「更なる高みへ」
「更なる高みへ」
夜の自由時間でキリオ、ジム、アンカー、ミィナ、ウィルはいつもの特訓場を使用していた。
「ジム!! そこで爆発系はやめてくれ!! 煙幕で動けない!!」
「何言ってんのさ!! キリオを守る為に迂回させて上げてるんじゃないか!」
「見えなきゃ話にならないだろぉ?!」
「今のはキリオのインターバルの繋ぎだろ!?」
「ジムならもっと違う魔法あんだろ!」
そして、アンカーが言う。
「キリオ……そこ邪魔」
「いや! そこは俺が先に出てフィニッシュでアンだろぉ!?」
「私よりスピードもパワーも今ひとつのくせに私より先に出ないで。回復が必要になった時対処が出来ない」
「だからパワーあるから先に俺がでるんじゃん!!」
3人は連携の特訓をしていた。
「皆さん……バラバラですね」
ミィナがウィルにそう言った。
「うん……個が強い分、空回りしてると言うか……役割が決まってないんだよね」
「役割ですか?」
「そう……例えば五大選使はなんで、パラディン、ナイト、ガーディアン、ウィザード、ヒーラーのこの職業なんだと思う?」
「世界を救ったからでは?」
「それはもちろんそうなんだけど、実はチームにした時の役割がちゃんとしてるんだよね」
「そうなのですか?」
「前衛の守護士は敵を引きつけ近接戦闘をしつつ、剣士と聖騎士で多方面から殲滅にかかる。そして、中衛で魔法師で援護。後衛で治癒師だね! よく出来てるよね?」
「あ! 本当ですね!」
「でしょ?」
「なら……キリオ様達は……」
「そこなんだよね」
ウィルが話を続ける。
「今だと、キリオが突っ込むタイミングを図りきれてないし、どうでもいい所でサポートに回り過ぎてて、代わりにアンが前に出過ぎだね。ジム君はもう少し補助魔法があるといいんだけどね……もし、僕が考えるならキリオを前衛にアンを自由に動かし、ジム君が援護がいいと思うんだけど……」
「それだぁ!!」
「うわっ!? なに!?」
突然のキリオの大声にウィルはびっくりした。
「それだよ! なぁ!? ジム!?」
いつのまにかウィルのその話をキリオ達は後ろで聞いていた。
「そうだね! となると……キリオ? 今でも十分に硬いとは思うんだけどもっと硬くなれる?」
「……ジム……お前なに急に下ネタぶっ込んできた? 引くぞ!」
「逸物の話じゃないよ!! バカ!! 言わせんなぁ! 防御力の硬さだよ!!」
その時、アンカーが感心していた。
「凄いぞキリオ! 被害者を加害者に加害者を被害者にしてしまうその手口!! 私もやってみたい!!」
「お!? このジョークの良さがわかるのか!? よし! まずは18禁から……」
「やめろってぇ!!」
全力でジムに止められた。
「まずはウィルの言う通り役割の確認をしよう!」
ジムがウィルの案を参考に話を進める。
「キリオは武器持ちだし、スピード、パワーもある! 敵の攻撃対象を受け持ってもらってアンが状況に応じて動く。キリオと位置も近いから回復もしやすい! そして僕が遠距離攻撃で2人の空いた穴を埋める……どうかな?」
アンカーが口を開く。
「ジムは空いてる肛門でいいのか?」
「コラァ!! キリオ! アンに何教えてんだよ!!」
「いや! 俺じゃないってぇ!!」
「てへぺろ」
キリオは怒るジムから全力で逃げ、それを見てアンカーはしてやった顔をした。
「もうやめろよ! 絶対やめろよ! これはフリじゃないからなぁ!! 話を戻すよ!!」
ジムが真面目な話しを始めた。
「この3人は個は強い……けど連携的な物がまだ一つもない! 何かそれを3人で模索したい」
その時、キリオが言う。
「3P……」
その瞬間、ジムは速かった。
「重力魔法」
キリオは言葉を言い終える前に地面に埋まった。
「フリじゃないって言ったらもうそれはフリだろぉ!!」
そして、アンカーがキリオに言う。
「師匠と呼んでもいいか?」
ジムが強引に会話に割って入る。
「話を戻す!! 連携を想定する為にキリオには更に防御力を強化してもらいたい! わかった!?」
キリオが言葉を返す。
「ならもう決まってる! 俺はシリスの所で武装錬金を教わってくるよ!」
「武装錬金?」
「俺も良くは知らないが、俺との特訓の時はステータスを合わせる為にシリスはいつも武装錬金を使ってるんだよな! 俺はそれを学んでくるよ!」
「なるほど……ステータスが今より上がるのか……それが本当なら凄いことだ! なら後はアンとの連携だね! それは合間を見てやろう!」
「ジムは何するんだ?」
「ウィルの言う通りなんだけど、僕も一人で戦うのを想定した魔法を磨いてきた分、アシスト系の魔法が足りないんだよね……この機会に特訓しようと思う」
「強化補助か!」
「そう! それも考えた! でももっとピンポイントでキリオとアンを助けられる物が必要だな……更にさっきのキリオやアンの邪魔にならないように遠距離系魔法でも害がない魔法の開拓も必須になるな……」
「今さっきの重力魔法なんか打って付けだと思うけど」
「そうだね! でももっとバリエーションを増やさないと直ぐに崩されるからね……狙われる隙が僕になるのは避けたい」
「ジム……お前わざとやってるだろ?」
「燃やすよ?」
「ごめん!! 嘘! 俺が悪かったって!」
そして、アンカーがジムに聞く。
「私は何をしたらいい? 股を広げれば…」
「アン? 僕が今冗談を言ってるように見えるのか?」
「……ジム怖い……」
そして、ジムがまた話しを戻す。
「アン? 実はしっかり話そうと思ってる事がある……」
真剣な顔でアンカーに言う。
「もし、呪いが解けた時……アンは今の力を失ってしまう。その呪いがいつどんなタイミングで解けるかがわからない。その時の対処法を考えないといけないよね……場合によるけど僕とキリオだけではアンを完全に守れるかが不安になる」
「……ジム……舐めないでもらいたい。私はペテル・ベガに治癒師として選ばれたベガの名を受け継ぐ者。攻撃に参加出来なくてもキリオとジムの命は私が守る」
その言葉にキリオもジムも安心し、ジムは言った。
「……うん……ごめん軽率な発言だったね。でもその言葉を聞けて嬉しいよ」
「構わない……心配してくれてたのはわかってるから」
その時、キリオが口を開く。
「なら俺は早速シリスの所に行ってくるわ!」
他の者はキリオの背中を見送り、各々特訓に励んだ。




