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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「異世界の違い」

「異世界の違い」








「どうもシリスさん!」




シリスの自宅近くの森の広場でキリオはシリスに戦闘訓練をずっと教えられていた。

その時にジムが現れ、シリスにそう言葉をかけた。





「おう! ジムか! どした?」


「これ、師匠から差し入れです」


「おお! いつも助かるぞ! キリオ! 休憩にする!」




シリスはジムから貰った果物を家へと運び、ジムは木の陰りに疲れて寝そべるキリオに話しかけた。



「どう? 調子は?」


「……もう訓練しんどいよ……」


「だよねぇ……僕は魔法だから基本戦闘訓練やってないからね」


「本当に羨ましいよな」


「でもキリオは本当に戦闘を覚えないと命の危険があるからね……しょうがないよ。この世界では身を守る術は必要だよ?」


「あ! そうだよ!! なんでもっと早く錬金術師になる事を止めてくれなかったんだよ! びっくりするぐらい国のいじめに合ってる気分で超大変なんですけど!」


「いや……止められるなら止めてたさ……でもあの状況で名前与えるのシリスさんしかいなかったし、他の職業って言ってもねぇ……調理師とか?」


「喧嘩売ってる?」


「いや! 真面目に答えて調理師これだよ!?」


「冗談だって! ジムあせり過ぎ!」


「そりゃ! 焦るって! それよりなんか新点あった?」


「あ! いろいろわかってきたよ! 異世界ここは俺らの世界と比べて重力が軽いみたい!」


「どういう事?」


「見てて」



キリオはその場で軽く飛んでみせ、その高さおよそ3mほど飛んだ。




「ほら!」


「え!? すご!? 僕そんなに飛べないんだけど!?」


「え? そうなの? だとしたら……この世界で生まれてるから?」


「あぁ……なるほど……でもキリオの能力それチートだよね?」


「ん……錬金術師じゃなかったらなのかな?」


「それは……どんまい」


「一応、他にも筋力も違うみたいだね……後は知識量も増えてるみたい」


「そうなんだ……なんかキリオ虫みたいだね」


「ほぉ!? お前! それはまじで喧嘩売ってる!」


「いや! 違うって! そんな漫画があったって話!」


「あ! あった! 昆虫を人間サイズにしたら強いってヤツ! 俺も見たことある!」


「それと一緒でしょ?」


「確かに! ダニですら人間サイズになると東京タワー飛び越えられるとか!」


「そんなのもあったね!」


「って事は……俺たちの居た地球と異世界の地球はサイズが違うのか? そうなるとどう言う事なんだ? この世界の全てが大きいのか? 俺らの世界の1センチとこの世界の1センチが大きく違うって……基準が存在しないから調べる事も不可能じゃないか?」


「サイズなのか、重力なのか、わからないけどでも僕はパラレルワールドなのかなと思ってるんだよね」


「その説ね、俺も考えた。」


「サイズの話だと、白亜紀はくあきの頃は酸素濃度が高い為に生物も順応し、体が大きいって聞いたこともあるからその説で考えると、過去にこういう世界が合ったとも仮定出来る。でも僕達の世界に魔法は存在しないからね。過去とは断定出来ないし、ここで話せる話もこのへんが限界なんだよなぁ……」


「確かに……いくら考えても仮説しか立てられないもんな……」


「そう言えばキリオ? 学園の話は聞いた?」


「学園? なにそれ?」


「シリスさんやっぱり話してないのか」


「詳しく! はよ!」


「もうすぐ弟子入りした者達は職業に合わせた学園が始まるんだ! およそ3年間!」


「何? およそって」


「いい着目だね! およそって使ったのはその学園は刻の魔法「時空間魔法」がかかってて、外での1時間は中でおよそ1ヶ月の時間になる」


「うお!? 時の部屋やん! ザ! ファンタジー!」


「でしょ? 凄いよね!」


「そこで各職業の学びや、実験などみっちりやるんだって!」


「なるほど!」


「キリオも今のうちにシリスさんから錬金術の基礎教わっときな! あの人ぬけてるから!」


「間違いない!」




その時だった。




「きぃーこぉーえーてぇーるぞぉ?」




2人が振り返るとシリスは眉間にしわを寄せ、恐ろしい顔で笑っていた。

その後、ジムは逃げ出し、キリオはシリスに更に厳しく指導を受けさせられた。

異世界人の特性もあり、シリスは通常訓練の3倍をキリオにさせていた。

しかし、特異体質故とくいたいしつゆえにキリオは疲れ果てながらもシリスの訓練メニューをやり遂げてしまった。




「っていっても……もう……無理……」



キリオは余りの疲労に地面に崩れる様に倒れる。



「しかし、異世界人は鍛甲斐きたえがいがあるなぁ! ここ数ヶ月良く頑張ったな! 大分強くなったんじゃないか?」


「この鬼! 漫画みたいな動きが出来るのは楽しいけど……まじできついっての!!」


「カッカカカカ! 文句が言える程、余裕ならもう一つメニュー行っとくか!?」


「いえ! ごめんなさい!」


「嘘だよ! 今日は終いだ! 飯の準備してくる! 井戸で汗を流してこい!」


「はーい」




キリオは少し離れた所にある井戸へ移動する。




「ん?」



その時、井戸の所で傷だらけの弱った黒猫がキリオの目の前で倒れた。



「……ねこ?」



キリオは急いで駆け寄り、優しく抱き、余りの惨状に驚いた。

傷はとても深く、猫は呼吸をするのも必死な状態だった。



「ひ、酷い傷だ……いったい何があったんだ?」



その時だった。




「こっちに逃げたぞ!!」




声が聞こえ、その方向を見た時、盗賊の様な2人の男が現れ、手には武器を持っていた。

そして、キリオが抱き抱える黒猫を見て男2人は口を合わせる。



「ちっ……見られた俺に合わせろ」


『聞こえてんだよなぁ……』



1人の男がキリオに少しずつ近寄りながら話しかける。



「いやぁ! すまない! うちの猫が逃げ出してしまってね! 迷惑をかけたみたいで申し訳ない! さぁ! その猫を返してもらえないか!」



そして、もう1人の男はゆっくりと円を描く様に遠回りしながらキリオの視界から外れようとしていた。



『あからさま過ぎる……かと言って……めっちゃ怖ぇ……でもこのは助けたい……どうしよう……』



キリオはそう思い、男達に話しかけてみた。



「この猫をどうするつもりですか?」


「見ての通り傷が酷いから手当したいんだ! しかし、逃げてしまってね……探して来たら君がいたんだ」



男はそう言いながら、キリオに警戒しながら近寄ってくる。



「治癒魔法を使える仲間がいますが、いかがですか?」

『 この殺気……殺す気まんまんやん。少なからずここ最近の訓練で俺は普通よりは強いのがわかった……けど、いきなり実戦で2人相手にいけるのか?』


「あぁ! ありがとう! でもこちらでなんとかするよ! さぁ! 猫を返してくれないか?」


「いいけど? でも何で後ろの人は攻撃しようとしているんですか?」

『避け続ける事なら可能なはず!!』




その時、もう1人の男がキリオの後ろで剣を振りかぶっていた。




「死ねぇ!!!」



キリオは振り下ろされた剣を避ける。




『あっぶなぁ!? でも見える! やっぱり、動体視力もかなり良い!! 行けそうだ!』


「たたみかけるぞぉ!!」



その後も、2人の攻撃にキリオは避け続ける。



『シリスの訓練のおかげだな……今は避けられてる。でも、もし攻撃を喰らった場合……ジムに頼めば治癒魔法があるけど……これ、腕とか切り落とされたらちゃんと生えてくれるんだろうな?』


「くそ! なんだよこいつ! 動きが早い!!」


「魔法石を使え!」


「え!?」

『 は!? 魔法石!? 魔法が使えない奴でも魔法が使えるあの魔法石!? そんなのアリかよ!?』


「我、理に触れ、主たる根源に至し魔を拝頂し、今ここに我の名を持って戒現せよ! 炎乃玉ファイヤーボール!!」



放たれた火の玉は凄まじい速さでキリオ目掛けて飛んできた。




「え?……詰んだ?」




その時だった。




水乃鉄壁プライベートビーチ!!」



突如としてキリオの周り、360度に水の壁が発生し、敵が放った火の玉は一瞬で蒸発する。



「魔法!? それになんだ? この言葉遊び!?」



その時、声がした。



「キリオ! 反撃いくよ!!」



水の壁が無くなり、声の主がわかった。



「ジム!? 助かったぁ!!」



形勢は1対1になり、キリオも反撃に出る。

相手が繰り出した攻撃を避け、剣を持つ手に目掛けて力一杯に蹴りを入れた。

キリオは武器を無力化させるのが目的だったしかし。



「うぁぁああ!! 俺の腕がぁぁあ!?」


「……え!?」



キリオの蹴りで敵の剣を持つ両手の手首が折れ、男は悲鳴を叫び、急に頭を下げ謝罪をする。



「ごめんなざい!! もうしません!! ゆ、許してくだざい!!」


「人の骨を折った? 俺……が?」



そして、同時にジムが相手をしていた敵は気絶させられ、事は既に終わっていた。



「その腕直すから、仲間連れて帰ってもらえるかな?」


「は、はい! わ、わかりました!」



ジムは男の腕に手を翳し、詠唱を唱える。



「聖なる神の恩恵よ。我を媒介にマナの龍脈によって与えよ。我の言霊に答え、我の名を唱え、我の力を変え、生命の声を聞き届け、彼の者の声を聞け、繋ぎ、手繰り寄せ、そして命を癒せ……回復魔法ヒール



ジムは男の両手首を治癒魔法で直した。



「もう悪さはしないでねぇー!」



そそくさと帰る男2人にジムは手を振り、キリオがジムに話しかけた。



「ジム! 助かった! 本当にありがとう!」


「で? 何があったのさ!」


「このを守ってた」



そう言ってキリオは腕で抱き抱えている黒猫をみせた。



「うわ……これは酷い……」


「ジム! 早く回復をしてくれ!」


「わかった! 聖なる神の恩恵よ。我を媒介にマナの龍脈によって与えよ、我の言霊に答え、我の名を唱え、我の力を変え、生命の声を聞き届け、彼の者の声を聞け、繋ぎ、手繰り寄せ、そして命を癒せ………回復魔法ヒール!!」



ジムは黒猫に軽く触れ、回復魔法を使う。

ジムの手が発光し、光は黒猫へと移り、浸透していく。

傷は徐々に癒え、命を繋ごうと必死で呼吸していた黒猫の呼吸も徐々に落ち着ついた。



「これで大丈夫だと思う! あ! でも、心配だから今晩は一緒のベットで寝かせて様子見て!」


「わかった! ありがとうジム! 本当に助かった!」


「気にしないで! たまたま通りかかっただけだからさ!」


「ん? なんか用事あったんじゃないの?」


「別件でね! もう行かなきゃ!」


「そうか! でも本当に助かった! ありがとう!」


「はーい! じゃねぇ!」


「お疲れ!」



キリオはシリスが待つ家に戻り、ジムとは別れた。



「キリオ! おせぇぞ!!」



シリスは帰ってきたキリオに怒鳴り散らした。



「いやぁ……じ、じつは……」



キリオはシリスに遅れた理由を説明し、黒猫はキリオの部屋で一晩様子を見る事になった。

そして、食事を済ませ、キリオは自分が寝るベットに黒猫を寝かせ、自分もその隣で眠った。












その頃ーー

逃げた盗賊2人は住処にしている洞窟に戻る。

仲間のその数およそ50人程が集まる中で取り纏めるお頭に事情を説明していた。



「お、おかしら……す、すいません。と、取り逃しました……」



目の前には巨大な男が虫を見るような目で部下を見下し言う。



「説明しろ……そしたらお前らを殺してやる」


「か、勘弁してください」


「早く言え」


「は、はい……この辺では余り見かけない黒髪の男に、詠唱短縮を使う魔法師の金髪の少年に品を持っていかれました」


「詠唱を短縮するだと?」


「は、はい」


「場所はわかるのか?」


「黒髪の方なら」


「ほう? どうやらとんだ大物が釣れたぞ。あの猫を奴隷として売るより、詠唱短縮の小僧を国に売った方が高くつく……お前ら今から行くぞ」


「ど、どこへいかれるのですか?」


「黒髪の方を使って詠唱短縮の小僧を呼び出すんだよ! さっさとお前ら準備しろ!!」




その時だった。

突然、見知らぬ声が聞こえた。




「聞いてた通り、やっぱりめんどくさい事になってるね」


「あ? 何者だ?」



暗がりから姿を表したのはジムだった。



「お、お頭!! 金髪の少年はこいつです!!」


「ほう? なんと好機こうきな事か! ここが良くわかったな! しかし、手間がはぶけて助かった!」


懶神かみのお告げがあってね。まだ僕たちの存在がバレるのはまずいんだ。だから……」


「だから?」


「君たちには全員死んでもらうよ」


「総攻撃!! 手足は無くて構わない!! 捉えろぉ!!!」



その瞬間だった。



重力魔法はいつくばれ!!」



族の全員の足元に紫色の魔法陣が発光した瞬間だった。

全員が地面に引っ張られ、一瞬で虫のように張り付き、動けなくなった。

しかし、たった1人。

立って、耐えてる者が居た。



「へぇ……これを耐えるんだ?」


「お、俺は……こ、こんな物に……ま、負けない!!」



しかし、巨体の族長はかろうじで立っている状態だった。




「僕達にちょっかい出そうとしたのが間違いだったね」


「な、なんだと?」


「運が悪かったって思って」


「ここに居る全員を殺した所で死体は残り、足は着くぞ?」



ジムは手を翳して人差し指と中指を下から上に上げて言う。



「燃上柱(そうならない様に僕が来たんだ)」



その瞬間。

突如として叫び声が上がった。

族長が目をやると、部下が凄まじい炎で燃え上がっていた。




「後も残らない程……燃えカスにするよ」




そして、また叫び声が上がる。

1人つづ順番に族の部下が燃え、恐怖で叫び声を上げるがジムは容赦ようしゃなく次々に殺していく。




『む、無詠唱だと!? な、なんなんだコイツ!? それに、この人数相手に動かなくさせる程の広範囲魔法にさらに炎魔法を使うだと!? あ、ありえない!!』


「じゃ……バイバイ」



ジムは最後に族長を燃やした。




「うぉぉぁぁああああああ!!!!!!!」




叫び声をあげる族長を背にジムは洞窟を抜けた。

そして向き直り、手を翳して、力一杯に魔法を使う。




「弾けろ……大爆発エクスプロージョン!!」




その瞬間、洞窟の中で燃えていた人間達が凄まじい音を奏でて大爆発をおこす。

爆発で洞窟は壊れ、瓦礫に埋まりまるでそこに洞窟が無かった様になった。



「証拠隠滅完了っと……懶神なまけがみが言ってた事は本当だったなぁ。危なかった……まだ異世界人ぼくたちの存在は隠さないとね」




そう言ってジムは1人帰って行った。






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