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第1話 はじまり

私は夢を見たことがない。


いや、将来の目標の夢ではなく、寝たら見るあれ。


うん。本当に。いつもこう言ったら、不思議がられるんだけど本当。


だから、もう一度言っておくね。


私、高井雛は夢を見たことがない。


「ピナ〜」


後ろから、友達に肩を押されて、思わずぴくりと動かす。


私は、ピナって呼ばれている。


「聞いて、聞いて〜昨日見た夢が―」


夢の話は残念なことに私には縁がない。いつも寝たら、気付けば朝。これをずっとこの年、高校二年生まで続けてきた。


私は適当に相槌を打つ。いつも、とりとめのないメールの相手をするように。



帰った私は、適当に携帯を触る。


……なんかないかなぁ。


ただの暇潰し。勉強する気も起きないし。


ただ、暇なんていいながら、けっこうこの四角い画面を見ていたんだと思う。いつもなら確実にスルーしている広告を見つけたんだ。


『夢に対してお悩みのあなた』


そこをじっと見つめる。別に悩んでいるわけでもないけど、ただ、夢を見たことがないのは、ちょっと寂しい気がする。


そこを押すと、黄色い画面にたどり着いた。


その下に、アドレスが貼ってあって、その上に


お悩みがあるかた、メールして下さいとあった。


どうしようか。


前、友達がワンクリック詐偽に引っ掛かって、

親に携帯没収されたんだっけ。


あー。


でも、いいや。なんかあったらメアド変更すればいいし。


住所や、電話番号聞かれたら、その時点でアド変しよう。


私はこう考えて、メールを送った。


ものの三十秒で、携帯が震えた。


はやっ!


もう返信がきたの?早すぎない?


メールなんて、どんな早い子だってもう少しかかるよ。


私は、返信内容を見る。そこには


『明日、○◯ビルの三階、ブレイン社までお越しください』とあった。


ああ、こんなに短いから、早く返信できたのか。


……


ちがう!そうじゃなくて!


私は頭をブンブンふる。


お越しください、か~。


なんか、乱暴されるのかな?いや、でも……


なんだか、少し興味が沸いていた。


よし。明日、学校帰りに行ってみるか。


私は、携帯を閉じて、ベットにダイブした。



たしかに、○○ビルはあった。


なんか、薄暗く、気味悪い。夕焼けを浴びているせいか余計にそう感じられる。


その指定された三階にはひとつのドアがあり、そこには


『ブレイン社』


っていう、紙が少し斜めで貼ってあった。しかもセロハンで。


私は、クスリと笑う。だって、ダサイくせにおもしろいもん。


「すいませーん」


そこには、穴があきまくっているソファーがひとつと、長机ひとつと、パイプ椅子ひとつがあった。


「おお。君か。夢を見たことがない女子高生というのは」


サングラスをかけていること以外、なんとも言えない、平凡な人が話しかけてきた。


「ああ、はい」


「ほらほら、起きて」


サングラスの人は、ソファーの上で寝ている人を起こす。


「ううー?」


結構離れているのに、ここまで聞こえる寝起きの声をあげる。


その人はオレンジのジャージに、 金髪。耳には

銀色のピアスが光って見えた。


「大谷サキチ。よろしく」


「ええっと、私は……」


自己紹介されたんだと理解するまで少し時間がかかった。


それに、オオタニは多分、大谷なんだろうけど、

サキチがなんだかはわからなかった。


「それに、高井さんは夢を見たことがないんだってねぇ?」


「おおっ!?マジか!?」


サングラスの人がこういうと、このサキチさんが間髪いれず反応した。


なんか、見た目は怖いけど面白そうな人だな。


ちょっと、私は安心する。


「うん。私、夢を見たことがないの」


「へえ」


ぶっきらぼうに、サキチさんは呟いた。


「おれはよぉ」


ずかりとソファに腰をおろした。


「夢しか見たことねえんだわ」


「え……?」


多分、今まで生きてきて始めて出てきた素のえ、は思ったより、響いた。


「いや、そう驚くなって。だから、おれはいつも寝たら、夢を見るんだ。昼寝でも、うたた寝でも」


「Nap!」


急に、サングラスの人がうたた寝を英語に訳した。 私も、サキチさんも思わずぎょっとする。


「おもしれえな。え?夢を見ない女子高生と

夢しか見ないチンピラ」


「だれがチンピラだ。コラ」


口を尖らせている。


「じゃあ、今からやってもらいたいことを発表するでや」


長机の上に、飛び乗っている。


「簡単に、平たく言えば、二人には夢に入ってもらうよ~」


なんだか、よくわからないけど、おもしろそう。


ちらりと横を見ると、サキチさんと目があった。

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