18話 控えめな妹と胸パッド
雨ばかりだった6月もいつの間にかすぎて、学生達待望の7月、夏休みがはじまる。
うだるような暑さの中、期末テストをなんとか乗り切った俺は、リビングのソファーでスライムのように溶けていた。
補習やらなんやら、期末に全部消化したのだ、せっかくの夏休みが訪れたというのに俺は1週間ちかく学校にカンヅメにされた。死ぬかと思った。学校がないのに学校に行かなければならないのってなんであんなに苦痛なの?赤点とった俺が悪いんですけどね……
ストレスマッハでハゲそうな勢いの俺は、癒しをもとめていた。ので、貯金をはたいて買ったカメラを片手に小雪の自室に向かう。
バンッ! と派手に部屋の扉をあける。
「小雪ッ!お兄ちゃんと海にいくぞ!!」
「やだ、いかない」
「なんでだ!?」
「水着着たくないもん」
小雪はベッドの上でパラパラとファッション誌をめくってお菓子をぽりぽり食べていた。だめだ、だめな気がする。堕落しすぎている。
俺だって海なんか本当は行きたくない、できれば部屋でゴロゴロしていたい。けれど小雪の水着を見たいんだ。だから、小雪の水着を画角に納めるために高いキャメラまで買ったのだ。
「小雪、なんで水着きたくないんだ?このまえお風呂は一緒に入っただろ?水着で」
「お兄ちゃん以外に見られるのやだもん」
「小雪……!!」
そうか、そんなにその控えめな胸を見られるのが嫌なんだな……かわいそうに……。
ファッション誌のバストアップエクササイズのページに丁寧に付箋をつけているのを見た時なんて、お兄ちゃん思わず涙が出そうになったよ。
「何、その生温かい目は……」
「お兄ちゃん、小雪の気持ち、痛いほどわかるよ。報われない努力ほど、辛いものはないもんな」
「……なんかすっごく馬鹿にされてる気がする」
「言葉にしなくてもわかる、兄妹だもんな」
「まだ3ヶ月しか経ってないけどね」
小雪の悩みはわかった。解決方法は至極簡単。パッドを入れた偽乳ブラを作ればいいんだ。
しかし、偽乳ブラを作るためには正確な小雪のおっぱいデータがいる。よって、小雪のおっぱいを揉む必要がある。揉みしだく必要があるのだ。
問題は、どうやって小雪のおっぱいを揉ませてもらうか……。
ええい!難しいことはわからん!男ならまっすぐ突き進むのみ!!
「小雪!おっぱいの正確なデータがほしいので!おっぱいを揉ませてくれないか!?」
「いいよ」
「いいの!?」
間髪入れずにオーケーだされてお兄ちゃん変な声でちゃったよ……。
どういうことだ?こういう時って、『はぁ!?お兄ちゃんきもい!一万回しねーっ!』って殴られるもんだと思ってた。
「聞いといてなんだけど……本当に揉んでいいの?」
「いいっていってるじゃん」
「いやだめだろ!!」
なんか……こう、もっと恥じらってくれないとこっちだって揉みがいがないだろ!
モ○ハンで、何周もクエストをまわること覚悟してたのに、逆鱗とか紅玉が最初のボックスに入ってたら嫌だろ!そんなのもとめてないんだよ!!苦労の末に、心置きなく揉みしだきたいんだ!!
「えぇ……フライングしたいんじゃないの? 義妹エンドに決めたんでしょ?」
「いやそういうわけでは」
俺は決めている。小雪と昔約束した12月24日に、最高のタイミングで、最高のプロポーズをするって。
「………」
「こ……小雪さん?」
「立って……」
「………あの……ごめんなさい」
「……」
不穏な空気を醸し出す小雪に、ドアの外まで連れて行かれる。
「この変態ド腐れラノベ主人公、二万回死ねば?」
パタン、と扉が閉じる。
どうやら小雪を怒らせてしまったらしい。思い当たる節がありすぎて逆に反省する気すら起きなかった。
けれど諦めるわけにはいかない。ひとまわり大きめのブラを持った小雪の悲しげな顔を俺はもう見たくないんだ。
草木も眠る丑三つ時、ヒタヒタとフローリングを俺は歩いていた。なるべく音をたてないよう、こっそり歩く。
小雪の部屋の前に立つと、ドアノブをゆっくり下げる。開かない。どうやら鍵をかけているみたいだ。
だが、問題ない、この家の合鍵は俺が管理している。小雪の部屋の合鍵も例外じゃない。
かちゃりと鍵をあける。その音さえも、なるべくたてないよう。慎重に鍵を抜き差しする。鍵をあけるというミッションはコンプリートした。あとは眠っている小雪の側まで行き、正確なおっぱいデータを入手するだけだ。
可愛らしい寝息を小雪はたてている。ここまできて言い訳するのもなんだけど、エロい気持ちは一切ない。これはすべて小雪のためだ。小雪の悲しみを消し去るために小雪のおっぱいを揉むのだ。ついでに罪悪感も一切ない。
抜き足差し足で、小雪の寝顔が見える位置まで移動する。
可愛らしい寝顔だ、整いすぎて怖くすらある小雪の顔も、寝ているときはあどけなさがのこる少女の顔だ。
しかし、そのあどけなさがのこる少女のおっぱいを今から俺は揉みしだこうとしているのだ。もう一度言う、エロい気持ちは一切ない。
夏場用の薄い布団を、そっとどける。妖精?……いや間違えた、パジャマをすこしはだけさせた小雪がいた。
パジャマのボタンを外したいけれど、我慢する。小雪は寝るときノーブラなのだ。パジャマを外してしまうと小雪の小雪が小雪してしまう。ついでに俺のユウもユウしてしまう。
しかしながら小雪のうすい胸を見ていると本当に悲しくなる。すこしでも厚みを増すためにクッションでもいれておこう。
「……んぅ…」
小雪がなにやらむにゃっている。大丈夫だ、小雪は寝ているときはなにされても起きない。起きるのは朝ごはんの時やご飯の匂いがしたときだけだ。
「それにしても壮観だ……もし小雪が舞子さんみたいに胸が大きくなったらこうなるのか……」
まさに無敵の超絶美少女だ。ちっぱいな小雪も良かったけれど、低身長巨乳の小雪も捨てがたい。これは画角に納めねば!
小雪の巨乳姿をスマホの無音カメラで撮ろうとした瞬間、小雪の目がうすく開く。
「……らーめん…?」
……まずい……!扉を開けっぱなしにしていた!!俺が夜食に作ったラーメンの香りで目を覚ましたんだ!なんて嗅覚してやがる!食いしん坊にもほどがあるぞ!!
俺は思わず駆け出す、寝起きの小雪ならまだ意識が混濁しているはず!まだ間に合う!あれ?夢だったのかな?で済ませる!
「……お兄ちゃんそんなところでなにしてるの?」
ダメだった。
「違うんだ小雪」
「なにが違うの?」
「いや、俺は小雪のためにだな、その……パッドを製作したくてだな……採寸を……へへっ」
パッドという単語を聞いた瞬間、小雪の顔がみるみる赤くなる。
反対に、俺の顔はみるみる青くなる。刑を執行される前の罪人のような気分だ。
小雪執行官が可愛らしい薄い唇を開く。
「そんなに……私の水着がみたいの?」
「えっ……」
「みたいの?って、言ってるの!」
「見たいです!小雪の水着が見たいです!」
「ふーん……まぁ、お兄ちゃんだけが見るぶんにはいいよ……プールとか海にはいかないからね!」
小雪執行官は寛大なるご慈悲を罪人である私めに与えてくださった。なんとありがたい、大天使コユキエルと今度から呼ぼう。コユキエル万歳!ちっぱい水着万歳!
「じゃあ明日ビニールプール用意するからな!庭につくるからな!いまからダメって言ってもダメだからな!」
「わかったって、あと、私もらーめんたべるからね。」
そう言って、小雪がベットから立ち上がる。
ぽとりと、胸からクッションが落ちる。
「………なにこのクッション」
「………」
「………お兄ちゃん」
「………あの、違うんだ。もし、小雪がおっぱい大きくなったらどんな感じかなーって、あの、見たくてですね……」
「遊んだの?」
「えっ……?」
「私の胸で、遊んだのね?」
「…………はい」
小雪に手を引かれて、部屋の外に追い出される。
「………このクズ」
パタンと、扉が閉じた。
このあと3日くらい小雪は口を聞いてくれなかった。
次は夏祭り編です!
日間ランキング1位を目標に今後は最低1日2話投稿をすることにしました!評価、感想、ブックマーク等をいただけると更新のモチベーションにつながります。できれば3話投稿したい…!
どうぞよろしくお願いします。




