「メイジナイト」
「メイジナイト」
キリオは試合を終え、参加者の指定席へと戻りジムとアンカーが待つ椅子に腰掛けた。
「キリオお疲れ様」
ジムがそう言葉をかけたその直ぐ後にアンカーが言葉をかける。
「キリオ? あの最後のはいったい何? 私には一度も見せていない」
「あぁ……最近の切り札だったんだけど……使わされちゃった……まだ見せたくなかったんだけどね」
「武装錬金術は凄い……私でも多分追いつけない速さだったと思う」
「そう言ってくれると嬉しいけど……それでもまだ不完全なんだよね……持って10分程度が限界だ。錬成術式がとても難しいんだよ」
「あれで未完成……とても恐ろしい」
ジムが言葉を挟む。
「ミラク国との戦争……アルフェラッツの遺跡の攻略の時には間に合いそうなの?」
「間に合わせる。そこが俺達の目的だからな」
その会話にアンカーが少し、後悔を感じ、謝罪を入れる。
「私の為に本当に申し訳ない」
その言葉にジムが答えた。
「アンは気にしなくていいんだよ! 僕達が好きでやってるんだから! それに……」
ジムは過去を振り返りながら話を続ける。
「生前……僕は人を助ける事が出来なかった。なのに僕は傲慢にも誰かに助けを求めてた……そして、求めていたにも関わらず、その差し伸べられた手の優しさを否定した。だから僕は変わりたいんだ。昔の自分から……無理に関わってでもアンを助ける。アンを助ける事は僕の救いでもあるから」
「こんなに人の優しさに触れたのは初めて……ありがとう……ジム」
目と目を合わせて微笑むアンカーとジム。
それを聞いてキリオは言った。
「ジム大丈夫? 何か告白みたいになってるよ?」
そのキリオの言葉にアンカーとジムは赤面する。
そしてその時、歓声が湧き上がり、試合会場に目を移すとゼドの戦いが始まった。
対戦相手もゼドも剣士の職業なのが伺え、2人とも片手剣を使い、剣術だけで戦いを繰り広げる。
戦況はゼドの剣圧が上のようで対戦相手はただ、ただ押されていた。
その試合を見てジムが思い出した様にキリオに聞く。
「あれ? ちょっと待って……キリオ? 今戦ってる…ゼドってまさかプロキオン国のゼドって人?」
「そう……俺の次の対戦相手」
「そういえばさっき武装錬金術を見せたくなかった相手って……」
「そう……ゼドだよ」
キリオは話を続ける。
「ゼドとはこの前バッタリ会って知り合いなったんだけどめっちゃ良いヤツでさ! 戦うのが楽しみなんだ!」
「え? はぁ!? ゼドと知り合い!? いつ!?」
「この間のジムとの待ち合わせの少し前にゼドに絡まれて……ロキさんとフロウさんと会って……」
「待て待て待て待て!! ロキとフロウ!? プロキオン国今期最強って言われてる二人だよ!? しかもそのゼドは二人の目かけから、今負けなしの人だよ!? 」
「……え? な、何そのとんでもない情報……」
「キリオ何としてでもゼドに勝たないと! トップ10人に入れないよ!?」
「……わ、わかってるよ……っても……ゼドの剣術やばくね?」
キリオから冷や汗を垂らしたその時、試合中のゼドが剣撃の末、対戦者に剣を吹き飛ばされ、その隙を見て対戦者はとどめにかかり高く剣を振り上げる。
キリオはその時、疑問に思った。
「あの剣術を持ってて剣を手放した? あり得ないよな……」
その言葉にジムが返す。
「うん……わざとだろうね」
その瞬間、ゼドが目にも止まらぬ速さで相手の懐に踏み込んだ。
『はや!?』
気づけばセドの右腕に炎が激しく渦巻き、相手の溝落ちめがけて力一杯に正拳突きを叩き込む。
「魔法だと!?」
キリオがゼドの魔法に驚く。
ゼドの対戦相手は衝撃で場外へと飛ばされ気絶し、この試合はゼドの勝利となった。
「ぜ、ゼドは魔法も使える剣士なのかよ……」
驚きを隠せないキリオにジムが言う。
「プロキオン国はサブ職業がしっかりしているからね。その中でも彼は魔導剣士なんだろうね」
「やべぇ……どう戦ったらいいんだよ……」
頭を抱えるキリオにジムは追い打ちをかける。
「しかも彼……魔法の方も相当できるよ」
「そうなの?」
「うん……彼がこの試合中に使った魔法の回数はいくつだと思う?」
「え? さっきの炎の正拳突き一回じゃないの?」
「ハズレ! 彼は炎を合わせても3つ魔法を使ってるよ」
「は!? どこで!?」
「まず一つ目は剣をあたかも吹き飛ばされ、相手が大振りになった時の瞬間的スピード」
「まさか!? 人体強化?」
「そう! 自身の体に魔法を使ってバッファーを付与してる」
「ど、通りで速すぎると思った……」
「そして、あの炎の正拳突き!」
「え? それだと2つじゃん?」
「残念! あの炎と一緒に彼は風を使ってる」
「そうなの!?」
「対戦相手が吹き飛んだでしょ? 誰も見えてないだろうけど炎と風で螺旋状に形を作り、バネのように圧縮し、それを解き放つ……そうするとジェットのような速度の正拳突きが完成する。だから対戦相手は場外まで吹き飛んだんだ」
「なにそれ……反則じゃん」
「僕からしてみればキリオも十分反則だと思うよ」
「……いや……ほら……生きてきた世界がちがうじゃん?」
「なににしろ対策は立てないとね……でもキリオ最近は対魔法訓練やってたけど、その辺どうなの?」
「……ん……その前にゼドには剣術があるじゃんかよ……対魔法より前に負けちゃうよ」
「なら剣を無力化しすれば? さっきの試合みたいに斬るとかさ」
「おお! なるほど! でも武装錬金術があって剣を切れるからな……持って10分の切り札を最初に使うのはリスク高いよな……」
「高周波ブレードとか作れないの?」
「無理無理、原理がわからん」
「超振動されるだけだよ」
「だからどうやってさせんだよ」
「あ……確かにわからないや」
「何か……他に……あ! そうだ! 錬成術式を少し変えようと思ってたんだ!」
「武装錬金の?」
「そうそう! 術式で少し変えてみたい所があったんだよね! ちょっと錬金術師の教室で術式を足しに行ってくるわ!」
キリオはゼド対策を考えながら教室へ向かった。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
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