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56 選択授業

レイ視点です。


  

「あー、えー、コホン。ちょっとイレギュラーな事が起こりすぎて先生も戸惑ってるわ。とにかくテストは一度中断して、先に選択科目を説明するわね」

 

 俺はレイアス。通称レイ先生だ。

 訳あって女教師のフリをして生きている。

 

 今年の新入生は派閥の2番手令嬢が揃って両方入ってきたり、他にも有名どころの令息、令嬢、極めつけに王子まで入ってきたことから、ある程度の面倒は覚悟していた。

 だが、まさか初日の一限目から何かあるとは思っていなかった。立て続けのアクシデントに動揺して一瞬地声が出てしまったのは、我ながら失態だ。

 

 そもそもの発端はあのアホ学園長だが、そのアホさ加減を加速させる要因になったオーキュラス家令嬢も大概だ。

 

 最初はカンニングや不正かと思ったがどうやら違う。第一学年から第六学年までの問題がランダムに散りばめられたテストを、得意分野と不得意分野があるにしても止められるまで解き続けていたのだ。

 

 いっそ解いた分が全問正解なら良かった。だが違う。

 

 不正解が混じるというムラや、考察の痕跡がみえる惜しい回答の数々がよりリアルなのだ。丸写し、丸暗記ではない……知識がまだ若干乏しいだけで、上級生並の思考能力ということだ。空恐ろしいなんてもんじゃない。

 

 オマケに、このオーキュラス家令嬢……長いから頭の中ではアリスでいいか。

 

 アリスは、感情を悟らせない表情がデフォルトだ。

 ギリギリ無表情ではない。不機嫌に見えない程度の、上品にほんのりと口角が上がった顔をしている。

 だが、そんなものは大人がする表情だ。固定された表情からは感情が読み難い。

 友人や側近に笑顔を見せているのは遠目にちらりと見えたが、一体どちらが本性なのやら……。

 

 変わった点はそれだけではない。

 

 先程周囲が静まり返っている中、一人猛烈な勢いでテストを解きそれを俺が制止した時も、ほとんど動揺が見られなかった。普通の子供ならもっとリアクションがあるはずだが……。

 しかし、解答用紙を渡すよう指示した時にアリスの口から出たのは冷静な「どうぞ」の一言。おおよそ6歳児とは思えない冷静さだ。

 こういう天才肌で謎に冷静なところは、とある大っ嫌いな後輩にそっくりでうっかり小突きたくなった。

 

 こんな怪物の卵を作り上げて、一体オーキュラス家は。

 否、ハイメ派閥は何を企んでいるのやら。

 

 そんなことをつらつらと考えながらも、生徒達に説明をする。

 

「本来ならこのテストで成績を見て、五大教科以外の選択科目を決めるのが今日の目標だったわ。でも、学園長が何か大きな変革をたくらん…………お考えでいらっしゃるようだから、実際の振り分けは明日以降ね」

 

 おっと、また素が出る所だった。危ない危ない。

 

 ひとまず、選択授業について一つ一つ区切って説明していく。

 

・霊薬学……霊草学と薬草学が近年からひとつに纏まって出来た授業。場合によっては魔石や動物なども含めて、包括的に魔術素材について学ぶ。

 

・初級ルーン文字学……北方で使われていた古代文字の形や意味を習得し、原始的な魔術に活かす基礎教科。その初級の授業。

 

・初級古代ロアン文字学……現在使われている文字の原型となったロアン文字、ロアン文法について学ぶ初級授業。

 

・初級天文学……行使する魔術と月、星の位置の関係、影響について基礎を学ぶ。

 

・基礎魔法薬学……霊薬学にある程度親しんでいる者のみ受けられる授業。作業には危険が伴うので、ある程度条件をクリアする必要がある。

 

・剣術……令嬢で受講するものは現在一割以下。貴族の実生活におけるアサメイ使用率低下も関係あると思われる。

 

 本来はこの他にも科目はある。だが、先生が出来る者の不在や諸事情で機能していないのが実情だった。

 ちなみにどれも難しそうな説明をしているが、年齢相応の内容に抑えられている。

 

「第一学年が選べる選択授業はこの六つよ。魔術科は成績次第で好きなものを選べるわ」

 

 下位の者を従える役割にある魔術科の生徒には、防衛などの実務以外でも、権威付けも兼ねて人智を超えた力を習得することが推奨される。その為に「貴族科」や「領主科」ではなく魔術科なのだ。学べる機会は1番多い。

とは言え、大きな戦のない今は甘やかされた子供が多い。平均一教科、多くても三教科選べばいいところだろう。

 

「ここにいるのは宵闇寮……つまり魔術科の生徒だからあまり関係ないけど、他の学科のことも少し説明するわね。騎士科は剣術必修で、それと別に騎士科だけの授業もあるからあともうひとつくらい選ぶのが標準ね。教養科はこれらを選ばなくても良い代わりに、別に家庭技能などの授業があるわ」

 

 なにか質問は、と言いかけたところで、生徒のひとりがピンと手を挙げて発言の許可を求めてきた。

 

 ん?と見やると……

 

 おい。

 

 おいおいおい。なんだよ、なんだよ今度は……!!

 

「………………オーキュラス。発言を認めます。……なにかしら?」

 

 ついさっき脳内で異端児認定したアリスが、なにやら静かに発言を求めていた。

授業についての説明、そしてやらかし第2陣です。


調整が難しいですが、設定をこねこねするのは楽しいです。


最近、評価ボタンで応援してくださる方とブクマしてくださる方が増えていて、ガソリンを常に受けて爆走できてる感じです。

本当にありがとうございます!

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