「顕になる本性」
「顕になる本性」
「ゼド! 先行しすぎだ!」
「大丈夫ですってロキさん!! 俺ならやれます!」
「まったく……フロウ! ゼドのサポートへ!!」
「了解!!」
ロキ、フロウ、ゼドの三人は戦場の立て直しの為に、戦地を駆け巡り、混合人獣と対峙していた。
「オラオラ! 行くぞ行くぞ!!」
ゼドがトゥランスプラントへ猛攻をかける。
「クソ!」
『 こいつらきっちり連携が取れててやりづらいぞぉ!』
トゥランスプラントは三人に苦戦していた。
「フロウさん! カバー頼む!」
「任せろ! お前の尻は私が拭いてやる!」
「フロウさん頼もしい! 今日も男前!!」
ゼドと入れ替わりでフロウが攻め、その間にゼドは詠唱を開始し、止めの準備をする。
「く!?」
『 何か始める気だなぁ?』
トゥランスプラントもフロウと攻防を繰り広げながらゼドを警戒する。
「極低温乃結晶!」
ゼドが詠唱を終え、自身の剣に氷を纏わせトゥランスプラントへ突き進む。
「フロウさん! 交代!!」
「おう! 任せたぞぉ!!」
2人が入れ替わった瞬間だった。
「変われぇ! 後ろは任せた!!」
トゥランスプラントの後方から突然に聞こえたその声は別のトゥランスプラントだった。
トゥランスプラント同士は瞬時にお互いの意図を理解し、交差する。
「なんだって!? 新手!? でも! 俺なら行ける!!」
ゼドはその予期せぬ事態にも自分なら対応できる自信があった。
「ん? あれは?」
その時、ゼドとフロウはトゥランスプラントの更に後方から走る、キリオ、ジム、アンカーの3人を見つけた。
『なるほど! これは面白くなってきたぞ!』
ゼドはキリオ達がトゥランスプラントを追い詰めここへ来たことを察する。
『なら! 6対2のこの状況はありがたい!』
そして、キリオ達もトゥランスプラントを追いかける先にゼドがいる事に気づいた。
「ジム! ゼド達がいる! 挟み込もう!」
更にジムはその先に居るフロウに気づき、不満を抱くがキリオの提案に賛成する。
「……今はその手が有効そうだね……」
そして、ジムはアンカーに振り返り言葉をかけようとする。
「アン? それでいい……よね……」
しかし、表情を伺った時、アンカーから放たれた殺気にジムは息が詰まり、恐る恐る聞く。
「ど、どしたのアン?」
そして、アンカーはゆっくり言葉を並べる。
「ジム……私……あのフロウにやられたの……」
その言葉を聞いたジムは一瞬にして、怒りが身体中を巡り煮えたぎる熱に襲われた。
「アン……もう何も言わなくていい……僕が殺す……」
それを聞いていたキリオは焦り止めに入る。
「ちょ、ちょっと待てよ! アン! それは本当なのかぁ!? 」
「間違いない……ジムの懸念していた事は本当だった……」
「だから待てって! アンを攻撃したのは魔獣だろ!? プロンさんが残留魔力でそう判断したじゃんかよ!」
「魔獣だけなら私は負けない……けど、あの日フロウが現れ魔獣を召喚し、2対1の状況に私は手も足も出なかった……」
「……それでも! 何かフロウさんにも理由があるのかもしれないじゃんかよ!!」
そのキリオの言葉にジムは明確な殺意を抱いて言う。
「もしシリスが殺されてキリオは敵に同じ言葉を吐く事ができるの?」
「それでも殺す事は無いんじゃないのか!?」
「君は明確な殺意を持ってトゥランスプラントを殺したのに? 僕には「我慢しろ」と言うの?」
「……く……」
キリオは先の感情を思い出した。
シリスが殺されたと思い込んでいた時に襲われた恨み、怒り、憎しみ。
その感情はとても抑えられるものではなかった。
ジムの感情が理解出来るからこそキリオは何も言い返せなかった。
しかし、キリオは頼み込む。
「お願いだジム……せめて事情は知りたい」
「……」
キリオは言葉を続ける。
「もしかしたらフロウさんの後ろに黒幕がいるかもしれないだろ? またアンカーがなんらかで狙われるかもしれない! それにゼドだってロキさんも! 何も知らないかもしれない!」
キリオは必死にジムを説得する。
「ジム! 頼む! せめて殺す殺さないは話をしてからにしてくれ!」
ジムは考えてから言葉を口にする。
「……約束はできない……けど努力はしてみるよ……」
「……ありがとう……」
しかし、ジムの心は不本意ではあった。
だが、それはキリオの気持ちを汲み取る努力の結果だった。
「俺が先行する! ジムとアンはサポート頼む!」
キリオは武装錬金術を使う。
「……戒級強化!!」
『 何とか俺だけでもフロウさんを止められたら……』
キリオは一気に踏み込み最速に持っていき、向かってくるゼド達が先程まで相手にしていたトゥランスプラントへ1人先行する。
ゼドはキリオ達から逃げたトゥランスプラントの突然の入れ替わりにもしっかり対応し、爪の攻撃をいなしていた。
「お前らはもう終りだよ! 諦めて降参しろ!」
ゼドは6対2になる状況から余裕を見せていた。
「くそぉがぁぁああ!!」
『 あいつを囮にこの場は逃げるしかぁ……』
トゥランスプラントは仲間を一人残し自分だけ逃げて助かる算段を始める。
しかし、その時だった。
ゼドの後方で突然鈍い音が鳴り響いたと同時に声をかけられた。
「ぜ、ゼド……に、逃げろ……」
敵味方関係なくその場にいた全員が目の前の状況に驚愕し、一瞬にして言葉を失った。
「……な、なぜだ……」
そこにはゼドを庇って胸に剣が突き刺さったロキが言葉をようやく押し出しそう言っていた。
「ロ……ロキ……さん?」
その光景はとても信じ難いものだった為にゼドは状況を理解することが出来なかった。
そして、ロキが耐えかねて膝から崩れ落ち、反射的に抱え一緒に崩れ、そして目の前に立っていたフロウを見て理解した。
「……え? フ、フロウ……さん?」
信じたくなかった。
心の中で嘘であって欲しいと願い続けた。
しかし、現実がそうさせなかった。
フロウは乱れる前髪を掻き上げながら明確な殺意を眼光に乗せて言う。
「お前を殺してからロキを殺す予定だったが……まさかロキ自身が来てくれるとはなぁ……」
「……フ、フロウさん? な、なにを……」
「……ん? あぁ! 状況が読めないって? いいんだよ! どうせ今からお前も死ぬんだから」
「……は? な、何を言って……」
「まさかあの女が呪いに打ち勝ち生きているとはな……とんだ誤算だった……いや……」
フロウは自分で言葉を並べたことで気づき、口に手を当てて更に整理する。
「まさかわざとなのか? わかってて呪いを消す約束を交わした? まぁ後であのお方に聞いてみればいい話か……」
ゼドはフロウが何を言っているのか理解出来なかった。
「とりあえず……お前ももう死ねや」
ゼドが気づいた時にはフロウは剣を振り上げ、そのどさくさに紛れてトゥランスプラントは逃げだし、ゼドはロキを抱えたまま思考が働いていなかった。
そして、フロウの剣先が振り下ろされるその瞬間だった。
「さぁせぇるかぁぁあ!!!!」
突然の激声と黒き鋏剣がフロウの剣を捉え、金属が激しく衝突し、凄まじい衝撃音が辺りを染める。
「なに!? あの距離をこの一瞬で!?」
フロウの目の前にはキリオが居た。
そして、キリオは殺意を眼光に乗せてフロウへ言う。
「てめぇ……なんでこんなことを……」
「ははぁ!! それを聞いてどうすんだよ!! お前が聞いて意味あんのかぁ!?」
「あぁそうかよ……その言葉だけでもう十分だ……」
キリオは抑えきれない怒りに力み震え、言葉を続ける。
「……今まで全部……俺は……間違ってたのか……あんたを信じて……俺はジムを傷つけて……クソ……俺は……俺を許せない……」
「ぶははぁ!! なんだ!? 俺を庇ってたのか!? お人好しにも程があるだろ!? 」
「だから! 仲間の為にも挽回すんだよぉおおお!!!」
その言葉と共に力で剣を押し返し、キリオの猛攻がはじまった。
「うらぁぁああ!!!」
キリオは全身全霊で鋏剣を振るいに振るう。
「くっ!?」
『 なんだよコイツ!? 序列10位だろぉ!? そんなもんじゃねぇぞ!? なんなんだよ!!』
フロウは驚いた。
キリオが仕掛ける速度、力、どれをとってもトーナメント10位とはとても思えないものだった。
『 くそ! ゼドが負けたのはまぐれじゃないってことか! それにこいつにはトーナメントで暴走したあの力がある……長引くと厄介だ……ゼドを諦めるしか……』
その時だった。
フロウが突然の痛みに気がついた時には左肩が抉れていた。
「は!? ぐ、ぐぁぁあああ!!」
『 い、痛てぇ!! な、何が起きた!?』
攻撃された方向を見た時、凄まじい殺気を放つジムが手を翳していた。
「クソがぁ!」
『 もう追いついて来やがったのか!? あのトゥランスプラントはいったい何してやが……』
最初にゼドが追い詰め、入れ替わったあのトゥランスプラントが粉々に粉砕された状態の死体を見つける。
『くそ! もうやられてんじゃねぇか!』
そして、フロウはその殺され方の違和感に気づく。
『おい! ちょっと待てよ!? あの超人的な力は……まさか……』
すぐに辺りを見渡し警戒する。
「あの女は何処だよ!?』
しかし、その時だった。
「よそ見している暇があるのかしら?」
声をかけられた上空を見れば、アンカーが空中で拳を力一杯に構えていた。
『ま、まずい!?』
その瞬間、アンカーが放った拳で凄まじい衝撃音と共に地面には大きなクレーターが出来上がった。
仕事が落ち着いて来たので
少しづつですが、更新していきます!




