「ゼドの上級魔法」
「ゼドの上級魔法」
ゼドは優々とキリオに一歩ずつ近づき言う。
「これで終わりにしたいけど……まだキリオには重力魔法を抜け出せる方法があるんだろ? 見せてみなよ。前の試合で使ったあの異常の錬金術を……」
「ちっ……このタイミングでは使いたくなかったんだけどなぁ……」
「でも、使わないと負けるだろ? さぁ! こっからが本番だ! キリオ! 俺とガチで闘おうぜ!」
ゼドは地面に這いつくばるキリオに剣を向けてそう言った。
「……待ってろ……今本気出してやるよ……」
キリオはゼドの誘いに乗ることにした。
「……武装錬金術……」
キリオの体に張り巡らされた錬金術式が発光を始め、キリオの周りで青い雷光が走り、徐々にキリオのステータスが上がっていく。
そして、重力魔法で動けないはずのキリオは抗いながらゆっくりと膝を立てそして起き上がる。
『……やっぱり……君はこの重力でも起き上がれるか……』
「行くぞ! 戒級強化!!」
その瞬間だった。
キリオの周りで圧縮された魔力が解き放たれ、凄まじい音を立てて空間を揺らし、同時にゼドの重力魔法が破壊される音が辺りを染める。
その土埃でキリオが見えなくなり、ゼドは剣を構え直し、気を引き締める。
「……。」
その時、静まり返る中ゼドは土埃の揺らぎを見つけた。
『来る!!』
直ぐに防御を取ったと同時に目の前ではキリオが拳を振り上げていた。
「は、速い!?」
ゼドは余りの速さに驚いた。
「待たせたなぁ!! ゼド!!」
キリオはそう笑いながら飛び込むのに脚にかけていた武装錬金術を右腕だけに切り替え、ゼドの構える剣に拳で渾身の一撃を放つ。
その時、凄まじい音と共にゼドのダイヤモンドより硬い氷の剣は粉砕し、その凄まじい衝撃でゼドは勢い良く吹き飛んだ。
『まずい!? 場外になる!?』
余りの勢いにゼドは残った剣を使って地面に突き刺し、間一髪の所で場外を阻止しする。
「ハハ……こ、これは……凄まじいな……」
「だろ?」
気づけば目の前にはキリオが笑ってそう言っていた。
「何故そこに居て攻撃をしない?」
「ゼドもさっき待っててくれてたろ?」
キリオはゼドに手を差し伸べる。
「……お互い、お人好しだな……」
キリオの手を借りゼドは起き上がり、キリオはゼドへと言う。
「ゼド……悪いがこの武装錬金はそう長く持たない……次で決める」
「なら……俺も取って置きを出すぜ! すぐに詠唱を終わらせるよ」
「わかった」
キリオはゼドと距離を取り構え、ゼドは詠唱を始める。
「……我は唱える…叶の願い、刻の想い、度重なる永遠の声、言霊として号哭を汲み…淘汰されん仇なす者に恩恵を与えんーー」
ゼドが右手を天に掲げると周りでは無数の小さい光が発光し、螺旋状に廻る。
「こ、これは!? 上級魔法!? ゼドの奴ここまで魔法を完璧に使えんのかよ!?」
魔導剣士とはいえ、低級程度しか扱えないと勝手に思っていた為にキリオは驚いた。
しかし、目の前で現に上級魔法を使うゼドを見てキリオは唾を大きく飲み込み、その時を待つ。
「主、至し天の声よ答えよ! 今ここに我! ゼド・カブルの声を聞き届け! 戒現せよ!!ーー」
廻る光は徐々に速さを増し、高速へと変わり、そしてゼド自身が赤く淡い光に包まれる。
「ーー限界突破!! 」
勢い良く武道の構えを取ったと同時に衝撃音を奏でて光が瞬き、立っていた地面には罅が入り、赤い闘気に包まれたゼドが現れた。
「すまん……待たせたキリオ……俺もこの魔法はそう保たない……状況は一緒だ」
「わかった……じゃぁ始めっか」
キリオは武装錬金術を全身に巡らせ、2人はお互いが得意とする構えを取る。
「……。」
「……。」
会場は静まり返り沈黙が続く中、2人の間ではもう既に壮絶な読み合いが始まっていた。
構えから始まる幾度と無い攻撃パターンを予測し、それに対応出来うる行動を用意する。
そして、2人の汗が一滴、顎を伝い落ちたその時。
凄まじい2人の脚力に、一瞬にして地面が捲れ、逆立った。
気づけばフィールドの真ん中で肘と肘が衝突し、衝撃波が辺りを波打ち、地面が抉れる。
『互角!? いや!? キリオの方が少しパワーが上か!?』
『さすがゼド!! だが! 術式を変えたお陰で武装錬金の調子がいい! これはいけるぞ!!』
2人は一手目の衝突で互いの力量を計る。
キリオは力技でそこから体を翻し蹴りを見舞い、ゼドは技術で往なし、反撃に出る。
攻撃が右往左往し、どちらも優位を取ることが出来ず、苦戦する。
その2人の余りの速さに目で追うのも難しい戦いが繰り広げられ、只々(ただただ)その光景を観客達は目に焼き付けようと必死に観戦する。
『くそ! 突破口が開けない! こっちは限界突破してんのにこれかよ!!』
ゼドは反撃に出ようとするがキリオの一撃一撃の重みに怯み、次の攻撃がどうしても遅れていた。
「見えてる! 動けてる! 調子が本当にいい! なのに! ゼドの体術が凄過ぎて崩し仕切れない!」
2人の戦いは拮抗していると思われたその時だった。
『よっしゃ! 崩れた!!』
先に優位を取ったのはキリオだった。
キリオの重い一発にゼドは耐えられず弾き飛ばされる。
『このまま一気に決め…っ!?ーー』
その時、キリオはつま先から脳内部までに達する瞬間的な痛みに襲われ、体の周りで赤色の電光が走った。
『ーーな、何が起きた!? ゼドに何かされたのか!? いや! これは……俺自身の痛みなのか!? 』
余りの痛みにキリオは攻撃に移る事が出来ずに、蹲ることしか出来なかった。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
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