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161 研究室、確保!

本日2回目の更新です。

「……昔ね、とてもお世話になった人がいたのよ。その人がよく“学べ、真実を追い求めろ”って言っていてね。私も勉強は好きだったし、そのおかげで助かったこともあったわ。だから教師になったばかりの頃は、もっと熱血だったのよ」

「ええ、先生が熱血ですか?」


 先生はいい人だし教育熱心っぽいが、どちらかというと余裕ありげで熱血って感じでは無い。あんまり想像できなくて少し笑ってしまう。

 しかし、先生はふっと笑って続けた。

 

「でも、この学園は貴族に優雅さを求めるばかりで、私の目指す教師像は完全否定されていたのよ。それで腐っていたのだけれど。そんな時に入学してきて、一騒動起こしてくれた問題児がいたわけ」

「問題児……?」


 誰だろう? と思ったのもつかの間、びしっと突っ込まれる。


「いや、どう考えても貴女でしょうが」

「えっ、私ですか!?」


 そんな心外な。私は善良な一生徒であって問題児などでは決して……と言いたいが、入学早々皇族と決闘とかしてる時点で全然問題児でしたね。スミマセン。


「まぁそれは良いとして、結果として貴女のおかげで私は教師としての本来の使命を思い出したし、やりたいことをやれてるわけ。だから、そのちょっとしたお礼も兼ねてるのよ」

「そう、だったんですね……。ええと、どういたしまして?」

「ふふ。でも、騒ぎはほどほどにするのよ」

「いや、望んで引き起こしているわけではないんですよ……!?」



そんな会話をしている内に、目的地と思われる場所に到着した。



「さて、ここが借りてる部屋よ。少し手狭だけど、ご希望に添うんじゃないかしら?」


 そんな言葉と共に開かれた扉の中は、確かに私の希望にぴったりだった。


 まず、魔術を使っても大丈夫そうな、頑丈な石造りの空間。

 次いで、給湯室のような一畳ほどの小部屋が入り口横についている。ここは水が使えるようだ。

 極めつけに、縦に長い部屋は途中で壁に大部分を区切られており、奥の小部屋になった場所は入口からほぼ死角になっていた。


「多分、元々は客室か寝室として使われていたんでしょうね。そのために部屋が途中で区切られていて、教室としては使えないの。貴女の悪巧みにはぴったりなんじゃない?」

「はい!」

「悪巧みって認めたわね」

「はい!……いや、ちが、あふん」


 盛大に墓穴を掘ってしどろもどろしている内に、後ろをついてきていた子供達が一斉に部屋になだれ込んだ。イヴァン様がたたっと駆けていってカーテンと窓を大きく開ける。


 部屋に午前の光が差し込み、石造りの壁を照らして輝かせた。


「ここが俺たちの秘密基地になるんですね! 楽しみだな、フレッジ!」

「うん、楽しみだね、イヴァン!」


 イヴァン様のきらめく笑顔に、フレッジ様もうきうきとした顔で尻尾を振って返している。無邪気な二人が可愛すぎてクラッときた。


 続いて、とりまとめ役トリオもそれを受けて三人で嬉しそうに会話している。


「秘密基地、素敵な響きですね!」

「は、はい! 研究活動も、楽しみです」

「ふふふ。あれが完成すれば、あれやこれや……」


 マリア様とアーサー様が純粋に楽しそうな横で、シン様がむふむふしている。すっかり商人モードだ。


 その他の子供達もわいわいと部屋になだれ込み、きゃっきゃとしている。


 借りていた学園図書館の自習室は一応誰でも入れる空間だったし、中庭なども公共の場なので、こういう本格的に部室っぽい半プライベートな場所が出来たのはとても嬉しい。


「部屋に誰かいるときは鍵を開けておいてね。基本的には、誰もいない時や消灯の時だけ鍵をかけて、戸締まりするように」



 そんな風に注意事項をいくつか述べてから、先生はひらりと手を振って去って行った。


「まずなにから始めましょうか、アリス様?」


 マチルダが意気揚々と言うと、ヨハンが部屋を見回した。


「思ったより広いですが、家具がほとんど無いですね」


 それを受けて、ユレーナが思案顔を浮かべる。


「確かに……大体二十人で活動するなら、もっと机や椅子、あと棚なども必要ですね」


 うーむ、確かに。使われていない部屋だったこともあり、ぱっと見ても必要数の半分ほどしかなさそうだった。


 どうしたものかと腕を組んだとき、後ろで扉がばんと大きな音を立てて開いた。


「お困りかな、アリス嬢! 早速この僕の出番とみたよ!!」

「ダヴ先輩!?」


 なんと息を切らせて登場したのは、メトロ兄弟のダヴ少年だった。


「どうしてここが?」

「いやなに、校舎の中を歩いていたら、興奮した時のアリス嬢の匂いがしたからね! これはなにか進展があったとみてぶべらっ」

「変な言い方をするなーっ!! なんだ興奮した時の匂いって、本気で変態かお前!?」


 後ろから走ってきたヴィル兄様に怒りのダイナミック跳び蹴りをかまされて、ダヴ少年が吹っ飛ぶ。


「に、匂い……? 私、なんか臭かったですか?」


 心配になってくんくんするも、イヴァン様とフレッジ様に全力で否定された。


「違います違います! 僕ら獣人は、相手の感情を匂いというか……空気で少し感じとることが出来るんです」

「そうです! それにアリス様にくっつくと、いつも石けんと甘くて良い匂いがはべしっ」

「イヴァン……? それ以上は言わせないよ……?」


 暗黒微笑を纏ったフレッジ様がイヴァン様をどついて黙らせる。

 そ、そんなに怒らなくても匂いの話題でそこまで怒ったりしないのに。


 そんなすったもんだにおろおろしていると、未だちょっとキレ気味のヴィル兄様がぷんぷんしながらやってきて、そのままぎゅっと抱きしめられた。


「まったく。突然ダヴが興奮しだしたから慌てて追いかけたらこれだよ。ごめんねアリス、あんなこと急に言われて気持ち悪かったよね……っ」

「あ、いえ……匂いと言っても、獣人独特の感覚のことらしいですし」

「いいんだよ、無理しなくて……っ! それにアリスはいつだって、いつまでも感じていたいくらいのフローラルないい匂いだからねっ」


 ほんとごめんね、嫌だったねとなされるがままに抱きしめられつつ、フォローに徹するあまりややアウトな感じになっている兄様の発言には……触れずに置いた。

 

 そしてひとまず、ここが活動拠点の一つになったと報告する。


 すると、沈没していたダヴ少年がガバッと起き上がった。


「素晴らしいっ! 早速設備を整えようじゃないか!」

「それには賛成なんだけど、さっきの語弊のある発言はブレイブさんに報告させてもらうから」

「うっ、そ、それだけは……」


 ヴィル兄様からじとっと見られ、尻尾を丸めてしゅんとしたダヴ少年。

 どうやら、ブレイブさんへの報告という形でヴィル兄様が代理で手綱を握ることにしたらしい。


ダヴを暴走させ、ヴィルにツッコミを入れさせるのが楽しい……(笑)

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