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58 学園長室にて

ダヴィド視点です。


「くっくっく、ふはーははは!!!!」

 

 オルテンシア様が盛大な高笑いをしている。

 

 場所は学園長室、監視水晶の前だ。

 水晶にはぼんやりと教室の風景が映し出されており、オーキュラス家の娘の発言でざわついた様子が分かった。

 

「ほれ見てみよダヴィド、ちびっこ共がやる気を出しておる。今年の新入生はやはり見込みがあるぞ!」

「そうですね、学園長。しかし、カリキュラムは急には変えられませんよ?」

 

 眉を下げながらそう言うと、学園長は分かっておる、と鼻を鳴らした。

 

「あの娘の能力が平均でないことくらい分かっておる。それに、ゴッドホルトの奴が黙っておらんじゃろ。あの周辺もうるさいしの」

「やっぱり分かっていらっしゃるじゃないですか……」

 

 眉間のシワを揉みつつ安堵する。

 

 ゴッドホルトは現在、ミスティコ・プローヴァ研究院の長をしている男だ。

 邪悪な男ではないのだが……皇帝一族を神の末裔と崇めるラーミナ教の熱心すぎる信者で、その為にいくらか問題があるのだった。

 現在のカリキュラムが決まった時にも一悶着あったので、変更には真っ先に異を唱えるだろう。

 

「じゃが、このままの学力では国力は下がる一方じゃ。どこかでテコ入れをせねばならん。まったく、私がちょっと寝てるうちにこのザマだからのぉ……」

 

 そう言ってチラッチラッとこちらを見られるので、素直に申し訳ありませんと謝った。

 オルテンシア様は再び鼻を鳴らすと、監視水晶に向き直る。

 

「それにしても、オーキュラスの娘は本当に見込みがあるの。他のちびっこ共も鍛えれば同じ水準には行くじゃろうが、ハイメ派はよっぽどこの子に入れ込んでおると見える」

「そうですね。ハイメの長男、長女は優秀とはいえ非凡ではなかったと記憶しています……しかし何故二番手の家の娘に入れ込んでいるのでしょうか?」

「まぁ、皇子と同い年というのは大きいじゃろう……この娘の性格もあるのじゃろうが。一歳違いのアテナは魔術師の素質はある娘だが、母親とは似ても似つかない弱気な娘だしのう……」

 

 オルテンシア様はため息をついた。

 

「学園長は、皇子とハイメ派の娘が結ばれれば良いとお考えですか?」

 

 なんとなく聞いてみると、そういう訳では無い、と首を振られた。

 

「我々が片寄ることは良くない事じゃ、ダヴィド。じゃが、エドムンド派は最近きな臭い……今はまだ、なにもかも様子見と言ったところかの」

「そうですか……」

 

そんなシリアスな話をしていたというのに、学園長は再び怪しい笑いを浮かべて両手をワキワキさせ始めた。

 

「くくく……カリキュラムを大きく変えられないのならば、それ以外を変えれば良いのじゃ。手段はいくらでもある。くく、ふはーはは、っはぅ!?」


 ぐきり。


 高笑いで仰け反りすぎたために、学園長の腰から嫌な音がした。

 

「学園長?!」

「くはっ、あう、だ、ダヴィドぉぉ……」

 

 涙目の学園長がぷるぷると震え、崩れ落ちる。仕方なく支えた。

 近くに待機していたメイドを呼び、寝台の準備をさせる。

 

 まったく、年甲斐もなくはしゃぐから……。

 

「楽しいのは分かりましたから、ひとまず寝台にお運びしますよ。まったく、私はもうあなたの側近ではないというのに……」

「ふぐぅぅ、痛いのじゃ、痛いのじゃダヴィドぉぉ……」

 

 全然聞いてない。

 

 やれやれと思いながらも少し笑ってしまう顔を誤魔化して、学園長を抱えあげるのだった。


高笑いしすぎてひっくり返り、部下に助けてもらうキャラ……書いてから国民的有名キャラにいることを思い出しました。

まぁ、ロリババアお約束シーンということでひとつ……(笑)

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