「師匠達の合流」
「師匠達の合流」
ジムとアンカーはコロシアム観戦者指定席にてキリオを応援していた。
「ジム……あのキリオが押されてる」
「本気じゃないにしてもこれはゼドが圧倒的に強いね」
「でもキリオは模擬戦の時、アルナ・アルデバランと対等に戦っていた気がするけど…あれはなぜ? ゼドよりはアルナ・アルデバランの方が優っているはず」
「あれに関しては多分だけど、アルナもキリオを負けさせないようにしていたんだと思う…アルナが本気で勝ちにいっていたらキリオは負けていたね」
「なるほど」
その時。
「お!? やってんなぁ!! ……ってキリオ全然ダメじゃねぇかよ!」
聞き覚えのある声に2人は後ろを振り返る。
「あ…シリスさんに師匠、ペテルさんもいらしたんですね」
その瞬間、アンカーが凄まじい速度でペテルの胸に飛び込んだ。
「師匠!!」
ペテルはアンカーを微笑みながら受け止めて言う。
「あらあら…甘えん坊ですこと…どうですか?…頑張っていますか? まぁ…アンなら心配はしていませんが」
「うん…私…頑張ってる」
アンカーはペテルの腕の中で幸せそうな笑みを浮かべてそう言い、ジムはそのアンカーの顔を見て少し微笑んだ。
「あら? ジムもしたいのかしら?」
プロンがアンカーを羨ましそうに見ていたジムにそう聞く。
「やめてくださいよ! 僕は大きいのは苦手なんです! 手に余りますので」
「あらそう? ならこの乳房は負けそうなキリオ君の慰めに使おうかしら」
その間にシリスが割って入る。
「やめろぉ!! キリオには私ので十分だぁ!!」
「あら?あなたデカいのがいいと言っていたじゃない」
「もちろんだぁ! あたしはデカいのが好きだ!」
シリスとプロンの目線がジムの股間に向けられる。
「2人ともどこ見てんだよ!!」
ジムは顔を真っ赤にして叫んだその時だった。
ペテルの所に居たはずのアンカーがシリスとプロンの前に急に立ちはだかり、アンカーはシリスとプロンに言った。
「師匠と呼んでもいいですか!?」
どうやらアンカーは卑猥な話術を気に入った様子だった。
「やめろぉぉ!! これ以上アンに変な事教えるなぁぁぁああ!!!」
「はいはい…悪かったよ」
騒ぐジムをシリスは簡単に宥め、そして聞いた。
「キリオの一回戦目見てないけど、どうだったんだ?」
「え? あぁ…余裕とはいかないものの、試合の駆け引きで(おさ)える所はしっかり抑えて勝利はしましたが、切り札の武装錬金まで使わされてました」
「そうか…武装錬金はまだ見せたくなかったなぁ…」
「そして、今戦ってるゼドには手の内がバレているので苦戦している状態ですね…」
「なるほど…」
「そもそも一回戦目をなぜ観に来なかったのですか?」
「え? なんでって…キリオが一回戦で負けるはずがないだろ?」
「…まぁ…確かにそうですが…」
「あたしが師匠なんだ! そんなやわに教えてるわけがないだろぉ!」
「うう…た、確かに…」
ジムはシリスの地獄訓練メニューを思い出した。
「しかし…今戦ってる奴は相当強いな」
シリスがゼドの剣術を見て感心する。
「ええ…今プロキオン国で負けなしの方ですからね」
「まずったな…キリオには剣の基礎とか教えないからな……」
「え? でもキリオはわりと剣使えてますよね?」
「確かにそう言われてみればキリオってなんで剣使えるんだ?」
「僕が知るわけないじゃないですか」
「だよな…いや…でも使えてるって言い方は不自然だな…使ってるの方が正しいかも…」
「どういう事ですか?」
「基本的あたしは武器を使わない! 拳闘士に教えをもらったからだ! そんなあたしが察するに…彼奴は剣を使えるんじゃなくて使ってる」
「だから! どういう事ですか!?」
「そのまんまだ! そこに剣があるから使ってる」
「へ?」
「ジムは日本にいた頃にもし、家で不審者と遭遇したらどうする?」
「ん……喧嘩や殴り合いは昔から苦手なので何か武器になる物を手に取ります……あ!」
ジムはシリスに言わされて気づいた。
「それと一緒だ……キリオの場合は鋏の錬成度はかなり高いが剣は作れない…しかし鋏を大きくする事はできる」
「なるほど…できるから使ってる…ん? 剣が使える理由になってませんよ?」
「そもそもあいつが剣術を使ってるように見えるのかよ?」
「…確かに見えないですね…」
「あたしも感覚人間だからわかるけど、あれは反射神経とセンスだろうな…防御する物や攻撃する物さえあればそれでいいと言った感じだな」
「なら…キリオが剣術を覚えたら…」
「ただでさえ、元々のステータスが異常なのに加えてあいつはまだまだ強くなるな」
「…キリオが言ってました…この世界に来て身体能力、五感どれも日本に比べたら桁が違うと」
その言葉を聞き、シリスの頭にヴァルプルギスの夜が頭をよぎる。
「…チッ……やっぱり…そうなのか…」
『……クソ…苛立つ…やはり…ヴァルプルギスの夜はコイツらの代で来ちまうって言うのかよ…』
無意識に怒りが込み上げ、凄まじい殺気を放ち、顔が急に険しく強張り、握った拳が力みで震える。
「…っ!?」
ジムはシリスの殺気に当てられ、余りの驚きと恐怖に息が詰まった。
「…シリスやめなさい」
プロンがシリスの殺気を感じて止める。
「すまない…つい…」
その時だった。
会場が沸き立つ歓声が辺りを染め、ゼドとキリオの試合に目を落とすと、キリオがゼドの重力魔法により地面に張り付けにされていた。
「あ! あのバカ! やられそうじゃねぇかよぉ!?」
シリスの怒りは消え、キリオの心配を始める。
そして、キリオの状況を見てプロンが言った。
「あらやだ…本当に私の乳房が必要そうじゃない」
「おい! プロン! キリオを甘く見るなよ!」
「どういうことかしら?」
「あたしはあいつを確かに宝の持ち腐れと否定した……でもな! あたしは一言も! 彼奴が弱いとは言っていない!!」
シリスは喜色満面を見せてそう言った。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
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