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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「錬金術師の基礎」

「錬金術の基礎」









錬金術師は別棟での生活の為、食堂は必然的に錬金術師しかおらず、キリオは食堂そこで朝食を取っていた。



「そりゃ……飯のランクも低いか」



目の前にはスープとパン、とても美味しいとは言えない物だった。



「三代欲求の一つをここまで制限されるのってやっぱりきついよな……まぁ無いよりましか」



その時、ウィルが声をかけてきた。



「キリオ? 一緒にいいかな?」


「お? ウィルか! もちろん!」



ウィルが隣に座り、一緒に朝食を取る。



「あ! そうだ! ウィル? 呪いについてなんか知らないか?」


「呪い? どしたの急に?」


「ジムと呪いについて調べてるんだけど、文献があり過ぎて何に手をつけていいのか分からなくてさ!」


「呪いなら僕の部屋に面白い文献あるよ!」


「本当? なら自由時間の時に行ってもいい?」


「もちろん! それよりキリオは今日の授業何やるかシリスさんから聞いてないの?」


「あぁ……そっか講師はシリスだったなぁ……何にも聞かされてはないよ?」


「僕めっちゃ楽しみなんだよね!」


「なんで?」


「だって! キリオの錬金術はレベルが違うもん!! それを教えたシリスさんが講師だよ? 楽しみになるよ!」


「ん? も、もしかしてあの試験て師匠の度合いをはかる意味もあった?」


「うん! もちろん! 弟子が戦うんだよ? 師匠の度量がわかる場でもあったんだよ!!」


「あぁ……そ、そうなんだ……」

『シリスがそこまで計算してやってる奴だとは思えないけどなぁ……というか、ウェンは錬金術師に負けたけど大丈夫なのかな?』



ウィル、キリオは朝食を終え、授業を受ける教室へと移動し、席へと着いた時だった。

その時、数十人の錬金術師の生徒がキリオの所へと押し寄せた。



「ねぇ!? 君凄かった人だよね!?」


「あれは気持ちよかったなぁ!!」


「ああ! 久々に心がスカってしたよ!!」



どうやら試験でウェンを負かし、アルナとの戦いで奮闘した事が錬金術師かれらにとってとても喜ばしい事だった。



「あぁ……あれは……た、たまたまで……」



しかし、全員はキリオのその言葉など聞いておらず、次々に質問の嵐が飛んだ。

そしてその時、教室の扉が開き、シリスが入ってきた。



「さぁ! 全員座りなぁ!!」



教卓に移動し、全員が席に着くのを待ち、口を開いた。



「全員私がキリオの師匠なのはわかるな?」



一人一人の顔を伺いシリスは言葉を続けた。



「よし! なら! あたしの知識を存分ぞんぶんに教えてやる! まずは基礎のおさらいを簡単に確認する!」



シリスはウィルを指差し聞く。



「錬金術師は何が出来る?」



ウィルはその場で立ち上がり、シリスの問いに答える。



「はい! 錬金術師の元々は金を作る事でした! 故に錬成陣を使い鉱物、素材などを理解し、錬成し、造り替える事です!」


「そうだ! よし! 座っていい!」



シリスは改めて言う。



「今ウィルが言った事は間違いじゃない! いや! むしろ錬金術師はそこまでしか発展出来ていなかったと言った方がいいだろう! しかし! 皆んなももう見たからわかるだろう?」



生徒全員の視線はキリオに集まった。



「そうだ! あたしの弟子のキリオが実践し証明してくれた!」



シリスは黒板に描きながら説明を続ける。



「今までの錬金術師は魔力はあるが、戒現値がない者。又は戒現値はあるが魔力が少ない者……」



黒板にわかりやすく人の絵や錬成陣を描いていく。



「両者でも錬金術は可能ではあるが、その者達が錬成を可能にする為に、錬金術師は紙や、地面、魔法塗料など色々な物で錬成術式を組み込んだ錬成陣を描き、その物、地形、錬成陣の上に模造物を置き、錬金術を使って来た……」



シリスは今までの当たり前な錬金術師の常識を再確認と共に伝える。



「しかし! あたしはその錬成陣を自分の身体に描く事で錬成陣のタイムラグを無くした!」



実際に腕を出し、肌に映し出された錬成陣を見せる。



「今までの錬金術師はそんな事する必要も無かった!

しかし、戦闘試験を見てわかる通り、錬金術師は非戦闘員にもかかわらず戦闘要員として組み込まれている時代だ! 戦うすべを持たず! 戦う知恵も知らず! 笑われ、さげすまれ、そして、多くの錬金術師はただ死んでいった!」



シリスは拳を握りしめる。



「この国で錬金術師の死亡数は万年1位だ! だからあたしは少しでも! その死のリスクを減らす為に研究している!」


『ど、どうしたんだシリスは!? こ、こんなに真面目な奴だったか!?』



シリスの熱弁が素晴らしい物でキリオは驚いていた。



「私が今まで研究した成果! お前らは知りたいか!?」


「はい!」



生徒全員がシリスの言葉に心をかれて大きく返事をする。



「よし! お前らの思い! しかとあたしが受け入れた!! では! 全員……」




しかし、シリスの次の言葉に全員が驚いた。




「……今すぐ服をぬげぇ!!」


「……え?」



全員がシリスの熱弁の最後に予想していなかった言葉に固まり、キリオはただ、ただ呆れた。



『……俺が驚いたさっきのシリスはなんだったのやら……』



キリオ以外は全員が下着一枚になり並ばされ、その裸にニヤけながら錬成陣を描くシリスがいた。



『な、なんなんだ! この光景は!?』



はたから見れば、シリスが変態的に楽しそうに男性と女性の裸に絵を書いてる様に見える。



『ある意味……サービスシーンになるぞ!!』



しかし、その間でもシリスの錬金術の話は続いていた。



「今使ってるこの塗料は魔法師プロンが開発した特殊な魔道具だ! 一度書けば消える事はない! これで全員の身体に書き込んでいく!!」



シリスの言葉に生徒から質問が飛ぶ。



「逆に消す事は可能なのでしょうか?」


「もちろん! しかし、消すには魔法が必要だ! 書き足す事なら問題はない! この塗料は特殊ゆえに少し呪いに近い! 魔法でかけられた呪いは魔法によって解除が可能だ!」



その呪いの言葉にキリオは少し反応した。



『呪いか……アンカー・ベガの呪いが魔法でかけられた物なら簡単と言うことか……ん? なら魔法じゃない呪いが存在するのか?』



キリオも質問をする。



「シリス! 魔法じゃない呪いは何があるんだ?」


「あぁ……そうだな……おもに怨念だ! それか契約どちらかだろうな」


「なるほど……」


「それがどうかしたのか?」


「いや、気になっただけ」



そして、錬金術師の生徒全員に基本的な錬金術式をほどこし終わった。



「では! これから移動する!」



シリスの案内で移動した場所は錬金術師の為に用意された地形訓練用の小さい広場だった。



「各自、錬成陣を使わずに地面の中から鉄だけを使って椅子を錬成してみてくれ! じゃ……始め!」



生徒全員がシリスの号令と共に錬金術を始める。

身体に組み込まれた錬成陣が発光し、錬成光を放つ。

しかし、生徒達は苦戦をしていた。

完成した物はどれもいびつな物ばかり、鉄以外の素材も混ざっていたり、完成には程遠い物ばかり。

キリオはそれを見て驚いていた。



『え? 錬成陣無しで錬成を行う事って難しい物だったのか?』



シリスの教えで戦闘の中で錬金術を使用出来るようキリオは訓練されていた。

キリオは紙を使う事は一度しか行われていなく、それ以外は全て無紙むし錬成で特訓してきた。


錬成を成功させるまでの時間の短縮。

瞬間的に構築する錬成度の高さ。

戦術の中でどの瞬間が効率的か。

キリオは今、始めて理解した。

シリスが求める錬金術師とはなんなのか。



「はい! やめ!」



シリスが一旦止める。



「どうだ!? 難しいだろう!? 今までは錬成陣が描かれた紙に魔力を送るだけで良かった! しかし! だから錬金術師は今まで分厚い本を持ち歩いたり、巻物を持ち歩いたりいろいろと工夫されていた!」



シリスは歩きながら一人一人の目を見て言う。



「今度は違う! 錬成陣を描いた紙は無い! 魔力を直接送り、鉱物の分析、排出、創造、戒現を自分の頭で組み立てなければならない! それと平行して魔力操作! 物によっては針の穴に糸を通すような難しい構造もしなければならない! この難しい事を全員マラソンをしながらできるまでやってもらう! 始めるぞ!」




キリオも参加し、訓練場の周りを走りながらシリスが出す指示の鉱物、造物、ありとあらゆる物を走りながら作った。



『俺が今まで見てきた漫画や創作物はすでに戦いの中で錬金術を使っていたからシリスの訓練が当たり前だったけどこの世界の錬金術師にはその常識がまだ無いのか』



数時間が経過し、生徒達の疲労が見えてきたところでシリスが訓練を終わりにする。



「はーい! お終いにするぞー! 全員集合!」



シリスはまた全員を集めた。







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