 

 するとタイミング良く、扉の外から側近に呼びかけられた。

 

「ガブリエラ様。……アギレスタ皇子がお呼びです」

 

 それに、機嫌よく返事をする。

 

 番狂わせ上等だ。アリスがどんな存在でも構わないと余裕を持てるのには訳がある。

 

 こちらは入学式が終わってすぐに、重要なイベントを達成したのだ。

 

「ヒロインと皇子の邂逅」だ。

 

 校舎裏でひとり、物憂げに息抜きをしている皇子と出会うイベント。ゲーム本編では過去の回想、思い出話として出てくる。

 

 だがその時、かしこい私はそれだけでは終わらせなかった。この世界がいまいちイベント通りに進んでくれないのは、もうお茶会で体感したからだ。

 

 シナリオを改変するのは怖い。でもうかうかしていたら、負ける。

 

 だから攻める。

 

 そして、その姿勢で望んだイベントは成功した。私の言った「ある言葉」に、皇子は心を激しく揺り動かされた。目論見は上手くいったのだ。

 

 これで、わかった。イベントはやはり大切だが、それだけではうまくいかない時もある。そんな時は自分の力で軌道修正すればいいのだと。

 運命を切り開く。それっていかにも主人公らしくてかっこいい。

 

 持っている知識が通用しないのならば、通用するようにしてやればいいのだ。頭を使ってシナリオをどんどん進め、望む結末に向けて進んで行けばいい。

 

 このまま順調に手懐けていけば、皇子は私に完全に依存するはず。

 その証拠に、ほら……。私は入学式から二日目にして、皇子に呼ばれている。

 

「ふふ。この世界の“王子様”はもう私のモノ。主人公が私であることはますます確定した……。このまま行けば、いずれ、あいつ位簡単にひねり潰せるようになる……!あは、あははは!」

 

 ひとしきり笑った後、暗い笑いを上品な微笑みに変えて、私は皇子とのお茶会に向かった。

 

ますますアリスを敵対視。そして相変わらず気性の激しいガブリエラ。しかし、少し変化があるのでした。

ちなみに次話でも書きますが、アリスはヨハンが攻略キャラなことは知りません。

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