「予選 続」
「予選 続」
そして、魔法陣側面の場所では参加者達の蹴落としが始まり、参加者の人数を削り、早めに15人にしてしまえば自分達が残れると判断した者達が激戦を繰り広げ、そこでキリオは魔法陣の側面を背に大勢の参加者に囲まれていた。
「さっきのはまぐれだろ? たかが錬金術師全員で外に出しちまおうぜ?」
「でもさっきの動きお前みたろ!? お前がいけよ!」
「なら全員で……」
トーラス隊5番隊隊長との激戦を見ていた彼らはキリオを警戒していた。
「とてもめんどくさいことになってしまった……タッチされそうだったから避け続けただけなのに……向こうが意地になるからこんなめんどくさい事に……」
その中でもキリオは冷静だった。
5番隊隊長の動きの速さはシリスやアンカー、アルナ程では無かった為に逃げに徹し、錬金術で罠を仕掛け、外へと追い出すのはそう難しくなかった。
「この人数は……流石にいじめだよな……」
しかし、目の前に群がる参加者の数にキリオは危機を感じていた。
「さて……どうするか……」
キリオは案が無いわけではなかった。
全員で来るなら地下シェルターや、空中への回避を視野に入れていた。
しかし、どちらともその後の無防備が問題だった。
「やっぱり……側面を突っ切るのが無難か」
しばらく睨み合いが続いていた時だった。
「うわ!」
「おい! 気をつけろ!」
「アインが来てるぞ!!」
キリオを取り囲む参加者の後方でアインが凄まじい勢いで失格者を出しながら向かってくる。
「マジかよ……1番めんどくさい展開なんじゃないのか? これは……」
その時、参加者の群れの隙間から凄まじい速さで影が動いた。
『っ!? よ、避けられない!?』
キリオは咄嗟に鋏剣を錬成した。
その瞬間、剣と剣が衝撃音を放ちキリオは間一髪を間逃れる。
そして、目の前にいたのはやはりアインだった。
「へぇ……この速さについて来れるのか! 君本当に錬金術師?」
「お、お褒めの言葉をどうもありがとうございますアイン様……しかし私は錬金術師ですので、できればお手柔らかにお願いしたいのですが?」
『あっぶねぇ!! 焦ったぁ……』
「それは! 君次第かな!」
その言葉を言い放つと同時にアインは連撃を叩き込む。
『く!? 流石にこの人は速い!?』
アインの速さにキリオは防戦する。
そして、アインの隙をついてキリオは後方へと飛び、そのまま地面に手を触れ錬金術を使用し、追撃を防ぐ為に壁を作る。
「私はここだよ」
しかし、既に後ろにアインが居た。
「そうだと思ってたよ」
「なに!?」
だが、キリオはアインが背後に来ることを読んでいた。
その瞬間、アインの足元は崩れ、そこには落とし穴が作られていた。
「やるな! だが!」
アインは落ちる前に体を翻し、落とし穴から逃れる。
「残念だったな!」
「まぁ……落ちてくれるとは思ってなかったよ……」
『めっちゃ落ちててもらいたかったよぉ!!』
その時だった。
「ここにいやがったかぁ!!!」
怒声と共に振り下ろされた大剣をアインは受け止めた。
「やはり……来たか! タダイ君!!」
「ガダイだぁ! 俺は一度狙った獲物は逃さない質でね!」
「なら、私も少し力を見せようじゃないか!」
アインはガダイの剣を振り払い、間合いを取る。
「……蜃気楼…。」
その瞬間、アインの体全体が発光し、気づいた時には二人になっていた。
「なに!? 分身だと!?」
アインは自分ともう1人の自分二人でガダイに攻める。
「くそ!! こっちか!!」
ガダイが感覚的に左のアインに向け大剣を振り下ろした。
「残念! ハズレだ!」
本体は右のアインだった。
「ち……くしょぉぉぉ!!!!」
ガダイは急いで右に剣を向けようとするが、しかし、アインの速さにはもう間に合わない。
アインの手がガダイに触れようとしていた。
「く!? ……これで終りかよ……」
その時、黒い影が目の前に現れ、咄嗟にアインは剣を使う。
「は!? 何やってんだクソ錬金術師!?」
アインの剣を止めたのはキリオだった。
「……副隊長さん……」
キリオはアインと剣で競り合いながら言葉を続ける。
「これが正解だろ?」
「あぁ……見事だ!」
「うぉぉぉおお!!!!!」
その時、ガダイの雄叫びと共にアインに大剣が振り下ろされ、アインはそれを避け間合いを取る。
「クソ錬金術師!! てめぇまたあったら殺すって言ったよなぁ!?」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?」
「なんだと!?」
「助け合わないであの人に勝てるのかよ」
「……くそ!!」
その様子にアインは言った。
「素晴らしい! 君達は大正解だ! これは戦争を模した予選だ! 嫌いな者でも背中を預けなければならない時もあるのだよ!!」
その言葉にキリオ、ガダイは理解した。
現状となる様に動かされていた事に。
「……腹が立ってきやがった!!」
理解したガダイが怒りを荒げ言う。
「おい! クソ錬金術師!! 気にくわねぇがスピードじゃ俺は勝てねぇ! しかしパワーならぜってぇ負けねぇ!! 俺は錬金術師は嫌いだが、ちゃんと仕事を熟す奴は必ず評価する!! 意味分かるなよなぁ!?」
「そのつもりだよ!」
その二人を見てアインは思っていた。
『既にこの二人は合格だ……しかし、こうも熱くなると簡単には止めたくはないな!』
そして、アインはしかける。
「……蜃気楼!!」
アインが分身する。
「来たぞ! クソ錬金術師!!」
しかし、ガダイが叫ぶ前にキリオは既にアインに向かって駆け出していた。
『待つより先に偽物か本物か見定めた方がガダイが動ける!!』
キリオは右側のアインに向かって攻撃をし、鋏剣が空を切り、空振りする。
「ガダイ!!」
キリオが叫んだ時にはガダイももう動いていた。
「おらぁあ!!」
アインはガダイの攻撃に剣で迎え撃てば、キリオの攻撃に対応出来ない為にガダイの攻撃を避ける。
「な!? 何!?」
しかし、アインが退避した場所にはキリオが作った落とし穴があった。
「同じ手はもうきかん!!」
アインはまた落ちる前に回避する。
「ここだ!!」
だが、移動した先にはガダイが大剣を振り上げていた。
「やっぱりそうくるよな!」
その瞬間、アインは技を使う。
「……喪光!!」
アインの手に持つ剣が目を開けられないほどの光を放ち、視界が機能しなくなる。
それでもガダイは力一杯に大剣を振り切った。
しかし、剣は空を切り、アインを見失う。
「くそ!! 何も見えねぇ!! クソ錬金術師!! 何とかしろぉ!!」
「無駄だよ! この近辺で見えている者などいない! 終わりだ!」
アインがガダイの体にタッチしようとした時だった。
「させないよ!」
「なに!?」
キリオは錬金術で地面から銅を使った拘束具でアインを捕らえる。
「こ、これは……フフ……やられたな」
その時、ガダイの視界が元に戻った。
「戻った!」
そして、捕らえられているアインを見てガダイは剣を振り上げる。
「これで! 本当の終わりだ!!」
その時だった。
魔法で拡張された予選の終わりを告げる声が響いた。
「定員数15名が残ったのを確認! よって予選を終了とする! 予選を終了とする!!」
ガダイは我に戻る。
「危ねぇ……本当に殺しちまう所だった」
「私も命拾いしたのかな? ところで錬金術師くん……なぜ動けた?」
アインはキリオに聞く。
「……分身系のスキルは闇系か、操作系の人形か、他にも色々あるけど、聖騎士って大体が光系を司る戦士達なのはわかってた……」
キリオは鋏剣を地面に分解して話を続ける。
「光スキルの分身は蜃気楼を使った光の屈折を利用した視覚の翻弄だ。炎系と迷ったけど、でも光なら閃光系スキルもあると思ってた。そして後はタイミング……必ずピンチの時には光の速度か、目潰しがくると思ってた」
『ほとんどが漫画の知識だけど……』
「なるほど……私もどちらかで迷ってた! どちらでもしてやられていたな!」
「いや……光の速度なら追いつけなかったと思うなぁ」
「落とし穴を用意していたくせに?」
「……あちゃ! バレてたか!」
「光の速度で移動したとしてもその先に落とし穴が作られている事は想像がついていた……だから目を眩ませたが、バレていたとはな……君は本当に錬金術師なのかい?」
「錬金術師以外の何に見えるんだ?」
「……いや……錬金術師だな……」
キリオはアインを拘束から解いた。
そして、ガダイがキリオに言葉を吐き捨てる。
「おい……クソ錬金術師……礼は言わん! だが見事だった……じゃな……」
『認めてはくれたってことかな……』
キリオはガダイの背中を見送り、自分も予選会場から学園へと帰った。
その後、アインがトーラス隊5番隊隊長に話しかける。
「あの錬金術師は強かったか?」
「い、いえ! 少し油断しただけで! 私が錬金術師ごときに遅れを取るなど有り得ません!!」
「ふーん……そうか……」
「気になるのですか?」
「負けたからな……」
「2人がかりでしたし、更には私たちは4倍の重さの装備です……このハンデでは当然でしょう」
「これでもか?」
アインは剣を握っていた掌を見せて言った。
「な!?こ、これは!? 一体!?」
アインの手はキリオの斬撃の衝撃で痙攣していた。
「あの錬金術師の力量を見定められなかったお前も私もまだまだだと言う事だ」
「……し、信じられません……本当に彼は錬金術師なのでしょうか?」
「……あぁ……彼は紛れもない錬金術師だろう……」
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