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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「事後」

「事後」





「……ん……こ、ここは……」



ぼんやりと写る見知らぬ天井にキリオは困惑する。



「おはよう! キリオ!」



そう呼びかけたのは隣のベットの上で座り、包帯姿のゼドだった。



「ゼド!? あ、あれ? 俺ら……試合してたんじゃ……」


「その様子だとやっぱり覚えてねぇんだな!」


「な、何があったんだ?」



その時だった。

キリオは上空から突然きた凄まじい衝撃に悶絶する。



「いっ……てぇ!!!!」



振り返れば般若の様な形相ぎょうそうをしたシリスが拳で殴った後だった。



「おはよう愛弟子君まなでしくん……お目覚めはいかがかな?」



シリスの引きる笑顔にキリオは恐怖を感じる。



「ちょっ……待て待て! 俺が何した!? 何で怒ってんだよ!?」


「後、もう1発殴ったら教えてやるよ!!」


「ぎゃぁああああ!!」



ゼドは隣でそれを見て笑っていた。



「よし! スッキリした! 話してやろう!」



シリスが話す気になった時にはキリオの起床を聞き、その場に全員が集まった。



「シリス様? キリオ様にいったい何があったのですか?」



ミィナがキリオの心配からシリスにそう聞く。



「実はあたしにも何故あんな事になったのかわからない……ただ……原因はわかってる!」


「な、何の話してんだよ……」



状況が飲み込めないキリオにシリスは凄まじい怒りの眼光を飛ばして言う。



「お前……術式いじったろ?」



余りの視線にキリオは唾を飲み、素直に言う。



「い、いじりました……」



キリオは自分が言ったその言葉で最後の記憶に残る余りの痛みに苦しかったのを思い出す。



「……あ! まさか!?」


「術式見せろ」


「は、はい」



キリオは右腕を差し出し魔力を送り、それに術式が反応し、皮膚に錬成陣が発光した。



「で? どこいじったんだ?」


「ここにアルツを入れました……」


「……キリオ?」


「は、はい」


「もう1発殴らせろ」


「か、勘弁し……」



気づいた時にはキリオは拳骨げんこつを貰っていた。



「いてっ!? おい!? 殴らせろって聞く意味あったのかよ!?」


「お前が馬鹿な事やってるからだよ!!」


「どう言う事だよ!!」


「ここにアルツ入れたら火に油入れてる様なもんだぞ!?」


「ブーストさせる為に入れたんだから当たり前だろ!?」


「ばかやろぉ!! そんな生優しいもんじゃねぇんだよ!! 大爆発が起きてんだよ!!」


「は!?」


「下手したら四肢がぶっ飛んでんぞ!!」


「……え?」


「わかったらもうやるな……こんな事で弟子は失たくない」


「あ……ご、ごめん……」



シリスの悲しい顔にキリオは自分が命の危険にあった事を理解し、反省する。



「キリオのあの異常な暴走は術式が原因じゃないのですか?」



その時、ジムが話を戻しシリスが説明する。



「あぁ……基本的あんな暴走は錬金術には存在しない……自分の無意識であんなに動けるなどありえない……だからおかしいんだ」


「暴走? 俺が?」


「そうだよ!! マジで大変だったんだからな!?」



シリスがそう言った後、プロンが言った。



「ええ……久々に聖級魔法を使わされたわ」



その次にペテルの言葉が続く。



「久々の3人がかりでしたね……私は少し楽しかったですが」



 そして、キリオは事の顛末てんまつを聞かされた。



「……お、俺が……そ、そんなこと……を?」



驚きの余りキリオは頭が真っ白になる。



「でもあの時のキリオは強かったぜ!!」



隣のゼドが笑ってそう言い、キリオは改めてゼドの状態を認識する。

包帯で巻かれ、重度の怪我だったのが伺えた。



「ぜ、ゼド! 本当にごめん!!」



キリオは改めて謝罪する。



「気にすんな! 本気の勝負を持ちかけたのは俺だ……ただ、俺が弱かっただけだ」


「本当に……す、すまない」


「大会はまた出場するさ」


「え? そ、そういえば……試合は? 大会はどうなったんだ?」



キリオのその疑問に錬金術師同期の友人ウィルが答える。



「もう終わったよ! キリオはずっと寝てたんだよ」



ウィルに言われ、キリオは窓から外を見る。



「もう夜になっちまってんのか……で? 結果は?」



「僕が説明するよ!」



ジムがその後の試合経過を報告する。



「ゼドとキリオの試合は師匠達が乱入したけど、無事にキリオの勝利となってたよ」



 レフェリーがゼドの戦闘不能を宣言した事で、キリオの勝利が確定していた。



「その後、プロキオン国で今期序列2位の剣士ナイトフロウ・ドーマンと僕の試合は僕が棄権し、フロウ・ドーマンが決勝戦進出」


「え? ちょっとまって! なんで棄権したの?」


「まぁ! 聞いてよ!」



ジムはキリオを置いて話を進める。



「その次に、アンカー対プロキオン国 守護士ガーディアンドロス・ユーロンの試合はアンカーが棄権し、ドロスが進出」


「はぁ!? アンまで!? なんで!?」


「その理由はこの時点でキリオが10位、僕が9位、アンが8位になるからだよ」


「あ……」



キリオはジムに言われて気づいた。

この大会の1番の目的はトップ10位以内に入る事。

その時、ゼドがキリオに手を伸ばし言う。



「ジムから話は聞いた。おめでとうキリオ。」


「あ、ありがとう……」



キリオは不本意な気持ちで一杯ながらもゼドの手を受け取る。

しかし、10位を勝ち取ったとは言え、それはキリオ自身が努力で勝ち取った物ではない。

その違和感にキリオは素直に喜ぶ事が出来なかった。



「……不満そうな顔だな」



ゼドはキリオのその気持ちを見通す。



「……だって……俺はゼドに酷いことを……」


「さっき気にすんなって言ったろ?」


「……言ったけど……」


「ならさ! 卒業したらプロキオン国まで来てくれよ!」


「え?」


「めっちゃもてなすよ! そんでさ! ちゃんとした決着つけようぜ!」


「……そうだな……それもいいかもな」



キリオは励まされ、それが悪くないと悟った。

ゼドとの縁が切れる事なく、次に繋がる。

キリオはそれが嬉しかった。



「本当にありがとうゼド」



そして、ジムが話を戻す。



「その後の試合の結果はね……」



ジムは試合の結果をキリオに話した。



1位プロキオン

 聖騎士パラディンロキ・プロキオン


2位アルデバラン 

 聖騎士パラディンアルナ・アルデバラン


3位プロキオン 

 剣士ナイトフロウ・ドーマン


4位アルデバラン 

 剣士ナイトエル・アルデバラン


5位アルデバラン 

 守護士ガーディアンウェン・アスピディス


6位プロキオン 

 魔法師ウィザードキース・ダジク


7位プロキオン 

 守護士ガーディアンドロス・ユーロン


8位アルデバラン 

 治癒師ヒーラーアンカー・ベガ


9位アルデバラン 

 魔法師ウィザードジム・デネブ


10位アルデバラン 

 錬金術師 キリオ・アルタイル




試合の結果を聞いてキリオは驚いた。



「はぁ!? アルナ・アルデバランが負けた!?」


「そうなんだよ! しかも決勝戦の戦い凄かったよ!?」


「うぁ……見たかった……んで? アルナの敗因は?」


「ん……でもほぼ互角だったのかな? でもプロキオン国ロキに少しパワー負けしてたかな?」


「アルナがパワー負け? ロキって人は相当なんだな……」



その時、ゼドが話には入ってくる。



「ロキさんはプロキオン国今期最強だぜ! 俺の剣術も見てもらってる!!」



その言葉にキリオはゼドの剣術を思い出す。



「あ!? だからか!! ゼドの剣術凄かったもんなぁ!?」


「だろぉ!?」


「強くて、あのかっこよさ……ロキさん憧れるなぁ……しかもめっちゃ優しかったよな……」


「そうだろぉ!? ロキさんはマジですげぇんだよ!」




キリオはロキに応援された記憶に浸っていた。

そして、ジムの話しは続く。



「ちなみに! ウェン相当ぶちキレてたよ?」


「あ……忘れてた」


「でも当初の作戦でもキリオは棄権する予定だったでしょ?」


「試合前のジムの作戦ね! でもまさかジムとアンまで棄権するとは思わなかったよ……」


「まぁ、目的はアルフェラッツだからね」


「だな」


「……そして! これが落ち!! 最後はシリスさんがキリオの責任とってアルデバラン上層部の連中にこっぴどく叱られたよ!」



その言葉を聞いてキリオの顔は青ざめる。



「あ……し、シリスさん?……この度は本当にす、すいま……」



キリオはシリスの顔を伺ったその時、シリスは満面の笑顔で言う。



「あ! その1発分まだ残ってたわ!!」


「おい! ジム!? お前マジでふざけんなよ!!」


「えへへ」


「キリオ歯くいしばれや!!」


「お願い! やめて! 話せばわかるって!」


「行くぞ!」


「ぎゃぁぁぁああああ!!」



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