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17話 お父さんにご挨拶(拳で)





 駅前からバスに乗り、リリィの自宅に戻る。買い物も済ませた。もともと家が近いのもあって、ほとんど知った道だった。


 リリィの家を見た印象は、うわー、ボロー! ボロ〜ッ! お化け屋敷みたい! といった感じだ。真っ黒な黒助がでてくるレベルである。


 「じゃあ、父さんと少し、話してくるから、アンタはここで待ってて、絶対に勝手に家に入ってきちゃダメ?わかった?」


 「はいはいわかりました」


 「はい、は一回ね」


 「は〜い」


 ママみ全開のリリィは、ガダガダと玄関を開け、中に入っていった。


 バスに乗っている道中、俺はリリィに、リリィの父親のことを聞いた。


 ろくに働きもせず、弟達の母親や、リリィの母親の家を代わる代わる寝泊まりしているらしい。リリィの母親も、弟達の母親も、俺が言うのもなんだけど、おそらくまともな親じゃない。


 お金もほとんどださず、こんな家に子供達を押し込めて、自分たちは遊び呆けているのだ。一瞬、児童相談所に連絡しかけたけれど、リリィに止められた。

 親権とかそういう関係で、児童相談所が動くと、弟達が離れ離れになってしまうらしい。



 「お兄ちゃん」


 「ひぇっ!」


 後ろから凍えるような、底冷えするような声が聞こえる。振り向きたくない、お兄ちゃん振り向きたくない!だって怖いんだもん!


 「お兄ちゃん? こっちをみて?」


 ゆっくり後ろを振り向く。小雪さんがいた。ハイライトはどうやら海外出張中のようだ。


 「こんなところで奇遇だね、なにしてるの?」


 どうやら小雪さんはまだ自分の尾行がバレてないと思っているらしい。ドヤ顔でサングラスをはずした。


 「えっ……いやー、ね? ちょっとリリィのお父さんにご挨拶というか……」


 「ご挨拶?」


 小雪が胸からスッと、赤いカードのようなものをだしかける。


 「ちょまっ!まって!落ち着いて!!」


 小雪に、リリィの家庭状況やこれまでの経緯を、かくかくしかじかと説明する。



 「なるほど、たしかに金髪は大変そうだね。だけどなんでそんなにお兄ちゃんが金髪の肩を持つの? 金髪に、まさか特別な感情でもあるの? 死ぬの?」


 「……死なないよ?お兄ちゃんまだ死にたくないよ??」


 「早く答えなさい、場合によっては、レッドカードだから。」


 「ピギィィ……」


 「今にも倒れそうなド○クエのスライムのモノマネをしてもダメなものはダメよ?可愛いけれど……」


 俺の渾身のモノマネをしても効かなかった。これはもう本心を伝えるしかない。





 「……リリィは、家族でも、付き合ってる彼女でも、特別な感情を抱いているわけでもない……」



 「……じゃあ…なんで?」


 


 「友達だからだ」


 「……」


 「こんな俺と仲良くしてくれる友達が、肩を震わせて、泣きそうになってた。心配かけまいと、俺に嘘までついた」


 「……」


 「小雪がなんと言おうと、俺は今回、引くつもりはない。リリィが笑うまで、俺は無理矢理にでもそばにいてやる」


 「……」


 「もちろん、友達としてな」


 小雪はうつむいている。そしてそのまま全力疾走でタックルしてきた。


 「げふっ!! ど……どうした、小雪? 」


 「そんな、かっこいい顔するの、ズルイ」


 「ピギィィ……」


 「誤魔化さないで」


 「ごめんなさい」


 「……まぁ、そこまで言うなら、いいけど……私も、金髪はめちゃくちゃうざいし、邪魔だし、泥棒猫だし、イライラするけど」


 小雪が顔を赤くしながら、ぽしょりと呟く。



 「………ともだち……だから…」


 「小雪……」


 小雪が俺以外に友達を作るなんて、いや友達だと認めるなんて、はじめてだ。

 リリィの公認も得たことだし、弟達にとびっきりのうまい飯作ってやるとするか! お父さんにご挨拶は飯の後だ。


 ボロっちい家の玄関がガタガタと開く、リリィが帰ってきたのかもしれない。


 「おいガキども、うちの前でなにしんてんだ?」


 「ひぃっ!」


 金髪の大男が、玄関からむくりと顔をだす。おそらく、リリィの父親だ。いや筋肉やばくね?退役軍人かなにかですか?やっぱり帰ろっかな。


 「ちょっと…!やめて父さん!!」


 その父親の腕を引っ張るリリィ。がんばって!!その筋肉怪人を俺に近づけないで!!怖いから!!めっちゃ怖いから!!


 筋肉怪人の父親の陰から、リリィの顔が一瞬見える。


 俺は頭が真っ白になった、いや、真っ赤になったの方が、正しいのかもしれない。



 リリィの顔には殴られたような跡があった。






 「おいクソ親父、てめぇリリィに何した?」



 「あぁ?このクソガキ……調子にのるなよ?」



 この筋肉ダルマがどれだけ凄もうが、怖かろうがカンケーねぇ。逃げられない理由ができた。


 「雨川逃げて!私のことはいいから!」


 リリィが泣きながら叫ぶ、それを無視して筋肉ダルマを睨みつける。


 「小雪、リリィの手当てしてやれ」


 「う……うん」


 慌てた小雪がリリィのもとに駆け寄る。リリィのすすり泣く声が聞こえる。その声を聞くたび、いまにも筋肉ダルマに殴りかかりそうになるが、耐える。

 俺は何も知らない部外者だ。だから聞く。



 「お前、リリィに手をあげたのか?」


 「何が悪い、俺の子だぞ? 俺が腹減ってるっていってんのに男連れてきやがった。一発くらい殴るのが親のしつけってもんだろ?あ?」


 筋肉ダルマはニタリと笑う。なるほど、どうやらただのゴミ人間らしい、それならやりやすい。



 「人の(モノ)に手出しやがって、ボコボコにされる覚悟はあるんだろうな……」


 ダメだ、こいつと喋りすぎるのは精神衛生上よろしくない。ぶっ殺したくなる。


 「モノ?」


 筋肉ダルマを睨みつける。母親譲りの目で、思い切り睨みつける。


 「ひッ……その目……まさか久遠さんとこの……ッ!」


 「歯ァ食いしばれ」





 左足を踏み込み、右拳を顎めがけて振り抜く。



 鈍い音があたりに響く。俺の右拳がリリィの父親の顎をとらえた音だ。


 「あがっ!!!」


 「ボディから顎にかけてガラ空きになったようだぜ…?」


 人生で一度はいってみたかったジ○ジョのセリフを吐きつつ、さらに踏み込む。


 一発じゃ足りない。小雪のファン(過激派)を屠るために開発した。必殺のレインリバーブローを肝臓に叩き込む。


 「んぐっ!!」







 酒の匂いがする。どうやら相当酔っ払っていたらしい。

 そのまま大きな音をたてて、リリィの父親は大の字にのびた。




 よし、決まった。ここでかっこいいセリフを……


 セリフを……!!




 「………いってぇ!!ちょっとまって!拳の皮めくれたんだけど!やばいって!ちょーいてぇ!!」


 小雪とリリィが驚いたような顔をしてこちらを見ている。


 「……リリィ?絆創膏くれない?」


 「……もう、カッコつけるなら最後までカッコつけなさいよね……ばか…」


 「やっぱ暴力はよくねぇな……涙拭けよリリィ、これから最高にうまい飯の時間だぜ?」


 「うん……ありがとう、雨川……」


 リリィは泣きながら、そして笑った。

 夕日に照らされた笑顔は、いままでリリィが見せた笑顔の中で一番綺麗だった。


 「いまご飯っていった?」


 小雪のよだれの音が聞こえる、俺とリリィはこらえきれず、大笑いした。





 その日の夜、リリィの弟達に俺が出せる最高の料理を振る舞った。


 何合も炊いたご飯がすぐになくなるくらい、美味しそうに食べている様を見ると、俺まで幸せな気持ちになった。


 外でのびている父親を警察に突き出すわけにもいかないので、じぃちゃんにお願いして引き取ってもらった。数ヶ月もすればまともになって顔を出すだろう。じぃちゃんのところで働いたお金は、リリィの方にも入ることになっているので、リリィの負担も少しは減るはずだ。


 一件落着とまではいかないけれど、丸くは治ったような気がする。



 「今日のデートは、まぁ30点ってとこかな」


 「赤点ギリギリじゃん」


 食器を洗いながらリリィと話す。小雪は弟達とUNOをして遊んでいる、どうやらボロボロにされているようだ。


 「女の子を泣かせたからマイナス100点」


 「それに関しては申し訳ねぇ」


 「でも……雨川、ちょっとだけかっこよかったから、その……30点あげたの……ほんのちょっとだからね!」


 「へいへい」



 たまにはデートも悪くないな。


 頬を朱く染めたリリィの笑顔を見た俺は、そう思った。





次話は夏休み編に突入です!


妹と海に行きたいお兄ちゃん、ぺたんこ胸のせいでいきたくない妹。


 お兄ちゃんは、妹の浜辺できゃっきゃうふふを拝むため胸パッドを作ることを決意する。


日間ランキング1位を目標に今後は最低1日2話投稿をすることにしました!評価、感想、ブックマーク等をいただけると更新のモチベーションにつながります。できれば3話投稿したい…!


どうぞよろしくお願いします。

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