「無意味な力」
「無意味な力」
シリスが自由に戦えるようにキリオ、ジムは他のキメラを倒していた。
「ジム! やべぇ! 結構囲まれてきた!」
「かなりやばい状況になってるよ! もっと頑張ってよ!」
「やってるだろぉ!? お前ももっと火力だせよ!」
三人で牽制していたキメラを二人で行うのはかなり難しいことだった。
その中、トゥランスプラントとシリスはずっと凄まじい攻防を繰り広げていた。
「さっきまでの威勢はどうしたよ!?」
激戦の中でトゥランスプラントはシリスに挑発する。
「何言ってんだぁ!? ハァ……あたしはまだ濡れてもいねぇぞ!!」
「口だけは達者だな! あんま頑張りすぎて夜が使い物にならなくなるのは惜しいんだけどなぁ!?」
「あたしが手抜いてやってんのがわかんねぇのかよ!」
『くそ……このバケモンが!!』
シリスは押されていた。
トゥランスプラントの体力、攻撃力、防御力、速度、どれを取っても人間より秀でていた。
「おらぁ! どした! 隙だらけだぞ!!」
「ぐほぉ……」
疲労から垣間見えた隙をつかれ、溝内にジオウルフの脚力の蹴りを見事に受けてしまい、シリスは受け身も取れずそのまま吹き飛び転がる。
「くっ……」
『や、やべぇ……た、立てねぇ……』
「あぁ……俺好みの女だったんだがな……」
トゥランスプラントは優々とシリスへ近づく。
「シリス!? くそぉ! 邪魔だっつてんだろぉ!!」
「キリオ!! まずい! すぐに助けに行けない!」
キリオとジムはシリスの危険に気付くも、キメラに囲まれ直ぐに向かえない。
「弟子に……心配されちゃ……終わりだな……」
悶絶する痛みを堪えてシリスは立ち上がろうとする。
「お? まだ動けんのか? タフだなぁ!」
そう言ってトゥランスプラントはシリスの足を掴み持ち上げまた蹴り飛ばす。
「ぐはぁ!?」
「どうだ? ジオウルフの脚力は効くだろ!?」
「……ハハ……そんなんじゃ……あたしはまだ濡れもしねぇよ……」
「言うじゃねぇか? なら我慢比べと行こうか……なぁ!」
トゥランスプラントはシリスを地面へ何度も叩きつける。
「やめろぉぉおおお!!!」
キリオは見てられなかった。
しかし、遮るキメラで動けない。
「どけよ!! てめぇらぁ! そこを通せぇ!!」
キリオは怒り狂い、鋏剣を乱暴に振るう。
「キリオ!? 落ち着いて! そんなに暴れたらサポートしきれない!!」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろぉ!? シリスが! シリスが死んじまう!!」
「わかってる! でも冷静じゃないと対処ができない!!」
「じゃぁどおすんだよ!!」
「僕にだってわからないよ!!」
キリオは必死だった。
2人が焦る中、シリスは見るに耐えかねる程に痛めつけられていた。
「あぁあ! もう使いものにならなくなったな! こんな汚ねぇと性欲もわきやしねぇ!」
トゥランスプラントはそう言ってシリスを殴り、蹴り、地面に叩きつける。
「あ、あたしはまだ……い、逝ってねぇ……」
シリスは気力で意識を保っていた。
「まだ意識があるのか!? すげぇな!? これは本当に俺の性欲処理に使えそうなタフさだったのになぁ! だが……」
トゥランスプラントはシリスを持ち上げては舐めるように上から下まで見て言う。
「……使い古された多目的トイレみたいだな」
「おい……淫乱みてぇに言うんじゃねぇよ……まだあたしは新古品だ……」
「ぐはっはは!! 冗談のセンスは大好きだ! しかし! もうお前には興味は無くなった……」
『く……ここまでかよ……』
「……死にな……」
トゥランスプラントはシリスを空高く投げ飛ばし、喉元を赤く染める。
キリオはそれを見て一瞬で理解した。
トゥランスプラントは内臓も錬成され、ブレスを放てる事を。
「シリス!!!」
『いやだ……そんなの……いやだ!!』
キリオは絶望する。
今すぐにでも駆け寄り助けたい。
しかし、目の前のキメラが邪魔をする。
『 俺は何のために鍛えてたんだよ! 何のために俺は強くなろうとしてたんだよ! 何の為に厳しい特訓をしてたんだよ!! こんなチートな力を持ってて守れないとかありえないだろぉ!! 大切な人を守れない力なら意味ねぇんだよ!! クソ! クソ! クソ!』
「 どけよぉ!! どけっていってんだろぉぉ!!」
キリオは怒りの感情に任せて鋏剣を力一杯に振るう。
その凄まじさはキメラを一瞬にして葬り去る。
そしてその時、ジムはキリオの急激な力の上昇の違和感に気づいた。
「キ、キリオ!? め、眼が!?」
キリオの左眼が少しずつ黒く浸食され始めていた。
「キリオ! 何かおかしいって! 少し落ち着いて!」
『もしかして!? 大会の時と同じ!?』
ジムの声は届かずキリオは更に激しく、そして速度も以上なほどに徐々に上がり、青い錬成光が赤色へと変化していく。
「うぁぁああ!!」
「くっ……」
『ダメだ……キリオの速度に付いていけない……』
そして、トゥランスプラントの唸る轟音が止まり、放たれるその瞬間だった。
「……シ、シリス……?」
「……もう……間に合わない……」
2人は間に合わなかったと悟った。
キリオはその小数点の世界でシリスとの出会いから始まった沢山の思い出が鮮明に蘇る。
笑うシリス。
厳しいシリス。
真剣なシリス。
怒るシリス。
冗談を言うシリス。
お茶目なシリス。
いつも一緒に居て、当たり前の存在。
キリオの中でその思い出に突然亀裂が入り、ガラスの様に粉々に壊れていく。
崩壊と同時にキリオは恐ろしい程の虚無感に襲われ、絶望した。
その瞬間だった。
凄まじい衝撃音が鳴り響き土煙を立て、気付けば空中に投げられたシリスの姿は何処にも見当たらなかった。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
是非またのお越しをお待ちしております!!




