42.宝物開封
「対戦……ありがとうございました」
しばらくして、決闘フィールドによる痛みも癒え始めた頃、英が握手を求めてやってくる。
「あ、こちらこそ、ありがとうございました」
ミカゲは慌てて応じる。
「ナイスファイトだよ、ミカゲー、おめでとうー」
英について来ていたミラも祝福してくれる。
「それにしても……あれ、どうなってるんだ? 刀が視えなかった」
英がそんなことを言う。
と……
「だーめだだめ、企業秘密だ」
揺がそのように答える。
「ははは、まぁ、そうですよね……」
「まぁ、あとで映像で確認すればわかるかもな」
苦笑いする英に揺は言う。
「はい、研究させてもらいますわ」
英はニコリと言う。
と、ミカゲが言葉を発する。
「あ、英さん、一つだけ言わせて欲しいっす」
「……はい?」
「弟は……アサヒは確かに稀有の才能がある」
「……」
「だけど、あいつは何もしてないわけじゃないんです」
「……!」
「英さん程の量ではないかもしれませんが、彼なりにやることはやってる。そうでないと、貴方に勝てたりしませんよ」
「……あぁ、わかった」
英は真剣に聞き、受け入れてくれた。
「ところでよ、いつやるんだい?」
今までの少し重い空気を吹き飛ばすように英はにやりと言う。
「へ?」
「へ? じゃねえよ。お前、何のために俺と戦ってたんだよ」
「あっ!」
ミカゲは戦っていた理由を思い出す。
「さぁさぁ、勝者の権利だ。遠慮なくやれよ」
「えーと、揺さん、自分が開けていいんですかね?」
「そもそもお前がやりたくて来たんだろ? と言っても、一旦は事務所所有となるがな」
「はい……」
事務所の活動で入手したものは、一旦は事務所所有となり、その後、適性者に貸与されたり、売ったり交換したりした後、一部を貢献者に還元されたりする。
「自分、運がないかもですが、いいですか?」
「割とある方だと思いますが……刀の覚醒も三連続成功してますし……」
佐正がそんなことを言う。
(それはそうかもだけど……特性レベルという人生規模の運はいまいちだったのをお忘れではないでしょうか……)
「まぁ、それはそれとしてミカゲ……トレジャーボックスはシュレーディンガーの猫のようだと言われているのは知ってるかな?」
「え……? 知らないです」
シュレディンガーの猫とは、猫がいる箱の中に、半分の確率で毒ガスが発生するとしたら、箱を空けて観測するまで、猫が生きている状態と死んでいる状態の両方の性質をもって存在するということが起こり得るかというものである。
本来、そんな状態はないという意図のものであったが、箱を空けるまで中身がわからない的な意味で使われることがしばしばあり、ここでもそういった意図で使われている。
「宝物はな……強い願いによって中身が変わる……という風説があるんだ」
「まじですか?」
「あくまでもジンクス的なものだがな」
「なるほどです」
(……そんなことなら、地下層で刀探ししてた時、もっと真剣に願えばよかった……)
「そういう意味でも強い思いを持っているのなら、君が開けるべきだろう」
「……はい、わかりました」
……
ミカゲはトレジャーボックスの前に立つ。
トレジャーボックスの中身……
もし本当に願いで中身が変わるというのであれば……
不可視盾
ミカゲの頭の中にはその宝物名が想起する。
「では、いきます……」
ミカゲはトレジャーボックスに手を掛け、ゆっくりと開ける。
中には…………剣のようなものが入っていた。
(……まぁ、そんな都合よく出るわけないか……)
ミカゲは少し落胆しながらも、流石にそんな上手くいくわけないとも思い、中身を取り出す。
それは朱色の剣であった。
玖と刻まれている。
(おぉおお……? レベル9じゃん)
「あ、蒼谷さん……それ……」
最初に反応したのは意外にも英であった。
「へ?」
『名無し:朱色の剣……』
『名無し:炎のような模様……』
『名無し:ざわざわ……』
「束砂、鑑定してやれー」
「あ、はい……」
……
「お……これは"カグヅチ"というみたいです。宝物レベルは9だな」
「カグヅチ……要するにめっちゃ強い……炎の剣だな」
「……っっっ」
英が膝から崩れ落ちる……
「あららー、奏多が欲しがってた奴じゃーん、奏多、ある意味、ついてないねー」
ミラがけらけらと笑う。
……
「非常に惜しくはあるのだが、優先的に売ってやらんこともないぞ?」
揺が笑顔でそんなことを言う。
(……墨田ドスコイズにレベル9の剣、使える人なんていましたっけ……)
「じ、事務所と相談します……」
◇
こうして墨田ドスコイズはカグヅチを川崎シーカーズに売却し、臨時収入を得たのであった。
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