「キリオのトーナメント2回戦目」
「キリオのトーナメント2回戦目」
トーナメントは何事もなく進み、予想通りの結果で全員が1回戦を終える。
ゼドが1回戦突破を果たした後、10戦目のアルデバラン国1位を誇る、聖騎士アルナ・アルデバランは1回戦突破。
次に12戦目のプロキオン国、剣士フロウ・ドーマンも1回戦突破。
14戦目の魔法師ジム・デネブも余裕の1回戦突破。
16戦目プロキオン国の守護士のドロス・ユーロンも1回戦突破。
18戦目の治癒師アンカー・ベガも1回戦突破。
20戦目プロキオン国の聖騎士ロキ・プロキオンも1回戦突破を果たした。
トーナメント2回戦が始まり、プロキオン国、魔法師キース・タジク2回戦突破。
アルデバラン国、模擬戦2位の剣士、エル・アルデバランも2回戦突破。
次にアルデバラン国、守護士ウェン・アスピディスも2回戦突破を果たした。
そして、迎えたキリオの2回戦目。
「プロキオン国、剣士ゼド・カブル対アルデバラン国、錬金術師キリオ・アルタイル前へ! 」
レフェリーの案内から2人はフィールドに上がり、中央で止まる。
そして、ゼドはキリオに話しかけた。
「キリオ……俺は全身全霊でお前にぶつかる! お前はきっと答えてくれると信じてる! 」
「あぁ……俺にもこの勝負に勝たなきゃいけない目的がある! すまないが本気で行かせてもらう! 」
レフェリーが間に入り、確認を取る。
「二人とも準備はいいか? 制限時間60分、場外、降参あり、戦闘不能と私が判断したら試合終了とする! よいな?」
2人は頷き合い、少し離れた指定位置へと移動する。
キリオは今回、早々に鋏剣を錬成し構えを取り、ゼドはそれを見てにやけながら自分の剣術の構えを取った。
「……。」
「……。」
レフェリーが2人の準備を確認し、沈黙を置く。
「始めっ!!」
開始の合図と同時にゼドはキリオに向けて走り出す、対するキリオは地面に手を着き錬金術を使用する。
『壁か!? このスピードなら上に……』
ゼドは壁が錬成されると思っていた。
しかし、キリオか錬成したのは壁は壁でも地面から氷柱の様に尖った岩の防壁をゼドめがけて錬成する。
『なるほど……壁だけでは前回の試合同様、壊される危険性がある……だから向かってくる敵に対して攻撃的な防壁を作った……そして、キリオは俺がどちらかに避けると思ってる』
「なら……乗ってやるよ!!」
ゼドは罠だと分かっていて左に向かってキリオの攻撃を瞬時に回避し、進む。
その瞬間、死角から影が飛び出しゼドは反射的に攻撃を放つ。
「ちっ……岩か……」
目の前にはキリオの形を模した岩があった。
「って……事は!!」
ゼドは直ぐに振り向き様に後方へと剣を振り抜いたその瞬間、剣と剣が対峙する甲高い音が鳴り響く。
「いやらしいんじゃねぇか? キリオ!」
「ゼドならこのぐらい大丈夫だろ?」
ゼドはそのままキリオの剣だけを受け流し、自分は遠心力を使い、二撃目に出る。
「まじかよ!?」
キリオは驚いた。
反応ができたとは言え、ゼドの体勢は確かに崩れていた。
しかし、その2撃目に移るあまりの滑かな動きと判断の速さにキリオは冷や汗を垂らす。
「…くっ……」
『剣術がうま過ぎる』
キリオはゼドの2撃目、3撃目、4撃目、と受け止めるのがやっとだった。
「まだまだ行くぜぇ!」
ゼドの凄まじい剣撃はまだ続く。
キリオは意表を突いたつもりだったが、ゼドの戦闘経験の方が勝る。
『何処かで剣を食い止めないと……』
その時、ゼドの剣が大振りになった。
『見つけた! ここだ!』
キリオはタイミングを合わせて、ゼドの剣を漸く止める事が出来た。
「お? 止められたか! 」
「あぁ……この時を待ってたよ」
「なんだと!?」
『まずい!? 何か来る!?』
キリオは対峙するゼドの剣に空いてる手で触れたその時、ゼドの剣に音を立てて電光が走ったのを見てゼドは焦り、距離を取ろうとキリオの剣を押し返して後方へと飛ぶ。
「いったい……何をされ……なに!? 」
そして、ゼドは自分の剣の刀身を見た時、中元から先が破壊されている事に気づいた。
「これでゼドの剣は使い物にならなくなったな!」
「へぇ……やるじゃん……」
しかし、ゼドはそれでも折れた剣をキリオに向け構える。
「剣は無い! 対魔法戦なら特訓済みなんだよ!」
キリオは気づいていなかった。
ゼドが気付かれないように上手く舌だけを使い、小声で詠唱している事に。
そして、ゼドは剣の破損した部分に左手を添えて最後に唱える。
「……極低温乃結晶! 」
その瞬間、青い光を瞬かせ、気づけばゼドの剣の破損部分には氷の刃が出来ていた。
「なに!?」
『詠唱の短縮!? いや! 俺が気づかなかっただけかぁ!? てか! それよりもやばい!! せっかく剣術を封じたと思ったのに!』
「お? どうしたキリオ? 焦りが見えるぞ?」
「ちっ……言ってろ! 氷の剣って言ってもどうせ見掛け倒しだろ? 剣の撃ち合いで耐えられるはずがない!」
「へぇ! 知らないんだ? 教えてやるよ。例えば、ダイヤモンドの硬度はおよそ10だ! それに対して氷は0°で硬度1。−70°で硬度6になる……そして俺はこの結晶を作るのに−140°で作った……どういう意味かわかるか?」
「……!? って事は……こ、硬度12!? ダイヤより硬いって事かぁ!?」
「ご名答!!」
その言葉と共にゼドは攻撃を繰り出す。
「くそ! 早い!?」
『どうする!? もう剣に触れる事は警戒されている! なら距離を取るしかない!』
キリオはゼドの剣撃の合間を見て受け流し、避け、漸く後方へと下がり急いで広範囲錬金術を使う。
「広範囲錬成!」
フィールド全体に電光が走り、地面が音を立てて人間の手の形へと形状変えゼドに襲いかかる。
しかし、ゼドはキリオが距離を取った時、既に詠唱が終わっていた。
「人体強化!!」
無数に迫るキリオの攻撃にゼドは凄まじい動きを見せ、キリオは驚いた。
「なんだよあの動き!?」
フィールドで作った巨人サイズの拳をゼドは剣で斬り刻み、殴って粉砕し、避けて回避を繰り返しながら刻々とキリオに近づいていく。
「くそ!」
『ゼドのバトルセンスやべぇじゃねぇかよ!!』
キリオ自身も合間の隙を伺い攻撃に転じる。
もはやそれは一対多のはずだった。
しかし、それでもゼドには刃が届かない。
「この戦い方は前の試合で見させてもらってる! 俺には効かねぇよ!」
「く……」
ゼドはキリオの攻撃を掻い潜る中で左手を上空に上げ、詠唱を始める。
「……我は唱える! 叶の願い、刻の想い、度重なる永遠の声、言霊として号哭を汲みーー」
『これは!? 中級魔法の詠唱!? まずい!? 範囲系魔法か!?』
「くっそぉ!!」
キリオはなんとか詠唱を防ごうと必死に攻撃に出る。
しかし、錬金術での攻撃も、その間の隙の攻撃も、どれも死角をついているにも関わらず、ゼドには往なされる。
「ーー淘汰されん仇なす者に恩恵を与えん! 主、至し天の声よ答えよ! 今ここに我! ゼド・カブルの声を聞き届け! 戒現せよ!!ーー」
「間に合えぇぇぇぇええ!!!」
キリオは全身全霊で渾身の一撃を見舞う為に踏み込んだ。
「ーー大地乃怒!!」
ゼドは上げていた左手を力一杯に降ろしたと同時にそれは起こった。
「ぐはぁッ!!」
突然、衝撃音と共に上から凄まじい重さがキリオを襲い、地面に叩きつけられ、キリオの攻撃は間に合わなかった。
錬金術で作った手の形を模した岩も形状を維持できずに崩れ、攻撃が止まる。
「キリオ……もう君はこの範囲魔法の中では動けない」
「くっ……そぉ……」
『……重力魔法か!? 全く動けねぇ……』
ゼドは優々とキリオに一歩ずつ近づき言う。
「これで終わりにしたいけど……まだ君には重力魔法を抜け出せる方法があるんだろ? 見せてくれよ。前の試合で使ったあの異常の錬金術を……」
「ちっ……このタイミングでは使いたくなかったんだけどなぁ……」
「でも、使わないと負けるだろ? さぁ……こっからが本番だキリオ」
ゼドは地面に這いつくばるキリオに剣を向けてそう言った。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
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