最近の様子
リクエストでいただいた「ニコラスとアリスの甘めの話」で番外です。
※ヴィルヘルム視点
新しく入った側近のニコラスは、ここのところ絶好調だ。
念願のアリスの側近になれたという事と、本当は仲良くしたかった弟と存分にいちゃつ……じゃなかった、鍛錬を共にして仲睦まじく暮らす日々を送る訳だから、それはまぁ絶好調にもなるだろう。
聞けば、月光寮のルームメイトに頼んで部屋を移り、今ではヨハンと同室になっているらしい。……まぁそれは仲が良すぎる気もするが、自分が兄上と仲直りした時も似たようなものだったからそんなものかな。
しかし楽しそうなのと同時に、見ているだけでもニコラスの日常は忙しい。
側近としての遅れを取り戻すべく猛勉強&僕との剣術の訓練に加え、ルーン文字とアルヘオ文字の取り扱いについても学び始めている。
小研究室に入れるかどうかは一度話し合いになったが、家ぐるみでアリスに大恩があることからまず裏切りはないだろうということで、晴れて隠し部屋入りとなった。
大研究室の和やかかつ真剣な勉強風景にも驚いていたが、特に小研究室の活動にはカルチャーショックを受けていたようだ。
ガブリエラの所にいた時は最後あたり勉強どころじゃなかったこともあって、通常の五大教科すらも夜明けのメンツより遅れ始めていた。もう、弟との実力差をなくそうと必死だ。
そんな訳で、精神的には絶好調ではあるものの……やる気が勢い余った結果、最近のニコラスは若干寝不足気味なようだった。
そんな経緯があっての、目の前の光景である。
「ぐぬぬ……」
「口でぐぬぬって言う人初めて見たよ、ヨハン」
僕と並んで目の前の光景を見ているヨハンがぐぬぐぬしている。
「それを言うなら、微笑みながら唇を噛みしめてるやつも初めて見たぞ、ヴィルヘルム」
「うるさいよヨハン」
まぁ、ぐぬぐぬしているのは僕も同じな訳で。
そう、もはやお察してあるが、目の前ではニコラスがアリスの肩にもたれて眠り込んでいた。
自分の肩に頭を預けているニコラスを見るアリスの目線は、まるで母親のようだ。
時折顔にかかった髪を払ってやったり撫でたりしている様子に至っては、もはや聖母である。
アリスお気に入りの学園の屋上で、側近のみを連れてのんびりしていたわけであるが……この光景は誰も予想していなかったに違いない。
「最高ですわ、いろんな意味でおいしいですわ……!! どの組み合わせに対してもおいしい、この光景はそれぞれに様々な感情を……」
「落ち着いて、マチルダ」
近くでその様子を見守るマチルダが興奮気味になにか呟き、ユレーナに冷静にたしなめられている。
……最近元気なのはいいのだけど、僕達やアリスの関係を見てしきりにニマニマするのはやめてほしい。
「まぁ、最近は夜も遅くまで部屋で勉強していたからな。少しくらいは仕方ないか」
「そうなんですの……。でも、せっかく健康そうになってきたのにそれでは本末転倒ですわね」
ヨハンの呟きに、正気に返った様子のマチルダが眉を下げた。ユレーナも苦笑している。
ガブリエラと縁を切って移ってきた当初は、精神的にも身体的にも消耗していて具合が悪そうだった。それが今では元気一杯になったものの、今度は逆に張り切りすぎてしまっている。
アリスいわく、校外学習の時は寝不足が原因で落下事故まで起こしたそうだし……後で注意しておかなければいけないだろう。
でも……。
「これはこれで幸せそうですし、もう少しそっとしておきましょうか」
「そうですわね。本人は覚えていないのが勿体無いですけれど……ご褒美ってやつですわね」
そんな風に囁きあい、くすくす笑う僕らに見守られているとも知らないニコラスは。
幸せそうに身じろぎした様子にまた小さな笑いが起こったことも知らず、小さなくしゃみを零したのだった。
甘め……だったかな?(笑)




