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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「最大の安堵」

「最大の安堵」








「あ、アン……ぼ、僕達でキリオを止めるしかなさそうだ……」

『……本当に僕らだけで……あのキリオを止められるのか……』



ジムは不安を抱く。

キリオがトーナメントで暴走した時、冬のトライアングル三人でも抑え込むのに苦戦していた。

それをアンカーとジムの2人でキリオを抑えなければならない。

だが、ジムはキリオを助けたい気持ちから覚悟を決める。



「アン……無傷で捉えられるほどキリオは甘くない」


「うん……わかってる」



しかし、その時だった。



「……いったい誰が死んだって?」



突然、かけられた言葉がキリオの頭に響き、キリオは掛けられた声の方向に振り返り自分の眼を疑った。



「……え? シ……シリス?」



そこにはペテルに肩を借り、ようやく立っているシリスがいた。



「勝手に殺すんじゃねぇ! バァァカ!」


「……シ、シリス……」



キリオは余りの嬉しさに顔を歪め、涙をたくさん流し、黒かった左眼は徐々に元通りになって行く。



「まぁ……なんだ……あたしも悪かった……弟子に心配させちまった……」


「……生きてれば……それでいい……」



キリオは涙を拭い言葉を続ける。



「でも、いったいどうやって?」


「あの時、アンの攻撃と同時に空中でペテルに助けられた」



ペテルが話に割って入る。



「本当ですわ……私が居なかったらあのまま殺されていましたよ?」


「だから何回もありがとうって言ってんじゃねぇかよ! だから早く治してくれよ! なぁ! まだやらなきゃならねぇことがたくさんあんだよ!」


「ダメですわ! あなたはもうこれで退場ですの!」


「はぁ!? なんでだよ! お前の治癒能力でなんとかなるだろ!?」


「シリス! あなた骨が何本折れていると思っておりますの!? 復帰出来るレベルを超えてますの! あなたは私と戻りますわよ!!」


「ええ!? そりゃないってぇ!! 弟子が戦ってんのに師匠が休んでられねぇだろ!?」


「あなたはバカなのですの!? 私がダメって言ったらダメに決まってますの!!」



そのやり取りを見てキリオは笑って言う。



「……よ、良かった……本当に良かった……」



その時だった。

激声を上げてドラゴンを模したキメラが一匹上空から現れ、近くにいたアルデバラン兵士に向かってブレスを放ち、燃やし尽くしていた。



「キリオ!!」



キリオを呼んだのはジムだった。

そのジムの眼を見てキリオは直ぐに理解した。



「シリス……」



キリオは地面からロンズデーライトで作った黒い鋏剣を錬成し、振り返り言葉を綴る。



「……師匠を心配させないのも弟子の勤めだ!」



そう言ってキリオは全速力で走り出す。



「アン!! 行けるのか?!」



既にキリオの全速力に合わせてアンカーが並行して走っていた。



「まだ治癒師の異常な呪いは健在なの!!」


「なんだって!? 治ってねぇのかよ?!」


「わからない! でも今はまだこの力がある限りは必要!」


「間違いないな! おんぶにだっこさせていただきますか!!」



そう言ってキリオは錬金術で目の前にキメラへ続く無骨な階段を錬成する。



「俺が左!」


「私は右!」



2人は階段を駆け上りドラゴンキメラへ向かって跳び、キリオは左の羽を、アンは右の羽を根本から破壊した。



「ジム頼んだぁ!!」



キリオがそう叫んだ時、ジムはもう準備を終えていた。



「任せて!」



キメラが落下する真下に紫に輝く魔法陣が大きく展開された。

ジムはキリオに声をかけてからずっと暗聖級魔法の詠唱を唱え準備していた。



「……冥界乃監獄デスプリズン!!」



その瞬間、ドラゴンを模したキメラは魔法陣の中へ吸い込まれ消えた。



「いっちょあがり!」



3人は連携が上手くいったことを喜び、周りでは苦戦していたドラゴンキメラを意図も容易く終えた3人に賞賛の声が上がっていた。

そして、ペテルが3人を見て微笑みシリスに言う。



「私達の時代が終わりそうですわね……」


「もう世代交代の時期を感じさせられるな」


「あれだけできればもう十分でしょう」


「……寂しいけどな……でも……嬉しいよな……」


「しかし……だからこそ……」


「あぁ……ヴァルプルギスの夜を絶対に阻止しなきゃならない……この命に換えても……」


「ですわね……」


「なぁ……ペテル?」


「なんですの?」


「どうやっても復帰できない?」


「できません!」


「ですよねぇ……」



シリスは息をいっぱいに吸い、大声でキリオに呼びかける。



「キリオ!! 悪い! 後は頼んだぞぉ!! いててて……」


「馬鹿ですの!? 肋骨あばら折れてるのにそんなに声を張り上げて! そりゃ痛いに決まってますの! もう行きますわよ!」



キリオは遠くから笑顔で手を振り、シリスとペテルの背中を見送った。



「シリスさん無事で本当に良かったね」



安堵あんどから微笑むキリオにジムはそう言った。



「うん……本当に良かった」



そして、アンカーも会話に入ってくる。



「シリスさんを助けた事は私が伝えるべきだった……でも状況が今一わからなかった……本当にごめん」


「いいんだ……シリスが生きててくれればそれで……2人にはまた迷惑をかけた……俺の方こそごめん」



そして、ジムが言う。



「安心したところで僕達もやる事をやろう。まだ助けなきゃならない人達がいっぱいいる」


「そうだな……戦況を立て直さなきゃならないところは……」



その時、アンカーが声をあげる。



「ジム! あそこ!」



アンカーが指差す方向を2人は見た時、また別のトゥランスプラントが暴れ、アルデバラン兵士を薙ぎ倒していた。



「行こう! ジム! この三人なら絶対に大丈夫だ!」



キリオのその言葉にジムも頷いて言う。



「僕もそう思う! 行こう!」



三人は走り出しまた戦地へと赴いた。








ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!


ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!

それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!

今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!



是非またのお越しをお待ちしております!!

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