表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/331

64 魔術学

「さて、諸君。集まったかの?」

 

 場所は変わって、広い芝生の広場に集められた私たち。

 

 朝礼台のような台に乗ったオルテンシア様は、なにやら不安そうな顔をしている薄桃色の髪の女性教師と並んでいる。そして小さな体に見合わない大音量で、演説を始めた。

 

「今から行うのは、この世の真理を解き明かし、世界のルールに迫る奥深い学問についての授業じゃ。教師の言うことをひとつ聞き漏らしただけで大事故になる可能性もあれば、不発に終わり何も習得できない可能性もある。心してかかるのじゃ」

 

 現在この広場にいるのはアウルムクラスの40人ほどで、皆一様に緊張した顔で学園長の話に聞き入っている。

 魔術学園の最初の魔術学の授業だ、そうもなるよね。

 

「第一学年の魔術学の授業はこちらのフェリエン先生が一人で請け負っておる。皆、先生の言うことをよく聞くように。……ちなみに今年度からは私も第二担当としてサポートすることになった!皆、よろしくの!」

 

 えっ……?と一瞬クラスの空気がざわめいたが、すぐに収まる。

 強烈すぎるキャラの学園長に直接教わることはないと思っていたので、私も驚いた。だけどまぁ、教えてくれる人が増えるのはいい事だ。

 紹介されたフェリエン先生が一歩前に進み出る。

 

「フィアナ・ローベルタ・フェリエンです。み、皆さん。今年一年、よろしくお願いしますね……?」

 

 おどおどとした下がり眉のフェリエン先生は、いかにも不安そうに、両手を胸の前でぎゅっと握ったポーズで自己紹介した。

 ……そのポーズにより、胸部装甲の大きさがよりむぎゅっと強調される。

 

 す、すごい……。あれは同じ女として憧れるサイズだ……。

 

 そんな雑念は置いておいて、フェリエン先生の言葉に耳を傾ける。

 

「皆さんが今年から勉強する魔術学は、学園長先生のおっしゃる通り、とっても危険で難しい学問です。第一学年でも怪我をする可能性はありますから、慎重に、絶対に怪我しないように慎重に学びましょうね?」

 

 そう締めくくったフェリエン先生。

 なんというか、物凄い心配性なのが伝わってきた。

 

 フェリエン先生とオルテンシア様は朝礼台から降りると、芝生を踏みながらこちらに寄ってきた。

 

「ではまず、体の中の魔力を感じるために、一番簡単な光魔法から始めましょう。皆さん、アサメイはきちんと持ってきていますか?」

 

 各々が腰に装備したアサメイを確認する。

 

 ちなみに、現在の私たちの服装は「学園の第一礼装」と言うやつである。つまりは制服だ。

 

 魔術を使う時はヒラヒラした袖など邪魔だし、戦闘訓練では足首まであるドレスのスカートやパニエなど動きにくいだけだ。

 そのため、上半身はブラウスにリボン。下半身は膝下丈の黒スカートで、黒いタイツのようなものをはき、仕上げに茶色いブーツを着用している。

 それらを覆うようにして、腰までの長さの深い臙脂色のマントを羽織る。

 

 仕上げに、チェーンや革のベルトで腰にアサメイを装備し、素材入れのポーチを括りつけたら完成だ。

 

 ……魔術師っぽすぎて、発狂するかと思ったよね。しかもかっこいい&可愛い。

 各自の家で仕立てているので細部は違うのだが、概ね同じだ。男子はこれのパンツバージョンで首元はスカーフである。

 

 シュリン、という音と共に各々がアサメイを抜き胸元に構える。その姿勢を教師二人で微調整して回りながら、フェリエン先生は説明を再開した。

 

「学術的な名前ではオリジンとアニマと言われていますが、授業ではわかりやすい通称の名前で精霊魔法と単独魔法と呼びます。今から行うのは、自分の魔力だけを使った単独魔法です」


 はい、と答える生徒達。私自身も意気込んで答えつつ、胸を躍らせる。

 ……あぁ……めっちゃ魔法の授業っぽい。「激論!!オカルト」シリーズを読んでいた時以上の興奮を感じる。

 

 スーライトお姉様の授業では、呪文の暗記や素材を組み合わせた魔術の効果の予測、後は魔術の種類や魔法陣など、座学のみを習った。決して魔力を意識するなと言われていたので、アラサーの私は良い子に言いつけを守っていた。

 

 しかし今まさに、私は魔法を使おうとしているのだ!

 

「では、アサメイに力を篭めるイメージをして下さい。しっかりと握り、離さないように!」

 

 力を篭める……体の中の力?

 

 言われて、想像してみる。ただ手のひらの力で短剣をギュッと握っても、手のひら分の魔力しか注げない気がする。

 

 アニメや漫画では、こういうのは体の中の血液とか、気の流れ……?を、魔力に照らし合わせて流して、放出してたよな。

 

 イメージしてみる。

 

 血液は、テレビで見た「知ってると超怖い!おうちの医学」という番組で見たうろ覚え知識によると、大まかに体の左から内臓を通って右側に行き、肺や心臓に戻ってくるらしい。

 

 となると、魔力の流れもそうだと想定できる。


「むむぅ……」

 

 体の中の不思議ぱわー……それを気体のようにイメージしてみる。肺に取り込んだ酸素と不思議ぱわーが心臓へ届き、体の左側から主要な臓器へ巡り、毛細血管へ巡り、右側から心臓に戻り再び……。

 

 そのイメージの一部を手のひらへ分けてみる。大部分は大河の流れのままに、一部を支流へ注ぎ込む。すると、どんどん手のひらが熱くなってきた。

 心なしか、アサメイの刀身がうっすら輝いてるような……。って、熱っ。めちゃ熱い!


びっくりしつつ、スーハー深呼吸して力を篭め続ける。

 

「体の中の力を強く意識してアサメイに集めましょう。手のひらが暖かくなってきましたか?」

 

暖かいって言うか熱いです。で、次どうするの?まじあっついんで早く!

 

「その力を、次の呪文で解放してみましょう。…………“応えよ我が声に。光よ、前に進みいでよ!”」

 

 あっ、それスーライトお姉様に教わったやつだ。発光の呪文ね。おっし!

 

 熱くてアサメイを取り落としそうになるのを我慢して、強くイメージした。


 刀身に宿る光。


力加減がわかんないから、とりあえず、一刻も早くこのアッッツイのを変換してくれ!!と念じた。


 

「“応えよ我が声に、光よ前に進みいでよ”…………っ、ふぎゃぁ?!」


 

……唱えた瞬間に、視界が白一色に染まった。 

 

やらかし第3弾は、あっつあつの光魔法です(笑)

更新遅くなってしまいすみません!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ