「後悔」
「後悔」
翌日
「ティア? またお使いをお願いね」
いつものように庭で遊んでいた時、いつも通りメイドのカカがティアにお使いをお願いしに来ていた。
「は、はい……」
またいつものように4人は買い物への道を辿る。
その道中で、ティアはドシーに口を開いた。
「ねぇドシー? 里親の件……断ってくれないかな?」
突然のティアの言葉に全員は驚き、サジが聞く。
「ティ、ティア!? な、何を言っているの?」
「理由は言えない……けど、ドシーの為に絶対行くのはやめた方がいいと思うの」
「ティア!? もしかして自分の里親が決まらないからってそういう事言ってるの!? そんなの良くないよ!!」
「ち、違う! 私は! ドシーを思って……」
「ドシーを思って? 私達に取って里親が見つかる方がなによりも大事なはずよ!? ドシーを思うならそんなこと言っちゃだめだよ!! どうしたのティア!? 自分の夢が叶わないからってドシーに八つ当たりしているの!?」
その2人の言い合いをドシーが止める。
「2人共やめろよ! 行くか行かないかは俺が決める! ティアもサジも少し落ち着けって!」
2人は黙り込み、居心地が悪い中お店へと到着した。
いつも通りティアだけが店主に連れられお店の奥へと入り、他の3人は外で数刻を待つ。
「あ……」
しかしその時、不安がアンカーを襲いそして気づいてしまった。
「ね、ねぇ……サジ?」
「ん? どうしたのアン?」
「私達お使いの時いつもお金ってもらってないよね?」
「確かにそうだね!」
「なんでお店の人はお金も渡してないのに食料をくれるんだろう」
アンカーは理解したくなかった。
しかし、自分で言葉を並べれば並べるほど整理され、繋がってしまう。
「孤児院から事前にお金もらってるとかじゃない? パパがお金持って来なくても大丈夫な様に契約をしてるんだよ! きっと!」
「そ、そうだよね……」
アンカーもそう信じたかった。
しかし、昨晩の出来事が頭を過ぎる。
「ごめん! お待たせ!」
その時、ティアが笑顔で食料を両手一杯に持ってきた。
「私一つ持つ!」
「ありがとうアン! でももう落とさないでね!」
「うん!」
笑顔のティアに安心し、アンカーは食料の入った袋を一つ受け取った。
しかし、その受け取った時だった。
「……あ」
アンカーは見つけてしまった。
「ん? どうしたのアン?」
「な、なんでもない!」
「そう……じゃ帰ろ!」
「う、うん……」
ティアが着る綺麗とは言えない白のワンピースの裾から伸びる白い脚、その股の隙間から太ももを白い液体が滴っていた。
アンカーには理解できないことが多かった。
ドシーの里親の件。
昨晩のボンドンとの件。
そして、店の男性。
アンカーは悩みを抱えたまま3人と共に帰路を進む。
「おお! 帰ってきたか! ドシー? 新しいお父さんゾルドバーデンさんが早めに来られてね。早速ドシーと帰りたいとおっしゃっているんだよ」
4人が孤児院に到着し、待っていたのはボンドンだった。
そして、ボンドンが手を向ける後方にはドシーと同じ金色の髪に貴族を思わせる様な綺麗な服を着たドシーの里親のゾルドバーデンの姿があった。
「は、はい……わかりました」
ドシーがそう言ったその時、ティアが無言でドシーの肩を強く掴み目で訴える。
「……。」
しかし、直ぐにその手をサジが払い除け言う。
「ティア! ドシーが決めることよ!」
その居心地の悪い状況の中ドシーは言った。
「ありがとうサジ……」
ドシーはサジにお礼を伝えてからティアに向き直る。
「ティア……俺行くよ。ティアの夢は俺にとっても夢だった。でも、もし大人になって会えたら次は夢を叶えよう」
その時、ティアは目に涙を溜めその場を走り去る。
「ティア!」
ドシーの引き止める声にも振り向かずティアは消えてしまった。
ドシーは準備が終わり、新しい里親と手を繋いで孤児院を卒業し、アンカーは掃除用具室で屈み、泣いているティアを見つけてそっと隣に座った。
その時、ティアが言葉を漏らす。
「どうして誰もわかってくれないの? 私はドシーの為に止めたのに……どうして信じてくれないの……」
「……。」
アンカーは何も言ってあげられずただ背中を摩る。
「アンは私の事を信じてくれる?」
「う、うん……ティアお姉ちゃんを……信じてる」
気づいてしまった数々の不信感がアンカーを縛り付け、嘘をついてしまった。
そして、その日の夜もアンカーはティアが気になり皆んなが寝静まった後、ボンドンの部屋を覗き込む。
そこにはティアの淫らに揺れる姿、しかしその目には涙が溜まっていた。
「サジ! おめでとう! 君の新しいパパが見つかったよ! 明日には迎えに来ると言っていた。準備をしておくようにね」
次の日、ボンドンがサジにそう告げる。
「……え?」
1番に驚いたのはティアだった。
その表情を見つけたサジはティアに言う。
「なに驚いているの? あなたより私が先に選ばれたのがそんなに悔しい? あなたより私が優秀だったって事でしょ……フンっ!!」
サジはそう言って背中を向け去って行き、ティアは顔を伏せてスカートの裾を強く震える程握り締めた。
『どうしてこうなってしまうの?』
アンカーは幼いながらに思っていた。
ドシーが居なくなり、ティアには不信感を抱き、そしてサジまでもが居なくなってしまう。
大好きだった3人に距離ができ、心も離れ、絆にも傷が付いていく。
その日も食料のお使いでティアは体を汚し笑顔で帰ってくる。
『……もう……やめて……』
その映像を只々見せられているアンカー・ベガは耐えられなくなっていた。
それでも願いとは裏腹に過去の映像は止まらない。
その日もアンカーはティアが心配になり、夜にボンドンの部屋を覗く。
しかし、今夜は違っていた。
「パパ! 約束が違う!! 私がパパと性行為を行うかわりにドシーとサジとアンは守ってくれるそう約束したはずよ!? なのにどうして!?」
「ドシーの件はもう言ったではないか。孤児院の経営がままならない、サジだってそうだ。他の子供達を守る為に仕方なかったんだ」
「それでも約束は約束でしょ!?」
「どうしたと言うんだティア……さぁおいで……今夜も私を楽しませなさい」
「……こ、来ないんです……」
「なにが?」
「……せ、生理が……」
「……そうか……なら……」
ボンドンから発せられた次の一言にティアは絶望する。
「もう……お前は用済みだ」
「……ぇ?」
「妊娠してしまったお前などもう商品にすらならない。お前にもそろそろ飽きてきた頃だ、明日からはお前に変わりアンの膣をいただくとしよう」
その言葉を聞いてたアンカーは耳を疑い驚き、ティアは大声を張り上げる。
「それは絶対にダメ! まだ妊娠したと決まったわけじゃない! ドシーも居なくなって、サジまで居なくなってしまう……更にアンにまでこんな辛い思いをさせられない!! まだ私は頑張れる! 私が頑張るからアンには絶対手を出さないで!!」
「なら……こっちへ来て咥えろ……私の為に腰を振れ……」
「約束して……」
「では誠意を見せてもらおう」
アンカーはずっとティアに守られていた事をこの時初めて理解した。
今までずっとティアだけが皆んなを守っていた。
ティアだけがこの孤児院の闇を知っていた。
ずっとティアが代わりに傷ついていた。
自分の体と心を犠牲にしてまで孤児院の子供達をずっと守っていた。
アンカーはその真実を知った事で、ティアへの不信感を向けていた事を深く後悔し、更にボンドンへの恐怖で居ても立っても居られず寝室へと戻り涙を流し震えながら眠った。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
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