45 ヴィランデル家にて
ガブリエラ視点です。
なんなのよ、なんなのよ!!
私は自室で地団駄を踏んだ。
私の名前はガブリエラ・ユーストス・ヴィランデル。
そして、早川あいら。
この「金色の薔薇~悪役令嬢は美しく咲く~」の世界のメインヒロイン。
……に、転生した日本人だ。
この世界で3歳の時に酷い風邪で寝込み、その時に前世の記憶が目覚めた。
前世の私はついてなかった。
中学校では入学早々周りに馴染めず、頑張って幼稚な周囲に合わせてやるのも馬鹿らしくなって、家に引きこもっていた。
私についてこれる友達も彼氏もいなくて、時間を持て余していた私が楽しんでいたのが、ラノベや乙女ゲーム。
いろんな乙女ゲームをやった。純愛、ヤンデレ、特殊設定……。
そんな中で、発売されたばかりのこの「金薔薇」はかなり気に入っていた。
悪役令嬢が主人公というのは、私にぴったりな気がしたのだ。
私もよくほかの奴らが言えない事実などを指摘しては、愚かな周囲から「空気読みなよ」とか「意味わかんない」と言われてハブられたりしていたから。
……あぁ、思い返しても腹が立つ。私は正しいことを言っただけなのに。
とにかくそうして始めた金薔薇は、大体大雑把に言うと『 悪役令嬢の主人公が逆境の中で頑張り、大胆な行動力、説得、ギャップ萌えでワケありな男達を惚れさせて支える』という内容だった。
イケメン王子のエンディングスチルを早く見たかった私は、攻略サイトを見て最速攻略ルートだけをさくさく進めた。そうして1番のお目当てだった王子を攻略したのだが、今となってはそれを少し後悔している。
だって、他の攻略対象たちのことはちょっとしか知らないし、2周目でしか知ることが出来ないという裏ルートの話なども全部全部知らないまま、夜食を買いにコンビニへ行く途中で車に轢かれ、事故死してしまったんだもの。
でもまぁ、こうして憧れの王子様が実在する世界の主人公として転生できたのだから、良しとする。
しかしだ。
イベントを再現するために出向いたお茶会で、予想外の展開が起こったのだ。
私のライバル役の1人にして、サブルートのヒロインとして選択できるキャラクター。
アリス・リヴェカ・オーキュラス。
そして、もう1人のライバルにしてサブルートヒロイン。
ローリエ・エインズシュット。
この2人のキャラクターが、少しゲームと違う動きをしたのだ。
……いや、私が悪役令嬢になるきっかけのイベント「ローリエの髪飾り」は、ちゃんと発生したのだ。
このイベントが起こったということは、私がこの世界の主人公であることが100%確定したも同然。私は喜びに打ち震えた。
「ローリエの髪飾り」は、根暗で自信の無いアリスが、ローリエの持っている髪飾りを奪おうとするイベントだ。
「母から譲り受けた家に代々伝わる髪飾り」というキラキラしたワードを妬み、腹いせに奪おうとするという内容だ。
いつイベントが起こるのかと目を光らせていた。
するとローリエが髪飾りを外してイベントが発生したから、すかさず成敗しに行ったというのに!
「くそっ!」
アリスは清楚ぶって罪を認めないし、なにより私に恩を感じるはずのローリエがアリスを庇った。意味がわからない。
すぐさま、ローリエがアリスに脅されているのだろうと気づいたものの……。なんだか釈然としないイベントになってしまった。
あと、アリスも根暗令嬢の割にやけにハキハキ喋っていた。そこも気にはなる。
でもまぁ、いい。ゲームと現実がちょっとイメージと違うくらいで狼狽えてはいけない。
とにかく私が主人公なのは確定したのだ。
あれでアリスの評判は落ちるだろうし、私は颯爽と悪役令嬢の第一歩を踏み出した。
順調にイベントをこなしていけば、王子様と結婚できるはずだ。
……そう。絶対にそう。
例え、お母様がなんだか怖くって冷たいとしても。それだってストーリーが進めば、きっと大丈夫。
「ガブリエラ、来なさい」
お茶会で騒ぎを起こしたことを側近に聞いたのだろうお母様が、無表情で私を呼びに来た。
でも、絶対に大丈夫。
将来王子様を落とせば、お母様だってきっと私をわかってくれる。凄いって言ってくれる。
絶対に、あいらのママみたいに、私を優しく愛してくれるはずなのだ……。




