14話 デートを賭けた中間テスト
1週間の入院生活を終え、俺は学校生活に復帰していた。もともとそんなに深い傷ではなかったので、リハビリも大したことはなかった。
春はすぎ、暖かくなってきた5月中旬。教室の窓から外を眺めながら、俺は迫り来る試練に絶望していた。
「やっべぇ……中間テストどうしよう」
そう、中間テストだ。全国の学生たちはもちろん、テストを経験した大人達だって、この言葉を聞けば嫌な気持ちになるに違いない。
元々勉強が得意ではないというのもあったけれど、1週間入院したせいで、それに拍車がかかり、高校1学期の勉強にまったくついていけてないのだ。ついでに友達も、リリィ以外できていない。
「ちくしょう……勉強したくないよぉ……」
心の底から本音が溢れる。
「アタシが教えてあげようか?」
隣からハスキーな声が聞こえてくる。席が隣のリリィだ。
「リリィ、お前そういや勉強できるのか?」
「まぁ……めちゃくちゃできるわけじゃないけど、それなりにはね。」
リリィはそういうと、先ほど帰ってきた数学の小テストを俺に見せる。点数は98点、それなりどころじゃねぇ。天才だ。
「へぇ、やるじゃん」
「雨川は何点だったの?」
「俺?俺か?俺はまぁ、ぼちぼちだな」
そういうと俺は小テストを机の中に隠そうとする、けれどリリィに取り上げられてしまった。
「12点……」
「えへへっ」
「えへへっ、じゃないよ。やばいじゃんアンタ、アホじゃん」
「アホとはなんだ!アホとは!学校ってのは人間関係を学ぶ場所であって、勉強は二の次なんだよ!友情さえあればそれでいいんだよ!!きっとそうだ!」
「アンタ友達もいないじゃん」
「えぐっ」
カエルが潰れたような声が出る。いいもん、べつにいいもん、友達いなくて勉強できなくてもいいもん。
「……そんな落ち込まないでよ、だから、その……アタシが教えてあげるって言ってるじゃん」
リリィは申し訳なさそうに、ぽつぽつと喋る。どうやらまだ俺の入院に引け目を感じているらしい。
気にしなくてもいいって言ったって、罪悪感は本人が納得いくまで心の中に残り続ける。
ならここはリリィに甘えた方がお互いの為になるのかもしれない。
「じゃあ、遠慮なく教えてもらおうかな」
「その必要はないわ」
俺の言葉を遮り、小雪が割って入る。日直の仕事はどうやら終わったみたいだ。
「なんでアンタがでしゃばってくるのよ」
「おにい……ユウには私が教えるわ、成績優秀、入試テスト学年1位のこの私がね。」
ここぞとばかりに成績優秀キャラをおしてくる小雪、そういえばそんな設定もあったな。
自分で手錠をかけておきながら、おしっこ漏らしそうになるからすっかり忘れていた。
「へぇ、アンタが1位だったんだ」
「そうよ、2位のカーベンダーさん」
「小テストは何点だったのよ」
「もちろん100点」
リリィと小雪の間でバチバチと火花が散っている。やめて!喧嘩しないで!教室のみんな怖がってるから!俺も怖がってるから!!
「じゃ…じゃあみんなで勉強会しようぜ俺の家で!」
「……アタシはべつにいいけど」
なぜか頬を赤らめるリリィ。もしかしたらコイツも友達いないから、誰かの家で勉強会なんてはじめてなのかもしれない。
俺も、毎回小雪に教えてもらっていたから、友達と勉強会ははじめてだ。少しだけ……いやかなりワクワクしている。
「ユウ」
小雪が底冷えするような声で俺の名前を呼ぶ。
「……なんでしょうか…小雪さん……?」
「イエローカード1枚ね?」
「はい……。」
イエローカード、別名、お願い券。
小雪を不安にさせるようなことをすると溜まってしまうカードだ。
『半年間も告白の返事待ちをさせるヘタレドグサレ拗らせゴミクズラノベ主人公にはそれ相応のペナルティが必要だと思うの』
と小雪が発案したルールである。もちろん俺に断る権利はない。
この前、リリィの胸をほんの少しだけ……ほんの少しだけ(小雪が言うには10分くらい)見つめていたら、発行されてしまった。
その日の夜にお願い券、もといイエローカードは使用され、小雪といっしょにお風呂に入った。水着を着てだよ?いやマジで?
「じゃあそういうことで、放課後、うちに集合で」
「りょーかい」
「……はーい」
リリィは恥ずかしそうに、小雪は不満そうに返事をする。
こうして、勉強会という名の戦争がはじまる。
自宅の玄関を開けて、リリィにお客様用のスリッパを出す。
自分の部屋に小雪以外の異性を入れるのははじめてだ、なんかドキドキする。
キッチンで、おかしとジュースを人数分用意する。やべー!ともだちっぽい!すげーともだちっぽいことしてる!!
俺はスキップしながら階段を登る。
自室の扉をあけると、テーブルを挟んで小雪とリリィが仁王立ちで立っていた。
「まずは現代文よ!お兄ちゃんの得意な教科を伸ばすべきだわ!」
「いいや数学だね、できない教科を補った方が効率的よ。」
「そんなのお兄ちゃんが苦しむじゃない!」
「アンタがそんな甘やかすからコイツはいつまでたってもアホなんじゃないの?」
「アホでもいいの!むしろアホでいいわ!アホの方が思い通りにあやつ……可愛いじゃない!」
あれ?俺ってイジメられてるの?めちゃくちゃアホアホ言われてるんだけど。美少女二人にこうも言われると流石の俺も傷ついてしまう。
あと小雪さん?いま操りやすいっていいかけたよね?お兄ちゃん聞こえちゃったよ?
「ふ……二人とも落ち着けって、どっちからでも変わらないだろ」
「「うっさい!!アホは黙ってて!!!」」
「かっちーん……てめぇら俺を怒らせたな?コントローラー持てや、ス○ブラでボッコボコにしてやるよ」
「「勉強しろ!!」」
「……すみません」
結局、間をとって暗記科目の世界史を勉強することになった。
「じゃあお兄ちゃん、問題です。世界三大美女といえば、クレオパトラ、楊貴妃、あと一人は?」
「えっ、クイズ形式なの?」
「正解すると、妹ポイントをあげます。100ポイントためると妹になんでも好きなことできる券をあげます」
「真面目にやりなさいよ!」
「うるさいわね金髪、なにか景品があった方がお兄ちゃんも頑張れるでしょ」
小雪の言う通り、俺はやる気に満ち満ちていた。まぁ任しとけって、世界三大美女?んなもん簡単だろ。
「答えは小雪だ!」
「不正解だけど正解!100万ポイント!」
「よっしゃあ!」
俺と小雪の頭に拳骨が落ちる。
「アンタら、真面目に勉強するっていったわよね?」
「「はい」」
リリィ先生主導で、勉強会は進んでいく、スキル【オカン属性】が発動しているのか、かなりわかりやすかった。
正直、小雪は天才タイプなので、教え方も『数学?公式を覚えて使うだけでしょ?簡単じゃない』とわけのわからないことを言うのだ。
その点、リリィは要点を抑えて、数学が苦手な俺にも、公式を覚えてどう使うのかを教えてくれるので、かなりわかりやすかった。
「アンタ、そんなに根っからのバカじゃないんだから、食わず嫌いせずにやればできるんだよ」
「ありがとう母さん!俺頑張るよ!」
「母さん言うな!」
リリィがつくってきた簡易小テストを問いた。まだ1時間程度しか勉強していないのに、壊滅的だった数学の点数は60点ほどまで回復した。
「ぐぬぬぬ!」
小雪が悔しそうに地団駄踏んでいる。こういうところはまだまだ子供っぽい。
「私の方が頭いいもん!金髪!調子にのらないで!」
「あら?教えるという点では、アタシの方が得意みたいよ?調子にのらないでほしいわね」
「は?」
「あ?」
女の子の、『は?』や『あ?』ってどうしてこうも怖いのか。たまに不思議に思うことがある。
日本人の固定観念として、女性はか弱くて、お淑やか、というイメージがある為、ギャップのせいでより怖く感じるのかもしれない。
しかしながら、俺の周りには戦闘力高めの女性しかいなかったはず、なのに怖く感じるのは、シンプルに女の子は怖いということだろう。女の子怖い。怖すぎてこころなしか文章も下手だ。いつもか。
「じゃあ、次の中間テストで決着つけようじゃないの」
「いいわよ、この前の入試だって、数点差の僅差だったのよ? 今回もそううまくいくとは思わないことね」
「私が負けるわけないわ、今回は本気で勉強するから、金髪をズタボロにするためにね」
「へー、じゃあ何か賭ける?そんなに自信あるなら問題ないでしょ?」
「いいわよ、じゃあお兄ちゃんを賭けましょう」
「へ?」
「勝った方がお兄ちゃんとデートできる権利をもらえる。それでどう?」
「……アタシは……べつにほしくない……けど……まぁ、いいわよ?別にほしくないけど……!」
「ねぇ?俺の同意をまだ得てないよ?」
「お兄ちゃんうっさい、私自分の部屋で勉強するから邪魔しないでね」
「私も、そろそろ弟達のご飯つくらなきゃだし、帰るね、じゃあまた明日」
「えっ…? 俺の勉強は?ねぇ!俺の勉強は!?!?」
二人が部屋からいなくなる。
おかしいなぁ、俺の勉強会だったはずなのに、1時間で終わったぞ?
「まぁいっか」
俺はそっと、任○堂sw○tchの電源をオンにする
そして、激動の中間テストがはじまる。
次話は激動の中間テスト編です。
小雪とリリィ、デートの権利を勝ち取るのはどちらだ!ユウは赤点を回避することができるのか…!
次回!12年間片想いだった幼馴染が昨日、妹になりました。
避けられない赤点
デュエルスタンバイ!
日間ランキング1位を目標に今後は最低1日2話投稿をすることにしました!評価、感想、ブックマーク等をいただけると更新のモチベーションにつながります。できれば3話投稿したい…!
どうぞよろしくお願いします。




