「黒鏡」
「黒鏡」
キリオとジムは実験室を後にし、鏡を探しに移動する。
情報を更に得る為に色んな部屋を捜索した。
「結構探したけど……鏡の場所がわかんねぇなぁ……」
「そうだねぇ……ん?」
その時、2人は捜索していた部屋の更に隣の部屋で人の気配を感じた。
「……キリオ……荒っぽいけど聞き出そう」
「もうそれしかないか」
キリオが扉を勢い良く開ける。
「な!? なんだ!? お前たちは!?」
神官の様な気品に溢れた服を着た男2人が見覚えのない来訪者に驚き、立ち上がったその時にジムが手を翳し重力魔法を発動する。
「グラビティ!!」
ジムが確認した限り敵は2人。
テーブルを囲い休憩をしている様子の2人組をジムはグラビティで地面に押さえつける事に成功した。
その後、キリオが錬金術でロープを作り出し厳重に縛り上げ、尋問を開始する。
「素直に教えてくれれば危害は加えない……黒い鏡の場所を知らない?」
ジムの問いに敵の男は取り乱す。
「お、お前たちはいったい!? な、なんだ!? どうやってここへ入った!?」
「質問にだけ答えて……僕が優しいうちに」
ジムが向ける冷め切った瞳に男は唾を大きく飲んだ。
「わ、わかった……」
「で? 黒い鏡はどこ?」
「なに!? 黒鏡をどうするつもりだ!?」
「質問に対しての答えとは違うけど、ここにあることは間違いないわけね……で? それはどこ?」
「い!? 言えない! 言えるわけがない!!」
男の頑なさにキリオは聞く。
「どうして言えないんだ?」
「お前達は黒鏡を破壊するつもりだろぉ!? この邪教どもめぇ!!」
「邪教? ちょっと待て! 俺たちは……」
「うるさぁい!! お前達に教えることなど絶対に出来ない!!」
「教えてくれないかぁ……どうするジム?」
ジムは悩み、そしてゆっくりと言葉を口にした。
「なら殺す……」
「おい! ジム!」
「ならどうするの? お願いしてもダメなら脅し以外何かある? 悪いけど僕は本気だよ?」
その時、恐怖に耐えられなかったもう1人の男が口を開く。
「さ、最下層の祭壇に……」
「おい! 貴様!? 裏切るのかぁ!?」
「しょうがないだろ!? 俺には家族がいる!! こんな所で死にたくない!!」
ジムは言い合いをする二人の横でキリオに言う。
「キリオガムテープみたいなの作れる?」
「わかった」
キリオは教えてくれた二人にお礼を良い、口にガムテープをしてその部屋の扉を錬金術で溶接をし地下へと向かう。
「キリオ急いで……アイツらが見つかれば騒ぎになる!」
「わかってる! だから急いでんだろ!?」
二人は地下へと向かう階段を駆け降りる。
「この階段どんだけなげぇんだよ!!」
その時、周りが騒がしくなるのを感じた。
「キリオ!! バレた!! 急ぐよ!!」
「わかってる!
階段が終わり、続く通路を駆ける。
「いたぞ!! 侵入者だ!! B4の信号を出せ!!」
目の前で複数のミラク国兵士がキリオとジムを発見し攻撃態勢に移る。
「キリオ!!」
「任せろ!!」
キリオは走りながら壁に手を触れる。
その瞬間、青い電光が辺りを染め上げ、壁や地面が波の様に形を変え敵を飲み込み固まる。
キリオは直ぐに錬金術を使用して敵を無力化し先を進む。
「キリオ! このまま強行突破する!!」
「わかったよ!」
駆ける先に神殿の様な大きい扉が見えた。
「蹴りやぶる!!」
キリオは脚だけに部分武装錬金術を使い、力一杯に踏み込んだ。
「オラァア!!」
蹴り破った後にキリオは錬金術で壁を作り出し扉を埋める。
「キリオ……あれを見て」
ジムが指差す方向にはピラミッドの様な祭壇に黒い鏡が祀られ、そして、その階段にはまるで待っていたかのように黒フードを被った男が座っていた。
「君達が侵入者? 二人だけ? ここに来たってことはこの鏡が目当て? なら君達を殺せば終わりなのかな?」
そう言って男が口笛を鳴らす。
その瞬間、後ろの暗がりから猛獣の唸る声と重量が伺える足音が鳴る。
「おい……ジム……こいつ……」
「獣魔術師だね……てっことは後ろのが混合獣……」
出てきたのはミノタウロスの硬皮を纏い巨体、手足はジオウルフの脚力に首からサラマンダーの頭。
錬金術で操作されたと伺える何かの金属で出来た鋭い爪と牙。
そして、部位は違えど同じベースのキメラが唾液を垂らし4体現れた。
「まじかよ……こんなの……俺らでなんとかできんのかよ?」
「なんとかするしかない……」
「魔獣ですらシリス達でも苦戦したって言ってたよな?」
「うん……ならあの混合獣は魔獣以上に厄介なはずだよ」
キリオとジムは身構える。
「食い散らかせ」
フードの男が手をかざしたのを合図に4体のキメラは凄まじい速さで襲い掛かる。
「壁錬成!!」
そのキリオの所業に獣魔術師は呆れる。
『なに? 錬金術師だと? 錬金術師が攻め込んできた? なめられたものだな……』
しかし、キリオが張った防御壁はキメラの爪で簡単に切られてしまう。
「え!? 岩が切れるって何!? 防御出来ないいじゃん!?」
2体のキメラの追撃をキリオは交わし、ギリギリで回避する。
「キリオ!? アイアンメイデンは?!」
「そんな暇あるように見えんのかよ!?」
ジムも片手グラビティで1匹を抑えつつ、もう片方の手で炎魔法を放つがグラビティはずっとは耐えきれず、炎魔法も効いている様子はない。
二人はそれぞれ2体のキメラを回避するので精一杯だった。
その時、獣魔術師はジムの魔法に驚いていた。
『無詠唱の魔法師!? しかも両手で種類を使い分けるだと!? そんな魔法師この世の中に存在するのか!? いや……そんな話をどこかで……しかし……まずは魔法師は危険すぎる……最終手段が必要そうか……』
そして、キリオは鋏剣を錬成し、キメラの爪での攻撃を受け止めようとした。
『待てよ? 岩も斬れる爪って事はこの鋏剣も!?』
キリオは寸前の所でそう思い、即座に回避する。
「……う……まじかよ?」
気づいた時には鋏剣の刀身が無くなっていた事にキリオは冷や汗を垂らした。
ジムも引き続き回避しながらグラビティで押さえつけ、炎系魔法を使って攻撃を繰り返す。
「く……」
しかし、まるでダメージを受けていないキメラにジムも苦戦していた。
『ちょっとでいい……隙があれば……』
『少しだけ……時間をもらえれば……』
各自1対2での状況で2人ともそんな暇は存在しなかった。
「キリオ!!」
「俺もそれしかないと思ってたよ!!」
ジムの呼びかけにその意図を理解したキリオはそう答えた。
ジムもキリオも各自が一瞬の隙を作り、後方へと距離を取る為に飛び、2人は並ぶ。
「絶対重力!!」
今まで片手でグラビティを使い、もう片方の手で攻撃を繰り出していたジムだったが、今度は両手を前に翳し、4対同時にグラビティを放つ。
4体のキメラの足元に紫の魔法陣が広がり、地面へと屁張り付かせる。
「く!?」
しかし、ジムも流石に4対同時とキメラのあまりのパワーに負けそうになる。
「キリオ!! 早く!」
「わかってる!!」
続けてキリオが地面に右手を力一杯に叩きつけ、錬金術を使用する。
青い雷光が瞬いて広がり、地面からキメラの手や脚、胴体、口までをも防ぐ、頑丈な拘束具を作り出し4対同時に巻き付ける。
『混合獣らが強いのは錬金術で作られた体に刀の様な爪に牙だ……もしかしたら骨までとんでもない金属を使ってるかもしれない。しかし、それでも動けなくしちまえば使えない!!』
その光景に獣魔術師は驚いた。
『なんだよあの錬金術師!? この規模を1人でやってのけただと!? それに動きからもう普通じゃない!? 戦闘に特化した錬金術師なのか!? だがしかし……所詮はただの錬金術師……やはりあの魔法師を先に殺すしかないか……』
動けずにいるキメラにようやく安心する。
そして、ジムは階段に優々と座る獣魔術師に声をかける。
「二つ聞きたい事があります……一つは、その鏡を僕達は壊しに来ただけです。それ以外は大人しく帰るつもりです」
「もうその時点で交渉は成立しない。この鏡を守るのが僕の役目だ」
『 やはり……狙いはこの鏡の破壊か……これは壊させるわけにはいかない……災厄を壊されたら世界がどんな事になるか……考えたくもない』
そして、キリオが間に入る。
「その鏡はいったいなんなんだ?」
とんでもない質問に男は目を丸くした。
「お前……黒鏡がなんなのか知らないで破壊しにきたのか?」
「え? そうだけど?」
「なら……尚更、教える事は出来ない」
『 そんなことがあり得るのか? 黒鏡を崇拝する邪教じゃない? いや……依頼で来たって可能性なら頷ける……』
獣魔術師は言葉を続ける。
「それと……僕のナンバーズ達を甘く見ないでくれないかな?」
その言葉に2人はキメラを確認する。
キリオの作った頑丈な拘束具がキメラの力に負けはじめ、音を立てて亀裂が入る。
「まじかよ!? あんなに頑丈に作ったのに!?」
急いでジムは二つ目の質問をする。
「最後に聞きたいのですがーー」
ジムは1番聞きたかった質問を怒りを交え、凄まじい眼光を飛ばして言う。
「ーーアルデバラン国にキメラを送ったのはあなたですか?」
「アルデバラン国……だと?」
その時、獣魔術師の頭の中で戦闘に特化した錬金術師、凄腕の魔法師、さらにアルデバランのワードが急に繋がった。
「……デネブ、アルタイ、ベガ……」
その名前を口遊まれた瞬間にキリオとジムは反応してしまい、獣魔術師は反応を見逃さなかった。
「やっぱりそうか!! あははは!! 僕にも殺意を持って君達を殺す理由があることを今知ったよ!!」
獣魔術師はその瞬間、怒りと喜びを感じ、殺意を持って赤色の魔石を懐から取り出した。
「願ってもいない師匠の弔いだぁ!! ここで死んで償ぇえ!!」
その魔石を力一杯に床へと投げつける。
魔石は奇怪な音を奏でて激しく割れ、中から赤色の煙が大きく膨れ上がってゆく。
その異様な光景と魔石から放たれた魔力量にジムは危険を感じ、キリオに叫ぶ。
「キリオ!! あの赤い煙にアイアンメイデン!! 今すぐ!!」
「は!?」
「いいから!! 早く!!」
「わ、わかった!」
キリオは意識を集中させる為に一度目を閉じ、深呼吸を挟んで力一杯魔力を振り絞る。
「来い!! 剛鉄乃処女!!」
キリオが殴った地面から青い電光が瞬き、赤色の霧の真下で激しい音を立ててアイアンメイデンの錬成が完成する。
アイアンメイデンの開いた蓋の闇から紫色に淡く発光する鎖が赤い霧を取り巻き、凄まじい速さで引きずり、飲み込んだ。
しかしその時、キリオの拘束具で動きを封じていたキメラ4体が次々に拘束具を破壊し自由になっていく。
「……まずい……キリオ。出し惜しみをしてる場合じゃないかもしれない……」
『時間さえ有れば隔離出来るのに……あれを試したい所だけど……』
「……あぁ……俺もそう思ったところだ」
『普通の鉱物で作った物じゃ何も通用しない……あれを試してみるか……』
その瞬間だった。
アイアンメイデンから鳴り響いた嫌な亀裂の旋律が2人の全身に恐怖を走らせたと同時にアインメイデンが耐えきれずに凄まじい音と共に弾け飛んだ。
そして、中から出てきた赤い霧が辺りを真っ赤に染め上げ、気づいた時には超重量級のありとあらゆるモンスターで掛け合わせられ、錬成された混合獣が目の前に現れた。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
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