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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「異常事態」

「異常事態」









脈を打つのと同時に激しい痛みがキリオを襲い続ける。



「 目が……か、霞んできやがった……い、意識が…たもてな………い」



全身の痛みと同調どうちょうし、赤い雷光らいこうが激しくまたたく。



「おい! キリオ!? レフェリー!! 何かおかしい!! 試合を中断しろ!!」



ゼドもキリオの異変に気づき、レフェリーに向かって叫んだ。



「中断はしない! 試合継続! 試合は継続だ!!」

『 錬金術師ごときで俺が担当する試合が中止になってみろ! 首が飛ぶだろうがよ!! ふざけんな! 試合は中止にはさせない!』



しかし、レフェリーは現状より自分自身の心配をしていた。



「何言ってんだよ!? 見ればわかるだろ!? キリオは戦える状態じゃない!! 」



それでもゼドはレフェリーに呼びかける。



「試合は継続だ!!」


「 ちっ……クソ!!」

『 この国はおかしいと思ってたが! ここまで頭いかれてんのかよ!!』



その時、キリオは意識が保てない中、それは行われていた。



『 人体の異常を確認……叡智乃代行ヘルムホルツもとに自律錬成を起動します』


『な……何か……き、聞こえる?』


『 とても危険な状態の為、意識の引き継ぎをします……今現在状況「勝利する事」を確認。人体の意識の結合を遮断し覚醒します』



その時、うずくまるキリオの周りで赤い雷光が更に激しく光を強め、圧縮された魔力が解き放たれて爆発する。



「キリオ!?」



ゼドはキリオを心配する。

しかし、その数秒後に土煙の中から優々と歩くキリオが出てきた。



「キリオ!? もう大丈夫な……のか?」



しかしその時だった。

ゼドは余りの驚きに息が詰まる。



「……っ!?」



それはキリオから放たれた凄まじい殺気だった。

今までゼドが感じたことのない生き物ではあり得ない程の圧力。

恐怖で顎は揺れ、手脚は震え、反射的に防御体制をとったその時だった。



「……え?……」



瞬き一つしたその時には、キリオが目の前で手をかざしていた。

































挿絵(By みてみん)










「 だーー」

『 誰だよ……お前……』


声を出す暇も無い秒コンマの中で、片目に錬成陣を宿したキリオと目が合い、ゼドは中身がキリオじゃないのを感覚的に理解する。



『空気中に78%の窒素を確認。錬成し、攻撃します』



そして、ゼドが気づいた時にはもうキリオのかざした手から放たれた凄まじい爆発に吹き飛ぶ。



「ーーグハッ……」



ゼドは防御体制を取り、更には限界突破の上級魔法を使用していたにも関わらず、キリオの攻撃力に耐えれず、かなりの重症の状態で吹き飛ばされる。



『 し、死ぬ……こ、殺される? に、逃げなきゃ……逃げなきゃ……』



吹き飛び転がる中でゼドは逃げることを選択する。

しかし、既にキリオが瞬間的な移動を見せ転がるゼドを待ち、蹴り上げ、ゼドは宙へと飛ばされる。



『 あぁ………ここで俺は死ぬの……か?』



その時、観客席でも動きが合った。



「キ、キリオ? な、何やってんだよ? やり過ぎじゃないのか?」



ジムがゼドの状況を見て心配する。



「赤い魔力発光!? それに上級錬成をしただと!?」



キリオの状況を見てシリスから驚きの言葉が漏れる。



「いったいキリオに何が起きているんですか?!」



ジムがシリスに疑問を投げた。



「錬金術で赤い魔力発光は術式のズレだ! 更にあたしはまだ上級錬成をキリオに教えていない!!」


「ど、どういう事ですか?」


「わからん! ただ、赤色の魔力発光は金属と金属が火花を散らしてる様なもんだ! あたしはそうならないように武装錬金術の術式を作ったんだ! なのにあたしが見落としたのか!? どちらにしろ! 何かまずい事が起きてる!」



その言葉を聞き、ジムは試合前にキリオが術式を足しに行ったのを思い出した。



「それだ!」


「は?」


「キリオは試合前に試したい事があると言って術式を足しに行きました!」


「なんだとぉ!? かなりまずい状況じゃねぇかよぉ!!」


「な、何がまずいんですか!?」


「ヘタをすれば……」



その危機的状況にシリスは冷や汗を垂らし、言葉を続けた。



「……頭が吹っ飛ぶぞ!!」


「え? キリオが……死ぬってことですか?」


「そう言ってる! プロン! ペテル! 手伝ってくれ! この試合を止める!!」



シリスは走り出したが、プロンはあきれて答える。



「あなたなら1人で十分じゃなくて?」



その言葉はシリスの強さを知っていたから出た言葉だった。



「ばかやろぉ! 武装錬金術をしてないキリオにあたしが武装錬金術を使ってようやくトントンなんだよぉ!!」


「……な、なんですって?」



その言葉でプロンもペテルも、今現在の危機的状況を理解しシリスの背を追う。



「……アン……僕達も行こう」


「うん……ジムならそう言うと思ってた」



ジムとアンカーも後を続いた。


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