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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第一章:角の生えたお姫さま

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第23話:ウニーちゃんにゴラピーをじまんします!

「ピキ〜!?」

「ピ〜!?」


 ゴラピーたちは卓の端っこに立ち、だいじょうぶー? とでも言いたげに倒れたウニーを覗き込んだ。

 椅子は派手に倒れたが、ブリギットが咄嗟に〈空気の壁〉の呪文を唱えていたためにウニーは床に頭を打つことはなかった。

 ぼふっと空気の布団に飛び込んだようなものだ。


「もう、落ち着かない子ねぇ」

「……うう、ありがとうございます、師匠」


 ウニーはよろよろと立ち上がり、椅子を元に戻した。


「ピキ〜」

「ピ〜」


 二匹はよかったー、と机の上でぶんぶんと両手を振り、それを見てウニーの肩がびくっと震える。


「えっと、マメーちゃん、これは……?」

「ゴラピー!」


 ウニーは自分の師匠を振り返る。ブリギットは肩を竦めた。

 当然こんな生き物は彼女も初めて見るのである。


「まあ、さっきから何かマメーちゃんの背中にいるなとは思っていたけど、ずいぶん面白いの飼ってるのねぇ」

「気づいてたんですか? でも教えてくれないんですね! そういう人だと知ってました!」


 ブリギットはぷんすこするウニーには特に反応を示さずに、卓に顔を近づけてゴラピーたちを観察するように覗き込んだ。


「ふぅん?」

「ピキー?」

「ピー?」


 ゴラピーたちはブリギットを見上げ、ゆるりと首を傾げた。

 先ほど彼女たちがやってきたときは警戒して隠れようとしたゴラピーたちであるが今はその様子はない。

 マメーに贈り物をしてくれた存在だからだ。ブリギットもウニーも仲間と判断しているのである。


「これがゴラピー?」

「ピキ」

「ピ」


 ゴラピーたちはうんうんと頷く。頭上の青い花が縦に揺れる。


「何言ってるんだか分からないけど、こちらの言葉は分かっているのね。凄いわぁ」

「むふー」


 ゴラピーが褒められてマメーはふんすと胸を張った。

 ウニーは困惑し、眉を寄せて尋ねた。


「えっと、その……凄いんだけど、凄いんだけどー……ゴラピーってなに?」


 昨日、師匠が魔女協会に送った手紙には新種のマンドラゴラとしてゴラピーのことも記されていたが、もちろんその情報はまだ他の魔女たちに共有されていないのである。


「ゴラピーはねー、ピーってなくマンドラゴラだからゴラピー!」

「そっかぁ……ウニーにはちょーっとマンドラゴラには見えないかなぁ」


 というか、全くマンドラゴラには見えなかった。

 ゴラピーたちはぴょんぴょん飛び跳ねて鳴く。


「ピキー!」

「ピー!」

「ほら、マンドラゴラだっていってるよ」


 ブリギットは声をあげて笑い、ウニーはさらに困惑した。


「私、ゴラピー語は分からないんだけど……」


 ブリギットが問う。


「マメーちゃん、ゴラピーは普通のマンドラゴラじゃないでしょう。どうやって生まれたのかしら?」

「えっとねー……」


 マメーは昨日のことを二人に説明した。

 なるほど、マメーがマンドラゴラに魔力を通したらゴラピーが生まれたというなら、確かにこれはマメーの魔法と言って良いのだろうとウニーは思った。

 なんでそうなるのかはさっぱり分からないが。

 マメーの琥珀色の瞳がきらきらと期待するように輝いている。ゴラピーたちもウニーをじっと見上げていた。


「……えっと、マメーちゃん凄い魔法だね!」

「むふー」

「ピキ〜」

「ピ〜」


 マメーと卓上のゴラピーたちは揃って胸を張った。ブリギットは尋ねる。


「マメーちゃん、じゃあマンドラゴラの苗があったら、またゴラピーをつくることができるのかしら?」


 ゴラピーたちは両手をばんざいするようにぴょんとあげた。


「んっとねー、ししょーが見てないとダメ?」


 ゴラピーたちはがくりと肩を落とした。

 マメーは魔力を扱い始めたばかりである。師匠の前でしか魔術を使ってはいけないのは当然だった。


「じゃあグラニッピナおばあちゃん起きてきたら、お願いしてみるわね」

「わかった!」


 マメーが頷いたそのとき、ばん、と小屋の奥に繋がる扉が開かれた。そして老婆が部屋に入りながら叫んだ。


「誰がおばあちゃんだい!」

「あ、ししょーおはよー」

「お、お邪魔してます!」

「あら、おねむの師匠が起きてきたわね」


 師匠はふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「まったく、誰のせいだと思ってるんだい。それだってのにやかましいねぇ」


 そもそも、徹夜していたのはブリギットの薬を作るためである。まあ、それがなくとも真っ当な魔女なら満月の夜は起きているものであるが。


「あ、ああ。すいませんグラニッピナ師!」


 ウニーはあたふたと謝罪した。椅子を倒したりうるさかったのは自分であると思ったからだ。


「やかましいのはあんたじゃなくてあんたの師匠の魔力さね。こっちに飛んできながら、ばしばしとうるさいのさ」

「は、はぁ」


 魔力がうるさいなどということはもちろんない。ただ、師匠はこの森に〈結界〉を張っているのである。強い魔力を放つものがそれに触れれば、感知できるようにしているのだ。

 

「いい、ウニー。〈魔力感知〉は呼吸するようにできなきゃダメ。その精度が魔女としての力なのよ」


 ブリギットはウニーにそう指導した。

 師匠はマメーの隣の席に着く。


「ピキー」

「ピー」


 ぴょんぴょんぴょんぴょん。

 ゴラピーたちは師匠に訴えかけるように鳴き声をあげた。


「……こいつらはどうしたんだい」

「んっとねー、マンドラゴラのなえがほしいって!」


 師匠は渋い顔をした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウニーは読者視点キャラとして活躍してくれそう( ˘ω˘ )
[一言] 完徹したのに起こされて気の毒なお師匠…。
[良い点] ぷんすこするウニーw しかもスルーされとるw かわよ♪
感想一覧
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