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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「この世界の魔法理論」

「この世界の魔法理論」







アルデバラン学園は全寮制の為、模擬戦を終えた後、各生徒は自室に戻り、夕食まで自由時間になった。

各職業で塔は別かれており、錬金術師はまるで隔離されている様な状態にもうかがえた。

その自由時間でキリオは用意されていた一人部屋の机に向かい錬金術の本を読んでいた。



「錬金術の基礎が周りと違いすぎる……今のうちに普通を学ばないとな……」



その時ドアからノック音が響いた。



「はい! どうぞ!」



扉が開き、中に入ってきたのはシリス・アルタイルだった。



「よぉ! キリオ! 噂は聞いてるぞ!」


「あのな!! シリスの説明不足の所為せいで大変だったんだからな!?」


「え!? あたしの所為かよ!?」


「まぁ……終わったからもういいけど……で? 何か用だったわけ?」


「これ渡しに来たんだ!」



キリオはシリスから差し出された分厚い紙の束を受けと取り、目を通す。




「はぁ!? なんだよこれ!? いや! 無理無理無理無理無理!!!」



キリオが手渡された用紙それはトレーニングメニューだった。




「お前!! 俺を殺す気かぁ!?」


「大丈夫!! キリオはそう簡単に死なねぇから!」


「お前は俺の何を知ってんだよ!」


「ちなみにメニューは今日からだ! しっかりやっておくんだぞ!」


「はぁ!? おい! ちょっと!!」




シリスはそれだけ言ってキリオの部屋を後にした。



「はぁ……こんなトレーニング何処でやれって言うんだよ……ウィルにでも聞くか」



その足でキリオはウィルの部屋へと向かい、ドアをノックした。



「どうぞ!」


「ごめん! ウィルちょっと聞きたいん……って……なにこれ?」



キリオがウィルの部屋に入った時、部屋の中は本で埋め尽くされていた。




「どうしたのキリオ?」


「いや……何このおびただしい本の数は?」


「全部僕の好きな文研だよ! お気に入りの本だけ持ってきたんだ!」


「それにしては数がえぐいって……」


「それで? 何のよう?」


「あぁ……この辺でトレーニング出来るとこ知らない?」


「トレーニング? え? 今から?」


「そう……シリスが地獄のメニューを組んできてさ、やらなきゃならないんだよねぇ……」


「どれ?」


「これ……」


「うわ!? 何これ? 人間がこなせメニューじゃないじゃん!? え!? キリオ死ぬよ!?」


「まぁ……とりあえずやるだけやってみようかなと……」


「それならいいところあるよ! 着いてきて! 案内する!」




ウィルに連れられキリオはアルデバラン学園のトレーニングルームへと来た。




「うわ!? 何これ? 凄い!?」



キリオはトレーニングルームを見て驚いた。


莫大な広さに数えきれない程のトレーニング器具、更には地形などを想定された空間まで広がっていた。

しかし、それよりも驚いたのは利用している生徒の数だった。



「みんな頑張りすぎじゃね?」



その時、利用していた生徒達が錬金術師に気付き、全員の視線が嫌悪感を放っていた。



「あぁ……ウィル? 他にはないかな? みんなの視線がとても痛い……」


「ぅう……そ、そうだね……」



その時だった。




「キリオ! 何してるの?」


「お疲れ様ですキリオ様!」



振り向けばそこにはトレーニング姿のジムとミィナが居た。




「お? ジムもミィナもトレーニング?」


「そうなんだよ……部屋にプロンさん来てさ。魔法師なのにあなたはトレーニングしなさいとか言っちゃってさ! 苦手なの知ってるくせに、酷くない? そう言うキリオも?」


「そうなんだよね。でもここじゃトレーニングさせてもらいそうにないから他に行こうと思ってさ……」


「なるほどね……あ! そしたらいいところあるよ!」


「本当!? どこ!?」


「ついてきて!」




案内されたのはまるで日本を連想させる剣道場の様な広い空間だった。



「おお!? 懐かしさを感じる!? 何でこんなに日本ぽいの!?」



キリオは驚き、ジムにそう聞いた。



「随分昔に作られてたみたいだからその辺の事情はよく分からなくて……でも僕達にとってはここでしょ!」



その会話にウィルが入ってきた。



「ねぇ? 日本ってなに?」



ウィルの質問にキリオが答える。



「あ! 俺とジムの暗号みたいなもん! 気にしないで!」


「そうなんだ……なんか二人仲良いよね!」


「そうだ! この際ウィルも一緒にトレーニングどう?」


「え? いいの?」


「もちろん! ただ、このメニューだよ?」


「げ!? それは……遠慮しようかな?」



その言葉にジムが口を開く。



「じゃ! 僕達のメニューを一緒にやろうよ! キリオよりは普通だよ!」


「やるやる!」


「ちぇ! にげたな!」



キリオは笑ってそう言った。



「じゃぁ! 先にノルマの魔法訓練からやっちゃうね!二人は待ってて!」



ジムがそう言った時、キリオは聞いてみた。



「え? 俺も知りたい! 一緒に聞いてていい?」



ウィルも賛同する。



「僕も!」



もちろんジムは大歓迎だった。



「いいよ!」



ジムは喜んで説明を始める。



「魔法は科学に近いんだ! 例えば今僕が練習してる雷属性の魔法なんだけど、これがまた難しくて……」



その言葉にキリオは聞いた。



「雷をイメージして放つとかじゃダメなの?」


「それが違うんだなぁ! キリオは雷はどう起きてるか知ってる?」


「……。」


「キリオ嘘でしょ!? 小学校の問題だよ!?」


「俺が知らないってわかっててバカにしてるだろぉ!!」


「ごめんごめん! まず! 雷は静電気と同じでその環境が大事なんだ!」


「環境?」


「そう! 静電気は冬に起きるよね?」


「そうだけど……それをどうしたら雷になるんだよ!」


「雷は雲の中で小さな氷の粒がぶつかり合って雷を産むんだ! だから雷を出すにはまず水魔法で氷を作らなければならない!」


「そうなの!? 雷ドーンって出来ないの!?」


「そうなんだよね! だからこそ! 化学や理科に近いんだよ! 試しに……」



ジムは実践して見せる。



「水魔法は1番簡単なんだけど……魔力の操作で大気中に充満する水素エネルギーをかき集める……そして、増幅……」



ジムの手の平の上でボール状の水が完成した。



「これを魔力で飛ばせばウォーターボールになるんだ!そして、更にわかりやすくすると……この水を魔力で急激に温度を冷やし……手の平の上で粉々にしつつ乱気流を起こして……プラスとマイナスを加えて……」



ジムの手の平で雷がバチバチ音を鳴らし始める。



「そして……この乱気流を放つっ!!!」



その瞬間、ジムのかざした手の平から稲妻が音を立てて轟いた。



「おお!」


「だから雷魔法は水魔法の派生なんだ!」



その時、ミィナが口を挟む。



「ですが、この芸当はジム先輩だからこそ出来る芸当になります」


「どう言うこと?」



キリオは疑問に思いミィナに言葉を返す。



「皆さん忘れてるかもしれませんが、魔法を戒現かいげんさせるには詠唱が必要なのです」


「あ!? そうだよ! ジム詠唱してないじゃん!!」



ジムはまるで褒められた様に笑う。



「えへへ! そこが僕の凄い所なんだよ!」


「なんか……腹立ってきた……」


「あはは! だろうね!」



ジムは話しを続けた。



「でも! この世界で詠唱はとても大事なんだ! 僕もまだ回復魔法は詠唱しないとできないしね!」



その時、ウィルが口を開く。




「なんで回復魔法だけ必要なの?」


「理論が理解出来るのは無詠唱で出来るんだけど……回復に関しては理論がわからないんだよねぇ……だから僕も詠唱を唱えなきゃならない」




続けてジムは言う。




「重力魔法のグラビティは既に僕達は重力を感じている。それを魔力で倍にするだけ! 火の魔法は魔力同士を手の平で操作して摩擦を起こして魔力に火をつけるとか、風魔法は魔力で形を変え飛ばすだけ! この元素魔法ができれば後は応用すればいろんな魔法が使えるよ!」


「へぇ……魔法って理論的なんだなぁ。ちなみに聞いてもいい?」



キリオはジムにたずねてみた。



「詠唱があれば俺も魔法が……」


「キリオは無理だよ!!」



キリオが言い終える前にジムにキッパリと言われた。



「チッ! ダメか……」


「キリオは戒現がゼロだからね魔法を表現する事すら出来ないよ!」


「異世界来て……こんなんアリなのかよ……」




キリオは不貞腐れ、その次に、ウィルが言葉を口にした。



「な、なら僕は出来るのかな?」


「ウィルは魔力量と戒現値はどのぐらいなの?」


「魔力はBランク、戒現値はCランク……」


「あ! ならウォーターボールぐらいは全然出来るかも!!」


「え!? 本当!? 教えて!!」


「いいよ! まずは詠唱を覚えよう! そして、その詠唱の意味と役割を理解しようか!!」



更にジムは話しを進める。



「主な詠唱は…われことわりに触れ、しゅたる根源にいたりし魔を拝頂はいちょうせし、今ここに我が名を持って戒現せよ。って決まった詠唱があるけど、この……「我、理に触れ」と言う言葉は体内にある魔力を集め、構築する前の準備の術式で、「主たる根源に至し魔を拝頂せし」で構築術式で「我の名を持って戒現せよ」で再現……そして、魔法名で発現し、発射する様にできているんだ!」



ジムは言葉を続ける。



「基本的には詠唱は魔法式になってるんだ! 錬金術師は紙に錬成陣=術式になるでしょ? 魔法は詠唱=術式になってるんだよ!」


「なるほど。なら詠唱を唱える前に発現させる魔法をイメージして、魔力操作をしなきゃならないわけだ!」


「その通り! ウィル筋がいいね!」


「本当!?」



その時、キリオが口を挟む。



「いいなぁ魔法……まぁ……出来ないものは仕方がないか。じゃぁ俺はシリスのノルマあるからそっち移るわ!!」



その言葉にミィナが言った。




「シリス様からどんなノルマを課せられたのですか?」


「これ……」



ジムも含めシリスからのトレーニングメニューに目を通し、驚きの声が上がる。




「はぁ!? な、なにこれ?!」



そこにつづられていたのは…










♡負荷度100%メニュー♡



上体起こし3種5000回

腕立て3種5000回

スクワット5000回

マラソン…etc









などがずらりと書かれていた。




「シリスさん……ハート使うんだね……」


「いや……そこじゃないだろ」



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