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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「聖騎士隊」

「聖騎士隊」





「な!? なんだよこいつら!? 人間じゃねぇかよ!?」



金の髪に真っ赤な鎧を纏ったウェンは混合人獣を見て驚く。



「ウェン! 油断するな! 魔獣の力は変わらない!」



紫の長髪と鎧のエルはウェンを心配して注意する。



「わかってるよ!」



聖騎士隊に組み込まれていたアルナ、エル、ウェンの部隊でも混合人獣に襲われていた。

精鋭隊の部下達が一撃で命を落とす状況に危機感を抱いていた。



「ウェン! ヘイトを集めてくれ!」



この場を打開する為、エルはウェンに指示を出す。



「今やろうとしてた所だよ!!」



しかしその時、一体の混合人獣がウェンの後ろでジオウルフの爪を振り上げていた。



「ウェン! 危ない!!」



エルが気付き叫ぶが、助けには間に合わない。



「やっべ!?」



ウェンは一撃を覚悟したその瞬間だった。

目にも止まらぬ速さで光が目の前を通り抜けたと同時に混合人獣が振り下ろした刃の爪は右腕ごと無くなっていた。



『こんな所業ができるのは……』



ウェンはすぐに理解し、お礼を言う。



「サンキュー! アルナ!!」



光の先には頭から全身を豪華なシルバーの鎧で装飾されたアルナが立っていた。

そして、ウェンは体勢を立て直し、右手に持つ剣でその混合人獣首を刎ねる。

そして、ウェンは詠唱を急いで唱えた。

ウェンも今までただ怠けていたわけではなかった。

キリオに負けて以来、修練に修練を重ねウェンもスキルを磨いた。



われまもる!! しゅたる根源こんげんいたりし拝頂はいちょうし!! 俺を護り! 更に!……」



ウェンもゼドが行っていた重ね掛けを習得していた。



「……我は唱える! の願い! こくの想い! 度重なる永遠の声よ! 言霊として号哭ごうこくを汲み、淘汰とうたされん仇なす者に恩恵を与えん! 主、至し天の声よ答えよ! 今ここに我! ウェンアスピディスの声を聞き届け! 戒現せよ!! 絶対領域プライベート・リジョン!!」



ウェンの周りに黄色い光が弧を描きシールドを張る。

そして、更にウェンは叫ぶ。



「……絶対乃存在感ヘイト リアクション!!」



守護士ガーディアンのスキル、絶対の存在感で混合人獣キメラ達はウェンを避ける事が出来ず意識し、ウェンに群がって行く。

それと同時にエルも剣に手をかけ、腰を極限まで落とし、詠唱を唱え終えていた。



「……風纏斬疾ウィンド キル!!」



エルは力一杯に剣を振り抜き、刀身から放たれた緑色に光る風の刃が、ウェンに群がる混合人獣を次々に真っ二つにしていく。



「アルナ! 頼む!!」



エルがそう叫ぶ前に既にアルナは動いていた。

エルの風魔法のウィンドキルでもサラマンダーの剛皮を纏う混合人獣は斬れなかった。

その斬り漏らした混合人獣をアルナは光の速さで移動し打ち倒していく。



「厄介だが、人間部分がある分、柔らかくて助かるなぁ!」



ウェンもエルが撃ち漏らした混合人獣を斬り倒しそう言った。



「あぁ……だがまだ普通の混合獣キメラもいる気をつけろよ」



エルもすぐにウェンのサポートに周りそう会話をする。



「おい! そこ! 一人で先行するな!! 必ず三人一組だ!!」



ウェンが自分の部下に目がつき、注意をしていた時だった。

ウェンとエルの後方間近で金属と金属が衝突する凄まじい音が鳴り響き二人は余りの驚きに振り向いた。



「……え? あ、アルナ?」



そこには背中を向けるアルナがいた。

しかし、様子がおかしいアルナにウェンもエルもすぐに気づき、戦闘体勢に変える。



「いやぁ……気付かれちゃいましたか……有望そうな二人をまず殺してから1番厄介そうなあなたを相手にしようと踏んでいましたが……まさかあの距離から私に気付きここまで飛んでくるとは、大したものですね」



ウェンとエルの意表を突き、殺しにかかろうとした混合人獣トゥランスプラントをアルナが抑えていた。



「コイツ!? 理性を保ってやがる!?」


「ウェン! 気をつけろ! アルナがいなければ今の一撃で俺達は死んでいたぞ!」


「わかってるよ!」



すぐにエルが動き、トゥラスプラントの横から攻撃を入れるが、すぐに避けられてしまう。

更にトゥラスプラントとの間にウェンが盾を構えて割って入る。



「なんなだよこいつはぁ!? まるで次元がちげぇじゃねえかよ!」



ウェンも動きを見ただけでトゥラスプラントの脅威をしっかり理解していた。



「俺とアルナで時間を稼ぐ! 頼むぞウェン!」


「まかせろよ!」



アルナとエルが同時に飛び出した。

その瞬間ウェンは詠唱を開始する。



「アルナ! 先行を頼む!」



エルの指示の元、アルナはトゥラスプラントに攻撃を入れる。

トゥラスプラントもエルを警戒して、アルナの剣を受け止めずに弾き飛ばしてエルに牽制の眼差しを送る。



「無駄だ! 風速印加ブースト ムーブ!!」



エルは指示を出した直ぐ後に詠唱を既に終え、風魔法であらゆる風を操作し高速でトゥラスプラントに詰め寄り、斬撃を浴びせる。



「なに!?」



エルの余りの急加速に注意を払っていてもその斬撃は止められなかった。

しかし、混合人獣にとってただの斬撃はかすり傷に過ぎず、トゥラスプラントは余裕を見せる。



「風魔法ですか……やはや、この様なスピードを出せるとは驚きですね」



続いてトゥラスプラントの後方からアルナの追い討ちが襲い掛かる。



「おっと! 私はあなたを1番警戒しているのですよ」



その時だった。



「……絶対乃存在感ヘイト リアクション!!」



ウェンが詠唱を終えて存在感を放つ。



「おっと! これはこれは……本当に目が離せられなくなりますねぇ! これはすごい! ですが、あなたを先に片付ければいいだけの話なのですよ!」



ジオウルフの脚力で出す移動速度は凄まじかった。

トゥラスプラントは一瞬で移動して見せ、攻撃を繰り出した。

ウェンも盾を全力で構え、迎え撃ち、衝撃音が辺りを染めた。



守護士ガーディアン舐めんじゃねぇぞ?」


「やはりどれも一筋縄じゃいかなさそうですね」



そして、すぐにエルとアルナの追撃が始まる。

トゥラスプラントは回避を優先し、逃げる。



「この戦い! 三人なら必ず勝てるぞ!!」



エルの算段は勝利を見ていた。

しかし、トゥラスプラントが逃げた方向には沢山の混合人獣が居た。



「ちっ! 厄介な所へと!」



その時、トゥラスプラントは近くにいた少し小柄な混合人獣キメラの頭を鷲掴み、向かってくるエルとアルナに投げつける。



「無駄だ!」



アルナもエルも簡単に避ける。

しかし、無駄だとわかっているはずのトゥラスプラントは更に数体を投げつける。

そして、その違和感にアルナが気づき後ろを振り向いた時にはウェンの周りに混合人獣が群がっていた。



「エル……」



アルナに名前を呼ばれエルは驚き、振り向いてようやく状況を理解した。



「すまない……俺とした事がアルナに喋らせてしまうなんて……アルナ頼んだぞ!!」



アルナは頷き、エルはウェンの元へと走る。

アルナが気づいたのであればアルナが向かっても良かった。

しかし、トゥラスプラントを止められるのはエルでは無理だとアルナは判断しエルをウェンの元へと向かわせた。

しかし。



「そう来ると思ってましたよ!」



気づけばアルナの目の前にトゥラスプラントがジオウルフの爪をいっぱいに伸ばし振り上げていた。

だが、アルナはそれも読みスキルを使う。

そして、トゥラスプラントが爪を振り下ろした先にアルナの姿はなかった。



「なに!?」



トゥラスプラントは直ぐにアルナが後方にいることを理解し、もう片腕で後方へ振り向き様に攻撃を放つ。



「っ!?」



しかし、トゥランスプラントの後方にもアルナの姿はなかった。



「消えた?」

『どこ行った? 詠唱をしている様子はなかった……まさか!? 無詠唱!? いや……卓越たくえつしている者なら口遊くちずさみだけでも詠唱は可能だ……ならやはりこれは魔法を使ったと言うことか!?』



トゥランスプラントは必死でアルナの気配を探る。

アルナは光魔法を使い、光の屈折を利用して自分の姿を消し、上級魔法詠唱の時間を稼いでいた。




「……」

『くそ……どこだ……どこへ行った!?』



その時だった。

トゥランスプラントの後方で光が瞬いた。



『来る!?』



トゥランスプラントがそう思った時には喉元に高温に光り輝く剣が突き刺さっていた。



「や、やられただと!? この私が!?」



トゥランスプラントは避ける自信があった。

魔獣で得た危険察知能力に信頼を置いていたからだ。

しかし、アルナの速度はそれをも凌駕し、トゥランスプラントに一撃を食らわせた。



「まだだぁ!!」



だが、トゥランスプラントの喉元に突き刺さった剣は少し右側だった為にトゥランスプラントはそのまま後方へと逃げ飛び、剣を引き抜いて致命傷を免れる。



『まだ私は今すぐには死なない……こいつから逃きればまだ勝機はある!』



その時、トゥランスプラントはアルナを見失っていた事に気づいた。



『なに!? また消えた!? クソ!! 今の今まで目の前にいたのに!! ……いや? 目の前にいた? もしや!!』



トゥランスプラントは今の今までいたアルナの場所に向け爪を立てて突撃する。

その瞬間、金属と金属が衝突する甲高い音が鳴り響いた。

そこには爪を剣で抑えるアルナが現れた。



「やはりそうか! 視覚を操作するなんらかの魔法だったのか! もう逃さない! もう逃さないぞぉ!!!」



アルナは声には出さないが見破られた事に驚き焦る。

トゥランスプラントはアルナを逃さない為に連撃を幾度となく叩き込む。



『もう逃すな! 絶対に見失わせない! その隙ももう与えない!!』



度重なるトゥランスプラントの攻撃。

そして、長く続いたその攻防はトゥランスプラントがアルナの剣を吹き飛ばしたことで終わりを迎える。



「勝ったぁ! 勝ったぞぉ!!」



アルナの喉元に爪を突き立ててトゥランスプラントは勝ちを確信した。

その状況にキメラの群れを片づけ終わったウェン、エルがようやく気づいた。



「アルナ!?」


「おいおいおいまじかよ!?」



二人は急いで走り出す。

しかし、アルナまでの距離は凄まじく遠かった。


ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!


ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!

それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!

今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!



「錬金術使いの異世界美容師」を



是非またのお越しをお待ちしております!!

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